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ペアローン メリットと3つのリスクとは?専門家に聞く 不動産高騰で…

不動産のリアル(2)
  • 2023年2月6日

空前の高騰が続く東京の不動産について、私たちは皆さんの情報や意見をもとに取材する「不動産のリアル」というシリーズを始めました。

先日、都心に億ションを購入した夫婦が、「ペアローン」という仕組みを使おうとしているという記事を掲載したところ、さまざまな意見をいただきました。
そこで、今回は住宅ローンに詳しいファイナンシャルプランナーにこの「ペアローン」について、詳しくうかがいました。
(首都圏局/不動産のリアル取材班)

関連記事 東京23区マンション高騰 サラリーマンが「億ション」
東京の不動産についてみなさんからの情報や意見をこちらまでお寄せください。

ペアローン 投稿された意見から

まずは、この「ペアローン」について私たちに寄せていただいた声を紹介します。
どうもありがとうございました。

「ペアローンは危ういのでは」 (50代男性)

「ペアローン活用については、好意的な印象を持ちました。ただ、高額物件を購入するにはさまざまなリスクがあると思います。返済ができない人たちが増えてしまうおそれも」(年代不明)

「ペアローン」については、知っているという人もいれば、あまり知らなかったという人もいました。いただいた意見では、リスクについて言及している方々が多い印象です。

そもそもペアローンとは

この「ペアローン」というのは、1つの物件に対して夫婦がそれぞれ契約者として、同じ金融機関から住宅ローンを借りる方法です。夫と妻がそれぞれ相手の連帯保証人となります。

大手銀行を始め、多くの金融機関が扱っている住宅ローンの1つです。

このペアローンですが、いま、マンション価格の高騰や共働き世帯の増加で、利用者が増えているようです。
首都圏で新築マンションを買った既婚の共働き世帯では、47%が「ペアローン」で契約しているという調査結果もあります。(リクルート「2021年首都圏新築マンション契約者動向調査」)

ペアローン メリットは?

この「ペアローン」ですが、どんなメリット、そしてリスクがあるのでしょうか?
住宅ローンに詳しく、多くの購入希望者の相談にも乗っているファイナンシャルプランナーの有田美津子さんに聞きました。

Q.都内のマンションが高騰するなか、ペアローンの利用者は増えていますか?

A.
いまは本当に都内の平均価格でも8000万、9000万っていう時代です。1億円のマンションを検討される方も本当に現実的にいらっしゃるわけです。

そうするとやっぱり頭金が多少あったとしたら7000万、8000万円のローンを組む方が多いので、そうすると1人だとなかなか借りられないという方もいらっしゃいますし、借りられたとしても、ちょっとぎりぎりになると。

40代から35年ローンだと会社員の方は年金生活になっても返済が続くことになるので、その結果、希望の返済期間やローン額、金利で借りられない場合があります。

そこでペアローンであれば、配偶者の収入も合わせることができるので、借りられる額も緩くなりますし、内容も良い結果が出やすいといえます。

ペアローンの最も大きなメリットは、単独でローンを組む場合に比べて借入額を増やせる点です。

もし夫婦でそれぞれ同じ収入があれば単純計算で、最大2倍の住宅ローンを借りられる場合もあります。
例えば、夫1人の収入だと5000万円までしか借りられない場合でも、同じ収入の妻がペアローンで5000万円を借りることで、最大で1億円の物件にも手が届くことになります。

首都圏の新築マンションの価格が高騰するなかで、夫婦でペアローンを組むことで借入額を増やして希望の物件を購入するという人が私の相談者の中でも増えています。

また、住宅ローン減税を2人分受けられることもメリットで、購入する住宅の種類にもよりますが、1人あたり最大で455万円の還付を受けられるようです。

去年からは、制度が変わり、年末の住宅ローン残高の0.7%が13年間で、どちらかというと高所得者の方というよりは中間所得層、年収500万とか600万円の方でもマックスの住宅ローン減税を使えて、それを長期間使えるということになりました。

Q.利用される方々は、高額所得者だけではなく会社員世帯も?

