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大人のみなさん、疲れていませんか?大学生がコロナ禍で感じたこと

  • 2022年5月24日

新型コロナの感染が続くこの2年半。影響を大きく受けた大学生への取材を始めると、返ってきたのは意外な言葉でした。
「コロナ前はよかったと話す大人たちは多いけれど、僕たちなりに今の生活を楽しんでいます」
コロナ禍の若者のリアルな声に迫りました。(首都圏局/記者 石川由季)

”ご飯行こうが言えない” 友達ってどう作っていたっけ?

都内の大学に通う2年生の大嶋優介さんは、映画や漫画が好きな19歳です。大嶋さんが高校2年生の終わり頃、新型コロナの感染拡大が始まりました。当時は演劇部に所属していましたが、行動の自粛や規制が強まるたびに、演劇の公演は次々と延期や中止になりました。その後、大学に進学しましたが、授業はほとんどがオンラインで、コロナ前に想像していたような学生生活の始まりではありませんでした。

大嶋優介さん
「大学の“キャンパスライフ”というけれど、そもそもキャンパスに全然行けませんでした。ずっとオンライン授業だったので、大学に入ってから知り合った人たちとは顔を合わせずにコミュニケーションをとってきた部分が多くて、改めて対面でしゃべると、ものすごく顔色が気になったり、“友達ってどうやって作っていたんだっけ”と戸惑いました。相手がコロナによる影響や感染対策などをどう捉えているかも分からないから、余計に難しくて…。『このあとご飯行こう』が気軽に言えないし、嫌がられるかもと勝負に出るくらいだったら、もう声をかけなくていいかなって感覚がありました」

自粛・制限続いても…「意外と楽しくやっています」

授業はオンラインで

「つらかったですね、大変でしたね、私たち大人にできることって何かありますかね」
私のその問いに対して大嶋さんから返ってきたのは、想定外の言葉でした。

「いや、でも意外と楽しくやっているんですよね」

例えば、大学入学後。自粛や行動の制限が続く中でしたが、その分、オンラインが主流になりました。大学進学とともに住む場所が離れた友人たちとはネット上でつながり続けることができたため、距離が離れたさみしさを感じることはありませんでした。
大学でサークルを探してみようと考えたときにも、コロナ禍で、ほとんどのサークルがオンラインでの活動を活発にしていたため、気軽にたくさんのサークルの様子を知ることができました。これまで興味を持ったことがなかった太極拳やヨットなど、さまざまなサークルの見学にオンラインで参加し、今では、落語や映像制作など、3つのサークルを掛け持ちして楽しんでいます。
コロナの感染拡大で、我慢や残念なこともありましたが、視点を変えると良かったこともあったのです。

コロナ禍でどうすれば演劇部の活動を続けられるかを話し合い

大嶋さん
「サークル見学もオンラインだったので、こっそり見に行って、違うなって思ったら抜ければいい。教室の扉を開けるよりはものすごく気が楽で、一歩踏み出すのがものすごく軽くなりました。対面だったらサークルの3つ掛け持ちも難しいと思うんですけれど、活動も1時間おきに違うオンラインの部屋に入るだけというときもあるので、そういう意味ではすごく簡単になったし、いろんなもの触れやすい環境になったなと思います」

疲れている大人たち もっと楽しんで!

落語サークルでの活動のようす

コロナ禍だからこそ、オンラインで人とうまく関わり合いながら生活を楽しんできた大嶋さん。2年生になって対面授業も増え、サークルも少しずつリアルでの活動の場が増えてきました。一方で、大人たちが、いまでも顔が直接見えないオンラインでのコミュニケーションに戸惑う姿や、通学の電車で疲れた表情をしている姿を見かけて、感じることがあるといいます。

大嶋さん
「大人が“コロナの前はよかったな” “あのときはよかったな”と言っている姿をよく見るけれど、僕は“今でも楽しいよ”って思っています。僕ら子どもとか若い人たちがどんどん大人に向かっていく中で、そのゴールにいる人たちが後ろを向いていると、僕らもどっちに向かって走って行けばいいのか分からなくなる。大人がいろいろと大変だというのはわかるけれど、僕たちが目指す場所として、大人も、もっと楽しんでほしいなって思います」

取材後記

コロナで大きな影響を受けているであろう子どもや若者たちに話を聞かせてもらい、私たち大人ができることへのヒントを探ろうと始めた取材。
大嶋さんが申し訳なさそうな表情で、控えめに「大人が、疲れて見えます」と言ってきたとき、思わず「私も疲れて見えていますか…?」と聞いてしまいました。
確かに「コロナの前はよかったよな…」が口癖のようになっていた時期もあったなと反省。長引くコロナ禍の中、ウィズコロナの生活をどういきいきと楽しんで生きていけるか、大嶋さんたちの少し先をいく大人として考えていかなければと感じました。

  • 石川由季

    首都圏局 記者

    石川由季

    2012年入局。大津・宇都宮局を経て現所属。

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