パートナーの妊娠が発覚! いよいよ、自分も“パパ”になる。
そんな男性のあなた、“育児休業”とりますか?
ママになるあなた、“パパに育休” とってもらいたいですか?
8人に1人、12.65%にとどまる「男性の育児休業」はなぜ必要なのか、どうすれば広がるのか。
一緒に考えてみませんか。
(首都圏局/記者 石川由季)
法律が改正され、4月から、男女問わず育児休業に関する周知や意向の確認を行うことが企業に義務づけられました。
でも、実際問題…。
“男性育休”とる?とらない? 東京・新橋で、聞いてみました。
許されるのであれば、育休とりたかったですけど…。小規模の会社だったので、人数的なところもあって難しかったです。
取りたいなって思いは、100%、120%あるんですけど、自分が稼がなきゃとか、昇級できなかったりとか考えちゃうと迷ってしまったりするんじゃないかな。
昔からの“男の人はずっと働く”っていうのを引き継いじゃってる会社はとりにくかったりしますよね。夫には「子どもが生まれたらちゃんと育休とってね」って言ってるけど…
昔、子どもが生まれた直後に2週間だけでも休めないかってチャレンジしたけど、当時はとれませんでした。これからは、寛容に受け入れる状態を作っていかなければいけない。だだ、人員不足は否めないので、いる人間で対処するのがつらいところではある。
収入や昇進にどう響くか、職場の同僚への影響を心配する気持ち…。
そして、上司との意識の隔たりなど、積極的に取得できないという“壁”がいろいろとあることが分かりました。
いっぽう、SNSなどでは日々、いわゆる“ワンオペ”で小さな赤ちゃんを育てるママたちから、悲鳴にも近い声が聞こえています。
こんなワンオペママたちの現状を知ったことが契機となり、男性育休の取得を決めたのが、都内に住む会社員の羽田野良太さん(31)です。
共働きの妻とともに、現在、1年2か月の育児休業中。赤ちゃんは生後7か月です。
妻の妊娠が分かった時点で、すでに子育てをしている友人が多かった羽田野さん。
パパは仕事があるので別室で睡眠をとる生活。
なかなか寝られず精神的に参ったママが、夜中に、赤ちゃんと一緒に泣き出してしまった。
友人たちの産後直後の育児の大変さを訴えるエピソードを聞くことで、休めるのであれば自分も育休を取得したいと考えるようになったのです。
しかし、当初は制度についても詳しく知らず、どのくらい取得が可能なのかや、収入はどうなるのかなど不安な部分もありました。
制度について調べ、育児休業給付金の支給額を確認するなどして、妻と2人同時に育休を取得しても生活を維持できることを確認。
長い目で見ても、育児を妻と同時にスタートしスキルを身につけるほうがいいと判断しました。
羽田野良太さん
「妻が仕事に復帰したら、休日の出勤もある。そのときには、自分が1人で子どもの面倒を見る時間もあるでしょうし、それで1人じゃみれないっていうのは話にならないというか。“使えない夫”って言ったらあれですけど、育児に対して役立てない夫になるのは嫌だったので。1人でみれる力を身につける上でも育休は大事かなと」
実際に、子どもが生まれると、妻の産後の体へのダメージは想像以上でした。
出産の際の出血量が多かったことから貧血もあり、歩くのがままならないときもあったそうです。
さらに、この年末には、息子がウイルス性の胃腸炎に。
自宅で嘔吐を繰り返し救急病院で点滴を受けるなど、症状が悪化する中で、羽田野さんと妻も相次いで感染。
実家なども頼れず、出産直後からともに育児と家事をこなしてきた中で、なんとか乗り越えることができましたが「2人いてもこの大変さなら、1人だったら乗り越えられなかっただろうな」と感じたと言います。
羽田野さんが1年あまりの育休を取得できた背景には、務める会社が3年前から取り組んできたプロジェクトがありました。
羽田野さんが働く、大手アパレルメーカーの50代の社長は、3年前、ほかの企業の経営者らとともに、男性育休の啓発動画に出演しました。
その中で社長をはじめとした経営者らは、自らが育児に関わってこなかった過去を赤裸々に告白し、反省のことばを述べていきます。
「生まれたばかりの息子と触れ合う時間を多く持てればよかった」
「いつ、パパと呼ばれたかについては、記憶にない」
「非常に後悔しています」
トップ自ら、体験談をもとに、現役世代に呼びかけます。
「がむしゃらに働くことが男としての価値であるという時代はとうの昔に終わっています」
大手アパレルメーカー 保元道宣 社長
「私自身が積極的に発信することで、社内に意識が浸透していくのではないかと考えています。会社を強くするためにも、社員には充実した生活の中から新しい仕事の種をうんでほしい。昔は、画一性が尊いことだったし、同じ動きをしていることで安心感もありましたが、今は逆で、働き方は複数で、むしろ併存していたほうがゴールに近づける時代だ」
さらに、社内でも管理職向けに研修を実施。
共働きが当たり前になる時代の中で、育休の取得を希望する若い世代が増えていることや、10人に1人が発症するともされる産後うつが自殺などにもつながってしまうことに触れました。
50代が中心の管理職世代に「子育ては夫婦ともにするもの」と、意識のアップデートを促し、男性育休を推進する必要性を理解してもらうためです。
産後の死亡原因1位が自殺だって聞いて、ショッキングでしたし、これは個人や会社の話ではなく社会全体で解決していかないといけないと思いました。男性も育休をとる可能性があるっていう前提で仕事を進めないといけないし、誰かが抜けてもフォローできる属人化させない仕組みを作り上げたい。
企業では、業務の見直しや効率化を進めることで、さらに育休をとりやすい環境作りを進めたいとしています。
人事担当者
「育休は、ほかの休みと違ってかなり前から休みを取得するのが分かるので、人員の再配置の考えなどのアクションがとりやすい。管理職や人事担当からの『取得はどうするの』という前向きな声かけが非常に大事」
私(記者)は、共働きで5歳の子どもを育てています。
夫は「育児休業」の取得こそしなかったものの、出産にあわせて1週間ほどの休みをとったほか、私の職場復帰のタイミングで1か月の休みをとりました。いずれも、夫の職場の当時の上司や同僚の方たちが温かく送り出してくれたからこそ取得できた休みで、ともに育児のスタートダッシュを切れたからこそ、衝突を繰り返した末ではありますが、いま家事や育児を完全に分担することができています。
周りの友人たちを見ていても、同世代では「子育ては夫婦ともに」という感覚の世帯が増えているように感じます。さらに、コロナ禍で、実家や子育て支援施設といった家族以外の人を頼りづらい状況になったときなど、男性が育児参加できているかどうかに、赤ちゃんやママの命をも委ねられているようなケースも少なくありません。
これまで取材をさせてもらった企業を見ていると、男性が育休を取りやすい職場は、結果的に誰もが休みを取りやすい職場になっているケースが多いと感じます。
放送後も、さまざまな意見が寄せられました。
「30代の子どものいる夫婦では当たり前に議論されていることばかり」というような子育て現役世代の声があるいっぽうで、男性が育児のために長期の休みをとることをまだ肯定できていないと感じられる声もありました。
経済成長期を支えた、“24時間365日、誰もが働く“という考え方は、育児に限らず社員に仕事以外の「生活」があることを重視していないものでした。「働き方改革」が進められる今も、長年続けてきた業務の進め方や仕組みが残っているという企業は少なくないのではないでしょうか。
自分たち若い世代も、もっと声をあげていきながら、すべての人が働きやすい社会のヒントとなるような取材・発信をこれからも続けていきたいと思います。