A.
はい。サラリーマンの方とかだと夫婦がそれぞれ年収700万円、800万円とか500万円ぐらいの夫婦であっても1億円近い物件、7000万円や8000万円ぐらいの物件を狙う方は多いです。

けれども、1人で全額借りるのは厳しいので、足りない分は世帯収入の中で返していくのであればそんなに大変ではないということで「ペアローン」を選ぶ方も結構いらっしゃいます。

ペアローン 3つのリスクは?

この「ペアローン」の利用者、会社員の世帯で増えているようです。
一方、リスクについてはどうでしょうか?と聞くと、大きく3つあるということでした。
以下、詳しくお聞きしました。

リスク(1) 収入の減少
特にペアローンで多くの借入をしてる場合、大きなリスクになるのが「収入の減少」です。
いまは、結婚して子どもが生まれる前や妊娠中に住宅を購入する人が多くなっています。現在の収入を基準に返済計画を立ててしまうと、産休や育休中には必ず収入が減少するので、家計が非常に厳しくなってしまいます。

また、その後も子育てをしながら夫婦ともに働き続けられるとは限りません。
最近相談を受けた正社員の夫婦からは「子どもと向き合う時間が確保できず仕事を変えたい。いくらまで収入を落としたら返済を続けられるか」などと相談がありました。このように、子育ての時間を確保するために夫婦どちらかが正社員から自営業や契約社員に転職して、当初の計画通りローンの返済が難しくなったという相談が多くなっています。

本来であれば、子育て後も仕事が続けられることを確認したうえで、ペアローンを検討することが望ましいと思います。

リスク(2) 離婚
ペアローンだと絶対お互いが連帯保証人になります。ローンを出した分が持ち分になりますから共有名義になるわけですよね。両方の同意がないと売却ができないということもあります。

離婚後も、子どもの教育環境などを理由に夫婦どちらかが住み続ける場合、単独のローンに切り替える必要があります。ただ、夫婦2人の収入を基準にローンを組んでいると、どちらか単独で返済していくのは困難なケースが少なくありません。

物件の売却も選択肢の1つですが、価格が高いタイミングで売却できるとは限らず、ローン残高がすべて返済できない可能性もあります。

リスク(3) 死別
単独ローンでは、契約者が死亡した場合、保険で住宅ローンが完済されますが、ペアローンの場合は、どちらかが死亡しても、相手方のローンは残るため返済を続けなければなりません。

やはり、メリットだけでなく、リスクも大きいようです。有田さんも、この両方をしっかりと理解したうえで、ペアローンは検討してくださいと話していました。

最後に、借りることを決めた場合の注意点についても伺いました。

ファイナンシャルプランナー 有田美津子さん
「やはり希望の物件を購入したいっていう気持ちは、よく分かります。すばらしいマンションを見たらもう本当にこれが買えるんだったら、これが人生の一番の幸せっていうふうに思うかもしれないですね。
気に入った物件が見つかると、ほかの人に先に買われてしまわないように、あまり深く考えずに決断を早めてしまうことだってあるでしょう。
ただ、やっぱり住宅ローンは借りられたから大丈夫ではなくて、その後25年、30年、35年などの返済期間がありますので、返済が続けられる資金計画が一番大事ですよね。

ペアローンの場合は2人で働いて、2人の収入で返していくという前提になっているので、2人とも働き続ける覚悟が絶対必要かなと思います。

まずは、将来例えばお子さんの教育費がピークになった時とか、もし配偶者が働けなくなった場合を想定して、ゼロではなくともフルタイムで働く方が契約社員ぐらいの年収になったらどうなるか、またパートになったらどうなるかなど、収入減少を想定して、それでも返済できる額が一体いくらぐらいなのかをよく考えることが必要です」

空前の高騰が続く東京の不動産について、みなさんからの情報や意見、ぜひこちらまでお寄せください。私たちはそれをもとに取材を続けたいと思います。

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