WEBリポート
  1. NHK
  2. 首都圏ナビ
  3. WEBリポート
  4. ドッジボール ワールドカップ日本初出場! ルールや戦略は?

ドッジボール ワールドカップ日本初出場! ルールや戦略は?

  • 2022年12月27日

ドッジボールのワールドカップが開催され、日本は女子が世界2位で銀メダル、男子と混合が世界3位で銅メダルを獲得しました。
W杯で競うのは5個のボールを同時に投げ合う、世界で主流の「マルチボール種目」です。皆さんになじみのあるドッジボールはボール1個の「シングルボール種目」。実はこれは日本発祥のルールでアジアの数か国でしか実施されていません。複数ボールならではのテクニックを磨き活躍を目指した日本代表。その代表選手の一員に選ばれたディレクターが、「マルチボール」のルールや魅力、世界で勝ち抜くための戦略をお伝えします。
(※12月12日の記事に大会結果を追記しました)
(首都圏局/ディレクター 森 美月)

世界のドッジボーラーが頂点を目指すワールドカップとは?

イギリス発祥と言われ、世界で多くの人が楽しむドッジボール。WDA世界ドッジボール協会に加盟する56か国と地域のチームが頂点を目指して開かれるのが「ドッジボールワールドカップ」です。12月14日~17日の4日間、エジプトのカイロで開催されます。

出場国は8の国と地域(エジプト・香港・日本・マレーシア・サウジアラビア・南アフリカ・USA・イングランド)です。

3回目となる2022年・エジプトカイロでのワールドカップに、2019年のアジア予選を突破した日本が初出場。男子・女子・混合3つのカテゴリーに26人の代表選手が参加します。新型コロナの感染拡大で大会が延期されていたため、念願の出場です。

“スピード感”と“スリリングな展開” マルチボールとは?

私たちが小学校などで経験するドッジボールはボール1個の「シングルボール種目」ですが、実は、世界で主流なのは複数のボールを同時に使う「マルチボール種目」なんです。W杯ではボール5個を同時に使います。

コートをいくつものボールが飛び交う“スピード感”、攻守が目まぐるしく変わる“スリリングな展開”が特徴で、初めて見る人にとってはまさに“異次元のドッジボール”。

選手6人が正面から5個のボールを使って当て合います。

ゲームは1セット3分間。相手チームのメンバーを多く減らしたほうが勝利。

前半15分、後半15分の計30分間で勝利したセット数を競います。

最も脅威となる攻め方は、同時に複数のボールで1人の選手を狙う“一斉攻撃”。

それをしのぐため、マルチボールならではのプレー(ルール)が存在します。

(1)よける(ドッジング):視野を広くし多角度から飛んでくるボールをしっかり見極める。ドッジボールはドッジング(よけること)が基本。

(2)ブロッキング:保持しているボールで飛んできたボールをはじいてブロックできればセーフ。その場合、持っているボールを落としてしまったり、勢いで持っているボールがズレてしまったりするとアウト。

(3)キャッチ:最も難しいキャッチに成功すると投球した相手をアウトにでき、味方を復活させることができる。キャッチは最も目立つプレーで、成功すると、会場から拍手が起こりヒーローになれた気分!

(4)フェイント:一斉に投げてくるのを阻止するのがフェイント。投げてこようとする相手に向かって投げマネをしたり振りかぶったりして威嚇する。フェイントがうまく機能すれば、相手が一斉攻撃するタイミングをずらすこともできる。

(5)レトリーバー:外野選手がいないため、よけて後ろに飛んでいったボールはどうなるのか?そのボールを追いかけ拾い、内野のプレイヤーに渡すのが「レトリーバー」と呼ばれる、大切な仲間の役割。いかに早く、しかも正確にボールを渡すかが求められる。

使用するボールも独特です。布生地で柔らかいのですが、時速100キロを超えることもあり、体に当たるととても痛いです。

私は手が小さくボールをつかみにくいので、フェイントする際に苦労します。そのため、ボールの空気入れの栓に指をひっかけて滑らないように握るなど工夫をしています。

ただ、投げようとして手が滑り、ボールをうまく投げられなかった場合は自身がアウトになるというルールもあるんです!

いつかドッジボーラーになりたい!ひそかな夢が現実に

日本代表選手に初選出された私(ディレクター)は、小学生時代、昼休みはドッジボール、放課後は野球を楽しみ、中学校でソフトボールを経験。地域の子ども会が主催するドッジボール大会で優勝も経験するなど、とにかくボールを投げること・とること・追いかけることが大好きでした。

高校生の時は、「またドッジボールやりたいなぁ。プロってないのかな」と、ネットでちょくちょく検索していました。

そんな私が本格的に複数のボールを使うドッジボールを始めたのは、NHKに入局した直後の、2021年5月。コロナ禍で人と関わることや体を動かす機会が制限され、寂しく思っていた私は、体をしっかり動かせるスポーツを始めたいとネットで検索。出会ったのが、ボール6個を使う「アメリカンドッジボール」のチームでした。

ボールを複数使うドッジボールってたくさん体を動かせそう!目新しいもの好きの私の心は高鳴り、あっという間に練習にのめり込んでいきました!

