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東京23区マンション高騰 サラリーマンが「億ション」ペアローン活用

  • 2023年2月2日

かつて富裕層の象徴となっていた、価格が1億円を超える、いわゆる「億ション」。

しかし、今では東京23区の新築マンションの平均価格は高い月では9000万を超え、その買い手はサラリーマンの世帯にも広がっています。

なぜ高額な物件を買い求めるのか、費用はどうしているのか、最近、都心で億ションを買ったばかりの夫婦に詳しく話を聞かせてもらいました。
首都圏局 記者/牧野 慎太朗

空前の不動産高騰が続く東京。その光と影を皆さんからの情報や意見をもとに取材していきます。
投稿はこちらまでお寄せください。

なぜ 高額な都心に?

取材に応じてくれたのは、40代と30代の夫婦です。

この夫婦は去年12月、渋谷区代々木に新築マンションの広さ60平方メートルの部屋を購入しました。

価格は1億500万円。やはり「億ション」と聞くと驚いてしまいます。

正直にその点を伺ってみると2人とも「当初の予算は6000万円から7000万円で、億ションは無理だと思っていました。でも都心にはその値段の新築物件はありませんでした。今でもすごい高い買い物をしたなと思っていますよ」という答えが。

それを聞いて少し安心しました。

それでも購入の決め手はなんだったのかと重ねて聞くと、「将来的な資産性です」という答えが返ってきました。

購入した夫婦
「東京一極集中で今後10年は人口が伸び続けて住宅需要はなくならないと考えました。マンションが高騰するなかで、いま買うのが最高値の高づかみになるか、山の途中かはだれにも分からないし、資産性で考えると都内の安い場所もさらに下がるリスクはありますよね。

億を超えるマンションを買うのはすごく勇気がいったのは事実です。それでも、資産性が担保されていると思い、踏み切りました」

資産だからこそ あえて都心に

購入を決めたマンション

実は購入を決めたマンションはまだ完成していません。
それでよく決められたなと思いましたが、マンションは資産だと考える2人にとって、最も重視したのは立地だといいます。

2人は、もともと渋谷区の別のマンションに賃貸で住んでいました。職場までのアクセスが良く、近くに大きな公園がある環境を気に入っていたといいます。

何より大事にした条件は駅からの利便性。購入した物件は最寄り駅から徒歩5分。「渋谷」と「新宿」がいずれも3キロ圏内です。

大規模な再開発が進み、常に多くの人でにぎわっている2大都市の近くであれば、将来的にも資産価値は下がらないと考えました。夫婦は、念のため周辺の中古マンションの価格も調べたそうですが、ほぼ新築と変わらない価格で取引されていたといいます。

費用はどうやって?

さらに、気になるのはやはり費用の調達方法です。

夫はIT企業に勤務、妻は病院で通訳兼事務の仕事をしています。
世帯年収はおよそ1000万円ほどです。1億500万円のうち多くは住宅ローンで支払う予定ですが、夫婦どちらかによる単独ローンでは満額の借り入れは難しい金額です。

そこで、夫婦が検討しているのが、「ペアローン」と呼ばれる住宅ローンの利用です。
これは1つの物件に対して、夫婦それぞれが同じ金融機関からローンを借りる方法で、物件の所有権も共有名義になります。
単独でローンを組む場合より、1.5倍ほど借入額を増やすことができるといいます。

不動産会社などを取材すると、このペアローン、共働き世帯が多くなるなかで利用者は急増。
首都圏で新築マンションを買った既婚の共働き世帯では、47%がペアローンで契約しているという調査結果もあります。(リクルート「2021年首都圏新築マンション契約者動向調査」)

夫婦もペアローンを組んで借入額を増やすことで、億ションに手が届いたということです。

夫婦
「今後子どもが生まれても夫婦ともに働き続けたいと思っていて、ペアローンを組むことで住宅ローン減税が2人分適用されるメリットもいいなと思いました。当初の予算の倍近い金額だったのでローンが組めないかなと思っていましたが、ペアローンを使って計算してみると、手が届く範囲になったのが大きいですね」

不安材料はやっぱり金利の動向

ただ、2人が今、少し不安だというのが最近の金利の動向です。

日銀が金融緩和策を修正したことで、大手銀行各行は、1月から10年固定の金利を引き上げることを発表しました。利用者が多い変動金利はいまのところ影響はありませんが、今後の動向は見通せません。

夫婦は、これから固定金利か変動金利かどちらで借りるかを決める予定ですが、0.1%の金利差で、支払い額が数十万円増えることになるだけに、毎晩金利の動向や経済ニュースを見ながら頭を悩ませているといいます。

夫婦
「どちらが将来的に得なのかは毎日考えています。最悪金利が上がって返せなくなった場合には、賃貸マンションとして人に貸すことも選択肢には入っています。自分で情報を集めて投資的な価値を含めて、さまざまな検討しないと都心のマンションは怖くて買えないですね」

1億~1.5億の価格帯 半数が会社員

取材した夫婦のように、サラリーマン世帯が“億ション”を購入する動きは都心で広がっています。

新築分譲マンション「プラウド」を供給する野村不動産によりますと、億ションのうち1億円~1億5000万円の価格帯の物件を購入する層の半数は「会社員」で、「経営者」や「医師」を大きく上回っているということです。

また、年収でみると、1500万円以下が59%を占めていて、1000万円以下も33%いるということです。

背景は「半“投”半“住”」の考え

かつて富裕層の代名詞だった億ションの購入者が会社員にも広がっている理由について、マンション購入者の動向を調べている会社は、「マンションを『投資』と『住居』の両方の目的で買う人が増えているため」と分析しています。

SUUMO新築マンション 柿崎隆編集長
「日銀の金融緩和以降、東京23区のほぼすべてのエリアでマンション価格の値上がりが続いていて、資産形成の選択肢の1つとして購入する動きが広がっている。コロナ禍でライフスタイルは多様化したが、都心部は職場に近く利便性が高いため住宅ニーズは根強く、半分投資・半分住居の『半投半住』の考え方が浸透している」

皆さんの経験や意見をお寄せください

私(記者)も首都圏で住宅の購入を検討している1人です。人生で最も高い買い物と言われるだけに簡単には決められそうにはないですが…。
不動産の取材を始めると、物価高や地価の上昇、さらに投資マネーの流入なども相まって、東京に住むハードルはどんどん高くなっているように感じます。

そんななか、今回取材したようにあえて都心に住む選択をする人たちがいる一方、リモートワークの広がりもあり、東京を離れて郊外に移り住む人たちもいて、住まいをめぐる選択肢は増えているように感じます。

私たちは、全国から「ヒト・モノ・カネ」が集まってくる東京で、その映し鏡となる不動産の現場を見つめていきたいと思っています。

今後、「不動産のリアル」と題してシリーズでお伝えしていきます。
ぜひ皆さんの不動産にまつわる体験や知りたいことをこちらまでお寄せください。
私たちは皆さんからいただく投稿をもとに取材していきます。

  • 牧野 慎太朗

    首都圏局 記者

    牧野 慎太朗

    2015年(平成27年)入局。宮崎局、長野局を経て2022年から首都圏局。不動産取材を担当。

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