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ウクライナ支援 動き出した若い世代「自分にもできること」

  • 2022年5月19日

日常を奪われたウクライナの人たち。「自分にも何かできることはないか」と考え、募金や寄付など行動を起こした方もいるのではないでしょうか。そんななか、1か月あまりの間に、仲間の輪を広げながら180万円もの募金を集めた若者たちがいます。彼らはなぜ動きだしたのでしょうか。
(首都圏局/記者 鵜澤正貴)

新宿駅前で出会った募金活動の若者

ことし3月26日(土)、私は東京・新宿駅前でウクライナへの人道支援のため募金活動をする若者たちと出会いました。
大学生・高校生たちが今どのような思いで動きだしたのか。
話を聞かせてもらうと、コロナ禍、家族の戦争体験、東日本大震災、それぞれにさまざまな思いがありました。

駅の複数の出口に分かれて募金を呼びかけるのは大学生と高校生のグループ、あわせて10人ほど。チラシのほか、ウクライナの国旗と同じ、青と黄色ののぼり旗も手作りです。

何度かグループの募金活動を取材するなかで、募金をしたあと学生たちにエールを送る人の姿も多く見られました。

60代男性

若い人が率先して、こういう活動をしてくれているのはうれしいなと思いました。

70代女性

お礼を申し上げたいです。わたしも若かったら、やっていたと思います。

70代男性

自分の若いころを思い出して、すごく共感します。
社会を変えていくのは若い人たちの力だと信じています。がんばってほしいで

 

暗く、つらいニュースがあふれるこの時代に、学生たちの姿に希望を感じているようにも見えました。

“何かできることはあるはず”

どんなきっかけでこうした活動を始めたのか。話を聞かせてくれたのは、小澤未侑さん。早稲田大学の3年生で、グループのリーダーです。

記者

なぜ活動を始めたのですか?

小澤さん

活動を始めようと思ったのは、3月10日で、ちょうど東日本大震災から11年になるころでした。震災が起きた当時、私たちはまだ小学生で、確かに幼かったかもしれないけど、「何もできなかった」という思いを持っていて、心残りがあります。
そして、いまはウクライナで苦しんでいる人たちがいる。震災の時に行動できなかったことを10年後に後悔しているということは、いまウクライナのために動かなければ必ず後悔する。いまは大学生で、仲間もいる。遠く離れた場所からでも、何か自分たちにできることはあるはずだと思って、後悔しないために、活動を始めました

 

 

多くのメンバーが募金活動をしているようですが何人くらいいるのですか?

 

ことし3月にグループを立ち上げたら、3日間で100人を超えるメンバーが集まってくれました。私たちの世代には、ニュースを見て、何かしらウクライナのために動きたいという思いを持っている人が多かったのだと感じます。

 

3日で100人はすごいですね

 

SNSなどを通じて、呼びかけました。同じ大学の知り合いのほか、別の大学の学生や社会人、高校生などが賛同してくれました。私1人では、チラシやのぼり旗の作成など、何もできませんでした。でも、思いを声に出したら、共感してくれる人がいて、活動を行うことができました。

コロナ禍で感じてきた孤独

瞬く間に広がった活動の輪。呼びかけに応じた1人が寺嶋竣大さんです。
大学で語学の授業が一緒だった小澤さんの活動を知って参加したといいます。

寺嶋さん

普通の生活を送っていた人たちが突然あのような状況になって、苦しんでいるというのは、やはり自分にとって大きな衝撃でした。幼いころから祖父に東京大空襲の経験を聞いて育ったこともあって、本当にひとごとじゃないなと思っていました。

寺嶋さんが入学したのは、新型コロナの感染拡大が始まっていた2020年4月。
授業はオンラインでの実施となり、大学に通えない日が続いていたといいます。
そんななかで「行動を起こすこと」に不安を感じていたといいます。

寺嶋さん
「友人ができないまま大学生活を送っていて、朝に起きた時や日中に1人で家にいる時に、ふとすごく孤独感を感じることがありました。ずっと2年間、1人で家にいることに慣れてしまっていたので、新しいコミュニティに加わるという経験が抜けていて、新しい世界に飛び込む、自分でアクションを起こすということに対して、若干の不安がありました。
でも、ウクライナの人たちのことを考えると、そんな不安を感じるよりも、まず、いま動ける僕が何か行動を起こすべきなんじゃないかと」

“動いてみると、できることは意外にある”

不安を抱えながらも実際に動いてみると「自分にもできることがある」と感じるようになったといいます。

寺嶋さん
「ステイホームの期間中、せっかくなので、パソコンの勉強をしていました。身につけたスキルを使って、街頭で使うのぼり旗をデザインしました。街頭に立っていると、『僕は何もできていないけど、代わりにがんばってくれてありがとう』と声をかけてくださる方がいました。
また、ウクライナに友人がいる方、在日ウクライナ人の方なども『本当にありがとう』という風に感謝の言葉をかけてくれました。自分の中で思っているだけじゃなくて、実際に動いてみると、何か自分たちにできることって意外にたくさんあるんだなと感じました。小さなことだとしても、ひとつひとつこれからも行動を起こしていきたいと思っています」

“できることを続けていく”

募金活動を始めてから1か月半がたった4月25日。
東京・港区の国連UNHCR協会に小澤さん、寺嶋さん、メンバーの奥原彩葉さん3人の姿がありました。

これまでに街頭やオンラインで集まった募金は180万円あまり。
この日は川合雅幸事務局長に寄付の目録を手渡しました。
活動についてUNHCR協会の担当者と話すなかで、奥原さんは活動への感想をこう話しました。

左:奥原さん

奥原さん
「私は友達に誘われて『ちょっとやってみようかな』と思って、とりあえず参加してみました。もちろんウクライナで起こっていることはテレビで見ていたのですが、誘われるまでは何もしていませんでした。街頭での活動を始めてみたら、もちろん優しい言葉をかけてくださる方もいる一方で、全然目を合わせてくれない人もいました。
でも、たぶん私も参加していなかったら、そうだったんじゃないかなと思って、事の深刻さを実感しました。軽い気持ちでもいいからやってみると、関心も深まるし、実感も湧くと感じました」

そして、小澤さんも今後の抱負を述べました。

小澤さん
「最初はどれくらい輪が広げられるか、不安でしたが、ひとまずこうして形にすることができてよかったです。これは1つの節目ではありますが、終わりではないので、自分たちの思いを大事にしながらできることを続けていきたいです」

今後は、日本で暮らすウクライナの人たちと協力して、チャリティーイベントを検討するなど、活動を続けるということです。

取材後記

取材した3人の学生は2年前の2020年4月に入学した大学3年生です。この学年の学生たちは新型コロナの影響で、入学した時から大学に通うことがままなりませんでした。孤独を感じることもあったという寺嶋さんは「動き出すことに不安はあったが、いてもたってもいられなかった」と語りました。コロナの感染拡大やウクライナ侵攻など、激変する世界の中で、少しでも自分たちにできることはないかと葛藤する学生たちの思いには共感できるものがありました。若い世代の思いや行動を今後も取材したいと思います。

  • 鵜澤正貴

    首都圏局 記者

    鵜澤正貴

    2008年(平成20年)入局。秋田局、広島局、横浜局、報道局選挙プロジェクトを経て首都圏局。

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