チームの練習の様子

現在は仕事が終わった後と休日の週2回、練習に参加しています。私と同様に、選手のほとんどはふだん、保育士やシステムエンジニアなどの仕事をしながら、仕事の合間にトレーニングや練習を行っています。

正直なところ、当初は仕事終わりや休日に体を動かせる機会があってうれしい!という感覚でドッジボールを楽しんでいました。

しかし、ある時、世界で主流のボール5個を使う「マルチボール」という種目でワールドカップが開催されること、その代表メンバーの選考会が実施されることを知り、挑戦することを決めました。

そして書類審査と実技審査を経て、メンバーに選ばれたのです。

代表に初選出されたオールドルーキー

私が所属するチームの代表で都内在住の小池吉崇さんも、今回、同じく代表選手に選出されました。小池さんは初選出メンバーの中で最年長の38歳。2017年に、日本では珍しかった複数のボールを使うドッジボールに出会い、ボール6個を使う「アメリカンドッジボール」のチームを立ち上げました。

小池吉崇さん
「最初はドッジボールをやりたくて始めたというわけではなくて。社会人になると仕事でのつながりが密になる一方で、仕事以外にいろんな人と会う機会がほとんどないなと思いました。だから、利害関係がなく遊べる仲間がほしいなぁと思い、スポーツに目をつけました。1つのボールだと1対1でとても強い球が飛んできたら、かなわない時がありますが、複数のボールを同時に投げれば、強い相手でも当てることができます。1対1ではレベルの差があっても複数のボールになればチームの力で勝てるところが魅力です」

小池さんは得意とするフェイントを磨いて、チームの勝利に貢献したいと考えています。

フェイントをする小池さん

「サイドでボールを保持し、よくフェイントをしています。相手が投げるタイミングをずらすためにワンテンポ早い段階でいつもよりもオーバーに動かしてるんです。そうすると、あまり僕が視野に入ってない人でも、『なんかやばい、こっちにボールがくる』みたいな感じで見えるので、わざと大げさに動かしています。」

私は小池さんとともに混合種目に出場する予定で、ボールをキャッチする練習に力を入れています。小池さんのフェイントの効果で、タイミングがズレてボールが飛んでくると、キャッチできるチャンスが広がります。自分のところに同時に3個のボールが飛んできたとしても、当たる前に1個キャッチできれば、仲間を1人復活させられるので、試合の流れを一気に変えるビックプレーになることも!

パワーやスピードだけでなく、男子、女子それぞれの選手の持ち味を組み合わせて力を発揮するのが、混合種目の魅力です。

日本のドッジボールがどこまで通用するか腕試し!

11月中旬。W杯に臨むにあたって、日本代表が集まる代表合宿が岐阜市内で行われました。選出されたのは男女合わせて26人。実は、全国各地で練習に励む代表選手のほとんどは、ふだん「シングルボール」で練習や試合を行っています。

国内で実施されている「シングルボール」の大会、J.D.B.A全日本選手権で1位に輝いたチームに所属する選手も今回の代表メンバーにいます。
そんな日本のトップ選手たちも、経験の少ない「マルチボール」に慣れるために最初は四苦八苦して特訓を重ねました。

小林元 選手

ボールが同時に複数飛んでくるため、とっさによけるか、とるかの判断に迷うところが課題…。

しかし、さすが、すぐれたボール感覚をもつ代表選手。「シングルボール」で培われてきた強みも十分生かせることがわかってきました。幼少期からシングルボールに慣れ親しんできた選手の多くは、「よけにくい・キャッチしにくい」角度で緩急のある球を投げ込み、そのコントロールの精度はピカイチ。よける・キャッチのスキルも高く、ボールが複数になっても軽やかな身のこなしで対応していきます。

合宿で手ごたえをつかんだ選手たち。長い年月で培われてきた「日本のドッジボール」がどこまで世界に通用するか、挑戦者の気持ちでエジプトに向かいます。

混合種目主将 篠原謙生さん
「マルチボールの競技歴が圧倒的に短い中でも、日本代表が高いパフォーマンスを発揮できるのはシングルボールで培ってきた技術や連携があるからです。『日本が強い理由はシングルボールにあり』ということを発信していきたい」

結果は…日本の強さを世界に示した!

12月14~17日にエジプトのカイロで開催されたドッジボールワールドカップで、私は女子・混合の15試合にフル出場しました。

開催国のエジプトとの試合では、その勢いに押され苦戦しましたが、自分や仲間のいいプレーが出たら、大きくガッツポーズ!喜怒哀楽の感情を表に出し、気迫で戦い抜きました。

日本の結果は、女子が世界2位で銀メダル、男子と混合が世界3位で銅メダル。日本は出場した全カテゴリーでメダルを獲得しました。

女子日本代表

男子日本代表

混合日本代表

試合ごとに見つかった課題をその都度メンバーで話し合い、チーム全体が成長しながら戦えたことが、勝利をつかむ要因になったと感じています。応援いただいた皆様、ありがとうございました。

  • 森美月

    首都圏局ディレクター

    森美月

    2021年入局。福岡県出身。小さい頃から野球・ソフトボールを経験し、球技スポーツが大好き。今は絶賛ボールを抱え眠り、夢の中でもドッジボールするぐらい「NO BALL NO LIFE」

ページトップに戻る