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コロナ禍 “街の明かり消さない”東京 墨田区 金融機関が下町支援

  • 2022年4月5日

長引くコロナ禍。東京の下町で店や工場を営む中小企業は打撃を受けています。感染が完全になくならない“コロナが消えない社会”を見据え、東京・墨田区では、地域の金融機関による新たな支援が始まりました。その思いは「街の明かりを、消さないために」です。
(首都圏局/記者 石川由季)

休業は13か月 ちゃんこ料理店も苦境

東京・墨田区の両国で46年続くちゃんこ料理店を経営する会社は、コロナ禍で大きな打撃を受けていました。寒い日も続き、例年であればかき入れ時となることし2月、コロナ禍で5回目となる休業を余儀なくされていました。感染の再拡大で、まん延防止等重点措置が出される中、店を開けても売り上げが期待できないためです。長期休業の期間は、合わせて13か月にも及びます。

ちゃんこ料理店「巴潟」おかみ 工藤みよ子さん
「大人数で1つのお鍋を食べるのがだいご味でしたが、コロナで難しくなってしまいました。従業員も数多くいる中で、店をなかなか開けられず、顔で笑って心で泣いて、お風呂場で1人泣いていました。1人用の“個鍋”のメニューを新たに用意したりしていますが、これ以上、長く開けたり閉めたりの繰り返しが続くと、なかなか経営的にも厳しくなってきます。先が見えないですね」

地域の金融機関 連携始めます

こうした中、ことし2月、東京・墨田区役所に集まったのは、区内に本店や支店を置く地域の4つの信用金庫や信用組合です。
下町で苦しむ中小企業の状況に危機感を強め、地域の4つの金融機関が新たな組織を設立したのです。組織の枠を超えて手を取り合い、下町を支えようという動きです。

支援のイメージです。ある金融機関が支援していた中小企業が事業を続けるのが難しくなった場合、4つの金融機関が一緒になって支援方法を協議します。コロナ禍に対応した新たなビジネスの企画を考えたり、事業の受け継ぎ先を地域の中でともに探したりします。

その中心を担うのは、「ひがしん」の愛称で親しまれる「東京東信用金庫」の湯浅博さん。下町の中小企業の支援を30年以上続けてきた金融マンです。これまでにも人手不足や後継者不足をはじめとした課題は山積していましたが、感染拡大で資金繰りの悪化とともに、下町の経営者の“気持ちの落ち込み”が気になり始めたといいます。

東京東信用金庫 湯浅博 執行役員部長
「コロナ禍になって、“疲れちゃった”、“仕事を辞める”と言われたケースがあったんです。コロナが長引く状況になると、環境が変わって将来が見えないので、事業をやめてしまおうって人が増えてくるだろうと。今は融資の返済も猶予されていますが、返済が始まったときに、廃業とかが加速してしまうのではという懸念が出てきたんです」

せめて下町で続いてきた“仕事”だけでも受け継いでもらえないか

このままでは、街から、店や工場の明かりが消えてしまいかねない…。

4つの金融機関は定期的に集まって、会議を開いています。互いの顧客情報を出し合って下町の経営者をどう支えていくか、検討するためです。組織の枠を超えたこうした取り組みは、これまでにはなかったものです。

検討会で共有されたのは、これまで長年、下町で守り続けられてきた、確かな技術を持つ中小企業の情報です。顧客の情報を紹介するそれぞれの金融機関の担当者の発表も熱がこもります。“なんとか、企業や技術を下町で守り続けていくことができないか”、知恵を出し合っていました。
そのうちの1つが、高齢の経営者が1人で切り盛りする縫製会社です。病院の白衣などを長年、専門に受注してきましたが、コロナが続く中、仕事が難しくなってきたのです。

湯浅さんは、早速、自分の取引先である別の縫製会社を訪れました。下町で続いてきた技術だけはせめて受け継いでもらえないか、相談するためです。

湯浅さん

白衣をお一人でやられてた会社があって。

縫製会社 社長

相当、特殊なノウハウをお持ちなんでしょうね。

 

ぜひ1度、ご興味があるのであればいっしょに行って見ていただきたい。

 

せっかくの技術がけっこう消えていってるじゃないですか。本当にもったいない。残すべき企業と皆さんが判断されて、我々に力が及ぶならぜひ協力したい。

仕事を受け継ぐことを、前向きに検討してもらえることになりました。

金融機関は運命共同体 “地域を元気にするために”

湯浅さんは、4つの金融機関の連携で支援できる中小企業がないか、今も地域を回っています。
この日訪ねたのは、休業が続いていたちゃんこ料理店を経営する会社です。2か月ぶりに再開することを決めたこの店に対し、湯浅さんは、ネット販売の支援を新たに始めるなど、コロナ禍でもできるビジネスのサポートを続けます。

東京東信用金庫 湯浅博 執行役員部長
「僕らは地域を元気にすることが仕事で、地域と運命共同体的なところがあると思っています。今は、“コロナはなくならないだろう”、“コロナと一緒に生きるんだ”って言われるお客さんも多い。私たちも一緒になって汗をかいて、ここをチャンスに切りかえていけば、地域は元気になる」

取材後記

新型コロナの影響が、東京の下町にも大きな影を落として2年余り。
下町でも、経済活動と感染防止対策をどう両立していくかは、常に難しい課題の一つでした。それでも、地域の中では少しずつ“コロナが消えない社会”を見据え、経済をどうもり立てていくか模索する、確かな動きが出始めています。
これまでの下町のつながりをさらに強固にしながら、街の明かりを消さないために取り組みを進める人々たちの姿を、今後も取材したいと思います。

  • 石川 由季

    首都圏局 記者

    石川 由季

    平成24年入局。大津局、宇都宮局を経て現在は、墨田区や葛飾区などの下町を担当。

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