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“占い”サイトのトラブル相談急増 1000万円払った人も

  • 2022年12月2日

旧統一教会をめぐる高額献金などが社会問題となり関心が高まる霊感商法。インターネット上では“占い”を悪用し高額な支払いをさせる手口が横行しています。東京都では昨年度の相談件数が前年の8倍に増え、中には1000万円を支払った人も。その多くが、コロナの影響による将来への不安や、家族の病気などをきっかけに“占い”に頼っていました。
“占い”を悪用した被害の手口とは?身近な楽しみとして広がる占いとうまくつきあうためにはどうすればいいのでしょうか?
(首都圏局/ディレクター 加野聡子、横山紗也香)

“占い”をうたうサイトに関する相談急増

幅広い世代に親しまれている“占い”。その人気に乗じて、“占い”を悪用したトラブルが、いま相次いでいます。

東京都消費生活総合センターでは、「“占い”をうたうインターネットサイトで高額な支払いを求められた」などの相談が急増しています。今年度、その額は平均68万円。1000万円を支払ったという人もいました。

東京都消費生活総合センター

“占い”を頼るきっかけで多いのが、コロナの影響による将来への不安や、家族の病気などです。東京都では昨年度、“占い”サイトに関する相談が前年の8倍に増加。今年もそれに迫るペースとなっています。相談者の7割以上が女性で、その半数が50代以上です。

東京都消費生活総合センター 髙村淳子消費生活専門課長
「何かにすがりたいという人が増えていると思います。“占い”サイトのすべてが悪いわけではなく、適正な額でやっているところもあると思うのですが、“占い”は『当たらないからこれはサービスとして成立してない』ということは、センターから苦情として伝えられないんですね。解決に向けて動くことが難しいなと感じています」

お金の不安から…“占い”うたうサイトに課金

“占い”をうたったサイトで、およそ150万円を支払ったという女性に話を聞きました。関東地方に住む、50代の横田さん(仮名)です。

サイトに関心を持ったきっかけは、自宅の修理。100万円以上かかることになり、貯金が底をつくのではと、不安に駆られたときのことでした。

横田さん(仮名)
「急にお金が必要になって、その時に“占い”サイトの広告を何回か見るようになって、じゃあちょっとやってみようかなと思いました」

“占い”のおかげで宝くじに当たったなどと記されていたサイト。無料で鑑定できるとあり、登録すると、占い師を名乗る人物から「あなたには特別な力が宿っている」などのメッセージが連日届くようになりました。

「『あなたはみんなが持ってないようなオーラを持っている』と言われて、そうなのかなと」

そして「金運を上げるため」として謎めいた言葉を何度も送るよう求められました。ただ、それを送るにはポイントを購入する必要があり、費用がどんどんかさんでいきました。横田さんがためらうと、そのたびに巧妙に引き止めてきたといいます。

「『惜しい。もう少し気持ちがこもっていれば完了したのですが…』といったメッセージが届きました。もうちょっとで終わるなら、もう1回やってみようという感じで、1万、2万があっという間に飛んでいってしまう。もうこれ以上お金が出せないという時に『私、何してるんだろう』と思って…」

横田さんが利用したサイトに占いの実態はあるのか。サイトに記された番号に電話をしましたが、何度かけても、通じませんでした。サイトに占い師として掲載されている男性や女性の画像を検索すると、画像は、企業の社長を務める男性や、モデルの女性と一致しました。

“占い”サイトをめぐるトラブルの相談に応じている佐久間大地弁護士は、同じような手法のサイトが乱立しているといいます。

佐久間大地弁護士
「占い商法、詐欺的なサイトではないかと思います。本当に占っているかどうかが、かなり疑わしいと考えざるをえません。こうしたサイトでは、言葉の意味がよくわからない、神秘性のあるような言葉をよく使っています。たとえば『波動言語』といった通常使わないような言葉を送ってくださいと言って、やり取りを継続させます」

支払いを一度ポイントに置き換えるのも、高額を使わせるための手口だと指摘します。

「ポイントに置き換えるのも、自分がどれぐらいお金をサイトに使っているのかを見えにくくするための、手口の1つではないかと私は思っています」

なぜこうしたサイトに課金を続けてしまうのでしょうか。“占い”に関する心理学に詳しい社会心理学者の村上幸史さんは次のように語ります。

社会心理学者 村上幸史さん
「幸運な結果を信じて課金を続けると、投資した分、結果を得たいという気持ちが働きます。いわばギャンブルやゲームの課金にはまってしまうのと同じで、途中でやめづらくなり、最終的に高額な利用につながりやすいのではないかと思います」

占いとの上手なつきあい方は…

“占い”サイトがすべて悪いというわけではありませんが、一部に悪質なものもある実態。
トラブルを避け、“占い”とうまくつきあうためにはどうすればいいのでしょうか。宗教やスピリチュアル文化に詳しい、北海道大学教授の岡本亮輔さんに聞きました。

北海道大学教授 岡本亮輔さん
「安全なものと不健全なものを明確に線引きできないのが、スピリチュアル文化の難しいところです。とくに怖いのは、雑誌の占いを斜め読みしている程度だった人が、病気や経済的な悩みなどをきっかけに、“占い“に一気にのめり込んでしまうケースです。それによって適切な医学的治療を受けなかったり、生活が破綻するような経済的被害を受けたりすることがあります」

岡本さんによると、被害を避けるためには次のポイントを意識することが重要だといいます。

◆非現実的な概念や効能を強く押しつけてきたり、それにもとづいて多額な金銭を求められる・高額な商品を買わせたりするものは警戒する。

◆多額の金銭を求められるような場合、周りの人に意見を聞く。ネット検索で悪評がないか調べる。

◆すがりつきたくなっても、それだけをよりどころにしない。

 

「“占い”はジョギングなどと同じで、過度に行えば不健康になります。生活を根本から変えるような付き合い方は慎重にしてください。また、行政が悪徳業者を監視し、その情報を共有・公開するような仕組みも必要だと思います」

消費者庁の消費者ホットライン188(いやや)では、“占い”をうたったサイトに関する相談を受け付けています。

占いなどの身近なスピリチュアル文化について今後も継続して取材していきます。
経験談をこちらの投稿フォームにお寄せください。

 

  • 加野聡子

    首都圏局 ディレクター

    加野聡子

    2017年入局。制作局を経て今年から首都圏局。女性のヘルスケアやライフスタイルをテーマに番組を制作。しし座。

  • 横山紗也香

    首都圏局 ディレクター

    横山紗也香

    2017年入局。水戸局を経て2021年から首都圏局。若者や外国人、ダイバーシティーなどをテーマに番組を制作。かに座。

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