いま、東京23区の新築マンションは高騰し続けています。
そして、その流れは中古マンションにも。
平均の販売価格がおよそ7,000万円になったというデータもあります。
なぜこうした事態になっているのでしょうか。
(首都圏局/不動産のリアル取材班 記者 牧野慎太朗)
私たちは「不動産のリアル」と題して、東京の不動産のいまを取材しています。
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私たちは、先日、東京23区の新築マンションの平均価格が高い月で9000万円を超えている実態をお伝えしました。
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そうすると、寄せていただいた投稿の中に、「中古マンションも人気です」という声がありました。
30代男性
「おととしに品川区内で築10年の中古マンションを購入しました。新築マンションは発売エリアが限られることもあり、中古物件を主に探していました。築浅物件は少なく、築40年を超えるマンションが多かったと感じました」
実際に中古マンションの価格を調べてみると、新築マンション価格の高騰に連動して想像以上に値上がりしていました。
民間の調査会社「東京カンテイ」によると、2020年から首都圏全体で中古マンションの価格は大きく上昇し、ことし1月時点で平均の築年数が28.5年で4845万円でした。
これを東京23区に限ってみると、去年10月まで28か月連続で上昇を続け、ことし1月時点では平均の築年数が28年で6939万円と、7000万円近い価格で高止まりしています。
売り出し中の中古マンションを訪ねてみると、新築時の売り出し価格を上回っている物件もありました。
販売担当者に案内されたのは、東京・江東区に2009年に建てられた中古マンションです。
こちらの物件、間取りは2LDKで67平方メートル、新築時の売り出し価格はおよそ7000万円でした。
それが14年経った現在の販売価格は8000万円を超え、1000万円以上値上がりしているといいます。
この部屋もすでに申し込みが入り、契約が決まりそうだということでした。マンションは建設されてから時間の経過とともに、価値が下がるものだと思っていました。
これについて担当者に聞いてみると、「最近はこうした物件は珍しくないです」という答えが返ってきました。
住友不動産販売 豊洲マンションプラザ 藤井秀一上席主任
「新築マンションの価格が高騰し、供給数も限られていることが1つの要因です。そこで、割安で選択肢も多い中古に目を向ける人が増えています。新築時より1.5倍ほど価格が上がっている中古マンションもあるぐらいです」
こうした中古マンション市場の高騰により、今、比較的割安で手が届きやすい築年数が経った物件を買い求める動きが活発になっているといいます。
2月下旬、都内で開かれた中古マンションの販売相談会に足を運びました。会場となったのは築50年ほどの物件をリノベーションしたマンションの1室です。
部屋には私も入らせていただきましたが、築50年と聞かなければ新築じゃないかと見間違う内装です。
そこに、購入を検討する人たちが次々に訪れ、室内を見学したり、担当者と物件の打合せをしたりしていました。この会社ではセミナーを毎週末開いているといいますが、参加者は去年と比べて1.5倍ほどに増えているということです。
購入検討中の30代女性
「新築マンションのモデルルームも行ってみたんですけど、想像の1.5倍以上高くて、驚きました。都内で通勤できる範囲で買いたいと思っていますが、自分でローンで毎月払って大丈夫なくらいで考えると、予算は3000万円~4000万円が現実的なところかなとは思っていて、中古の方が安く買えるし、リノベーションすれば自分好みにできるからいいなと」
取材を始める前は、中古マンションというと築10年~20年ほどを想像していました。しかし、この会社によると、いまの売れ筋は築30年~40年だといいます。
cowcamoエージェントサービス事業部 須原玲マネージャー
「自分の住みたい街に住める、新築にはない広さや間取りの物件もある、さらにリノベーションして空間も自由にできるというのが中古の特徴です。築40年というと結構古いんじゃないかってなるんですけど、あとからオートロック化されてたりとか、共用部がきれいに刷新されてたりとかもありますので、きちんと管理されていて見た目もいいマンションはありますよ」
実際に築50年の中古マンションを最近購入した人にも話を聞くことができました。
30代の男性会社員が購入したのは、渋谷区にある最寄駅から徒歩5分以内のマンションです。広さは60平方メートルほど、価格はおよそ5500万円でした。
築50年はさすがに古いのではと思いましたが、室内は5年ほど前に改修されていてきれいだったということです。男性は将来的な資産性も考えて購入したといいます。
30代男性
「資産性を最も重視していたので都心の人気エリア、さらに開発が進んで、この先10年後、20年後もにぎわいが確保されるであろう場所を選びました。賃貸に住み続けるよりも、自分は早い段階で購入した方が資産になると思っていました。
そのため、都心のよい立地という点は譲れず、その代わり築年数や設備面は妥協しようと思いました。新たな耐震基準は満たしてはいませんでしたが、補強工事をしていてほぼクリアしている状況が資料からも分かったので納得して購入しました」
新築に比べれば、割安で選択肢が多い中古マンション。ただ、注意点もあるようです。
住宅診断を行うホームインスペクターとして活動する田村啓さんです。実は、NHKで放送されたドラマ「正直不動産」も監修されました。
田村さんは「築年数がたった中古マンションは、一見きれいな見た目であっても注意してください」と指摘します。
まず、専有部分ではリフォームやリノベーションされて一見するときれいな見た目でも、上の写真のように壁紙を剥ぐとカビが生えていたりするケースがあるほか、給水管や配水管などの肝心の設備は昔のまま替えられていないケースもあるそうです。
人間で例えると、「見た目は化粧をしていてきれいでも内蔵や血管がぼろぼろになっている状態」だということで、事前にリフォームやリノベーションでどの部分を修理したのか、内容を確認しておくべきだと指摘しています。
つぎに、マンション全体については、修繕積立金が計画的に貯められているか、大規模修繕工事が概ね15年ごとに行われているかなど、マンションの管理組合がしっかりと機能していることを確認するべきだとしています。
管理がしっかりされていないと、急に不具合が生じた場合、思わぬ多額の出費を強いられることになるおそれがあるそうです。
ホームインスペクター 田村啓さん
「管理組合は1つの村のようなもので、しっかりと自治が行われているかは慎重に見極めた方がいいと思います。現在のマンションは管理体制の良し悪しが価格に反映されていないケースがほとんどで、管理がいいマンションも悪いマンションも一緒に価格が上がっている状況です。周辺のマンションに比べて修繕積立金や管理費が安い場合は注意が必要です」
また、資金調達の面でもこんな注意をすべきだと教えてくれました。
「中古マンションによっては住宅ローン減税の対象にならないことがあります。金融機関によっては、住宅ローンの審査が通りづらかったりするケースもあります。事前に確認して購入を決めた方がよいと思います」
新築だけでなく中古マンションもこれほど高騰している現状を目の当たりにし、改めて東京に住むハードルはどんどん高くなっているように感じます。
そして、せっかく手に入れた場合でも、事前に確認しておかないと思わぬ落とし穴があることも見えてきました。
空前の高騰が続く東京の不動産事情で今、何が起きているのか。ここまで分譲マンションの高騰を取材してきましたが、賃貸物件にも影響がでているのでしょうか。私たちは引き続き皆さんからの情報や意見をもとに取材していきます。ぜひこちらから投稿をお寄せください。