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発達障害の子ども不登校に 担任の教員から「反省文書かされた」

  • 2023年4月20日

「小学校6年生の息子が、小1のころから不登校です。教員の理解不足や無理な指導があり、震えや自傷行為がありました」(千葉 母親)
「自閉症の娘が、小学校の担任に理解がなく、みんなの前で自尊心を潰され不登校になった」(埼玉 母親)

これは、発達障害の子どもの学びをめぐる課題を取材している私たちに寄せられた投稿の一部です。
教員の指導がきっかけで不登校といった「二次障害」になってしまったという切実な意見でした。
学校現場で何が起きているのか。
寄せられた意見のうち、担任から行動を振り返り、「反省文と改善案を書かされた」とする、後に不登校になってしまった男の子とその母親が取材に応じてくれました。

(首都圏局 都庁クラブ/記者 尾垣和幸)

学習障害のコウタ君 友だちにからかわれ…

4月中旬、私が取材に伺ったのは神奈川県に住む小学4年生のコウタ君(仮名)と母親です。
コウタ君は生き物が大好きで、自宅で飼うハムスターやトカゲの世話が日課です。
ハムスターを手のひらにのせながら、優しく笑う姿が印象的でした。

コウタ君は、ひらがなやカタカナを読むことが苦手で、1年生の終わりごろに発達障害の1つの学習障害と診断されました。
学校には伝えた上で通常クラスに在籍し、授業の一部を別の教室で行い、自立活動を学ぶ「通級指導」を受けながら、2年生までは問題なく学校生活を送っていたといいます。

しかし、状況が変わったのが3年生の時です。
文字を読むのが苦手なことを、クラスの友だちが「ばか」とか「そんなこともできないの」などとからかい始めたのです。

授業がどんどんストレスになっていったというコウタ君。
ある日、友だちの体がぶつかりました。
その友だちはわざとではなかったようですが、コウタ君は思わずランドセルを投げつけてしまいました。

そのほか、友だちから生活面での注意を受けるといったちょっとしたことでカッとなってしまい、いすを倒したり、急に教室を飛び出したりという行動を起こすようになったといいます。

「反省文と改善案を書かされた」

その際、クラスの担任の教員から求められたのが、親と一緒に行動を振り返って改善策を考えることでした。

母親は、発達障害を踏まえた熱心な指導と受け止め、コウタ君に聞き取り、行動の理由や今後の約束などをノートに記すことにしました。

「みんなの前で(注意を)言われたのが嫌だった」、
「次に同じ状況になったらガマンすると約束しました」などの文言が並びます。

しかし、コウタ君の行動は収まりませんでした。担任は、そのつどさらなる改善策を書くよう求めたと言います。

コウタ君は、しだいに母親からの聞き取りを嫌がり、学校に行くと担任に叱られると思い込むようになりました。

コウタ君の母親
「担任から、『約束したけれどできなかったね。反省して改善案を出したのに、それができないんだね』とかね。
『その改善案じゃ、ダメじゃないんですか』みたいなだめ出しがあって、週に2回3回とそれが続いていくと、ちょっとだんだん苦しくなってきてしまって。
書くのがつらいとか、先生から電話がかかってくるのが怖い、そんな気持ちになっていました」

先生との対応に思い悩んだ母親は、発達障害と診断した医師を訪ねました。
すると、医師からは「本人の気持ちの表現や怒りのコントロールを練習させることは大事だが、根本的な解決にはならず、本人が怒りやストレスを感じないような環境にすることを考える必要がある」と指摘されました。

そして、母親は担任に対応を変えてもらうようお願いしましたが、それが変わることはありませんでした。

その後、コウタ君は不登校になったといいます。
今年度から別の学校に転校し、特別支援学級で学んでいます。

コウタ君の母親
「担任は、コウタが発達障害だっていうのもよく聞いてくれて、どうすれば過ごしやすくなるかなっていうのも、一緒に考えてくれてはいました。
ただ、コウタの気持ちに寄り添って、気持ちを知ろうとして、いっぱい質問攻めにしてしまった感じだった。コウタ本人も、本当はつらかったんだけど、その気持ちを説明できなかった。
熱心ゆえに『問題を解決すれば、本人は気持ちよく過ごせるはずだ』という気持ちだったと思うのですが、それがなかなかうまくかみ合わなくて、お互いつらくなってしまいました」

求められる対応とは

今回、どのような対応が必要だったのか。
専門家は、その子どもに応じた支援が必要だと指摘します。

全日本特別支援教育研究連盟 明官茂理事長
「発達障害の特性を踏まえ工夫した指導がされていたかもしれないが本人にうまく合ってなかったのだろう。苦手としていた文字を読むことへの支援をもっと工夫する方法もあったのではないか」

そのうえで、こうした「二次障害」を防ぐためには、複数の教員が関わることが大切だとしています。

全日本特別支援教育研究連盟 明官茂理事長
「専門的な教員は、学校に配置されているケースは少ない一方で、担任の先生が、一人で対応されることが多いと思います。やはり、1人の先生だけではダメで、学校がチームとして、いろんな人の専門性を活用しながら、その子に応じた一番最良な対応を考えて用意してあげることが求められています」

国の対応は?

文部科学省は、通常クラスにも発達障害の子どもが在籍していることを前提として、すべての教員に専門性が必要だとしています。

一方、特別支援教育は、各学校の校長がマネージメントしますが、文部科学省によりますと、公立の小中学校の校長の7割以上の校長が特別支援の経験がないということです。

こうした現状を受け、国は教育委員会や学校などに対し、教員向けの研修を行うよう働きかけていますが、教員も多忙であることなどから、なかなか浸透していない現状もあります。

発達障害の子どもの学びを保障するのに必要な教員の専門性を高めるためには、どのような取り組みが求められるのか、引き続き取材を進めたいと思います。
皆さんからのご意見や体験談などは引き続き募集しています。
ぜひこちらの投稿フォームよりお寄せください。

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