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“外で安心して遊べない”色素性乾皮症の子どもたちに新たなウエア

  • 2022年3月3日

難病のため、日中安心して外出できない人たちがいます。紫外線を浴びると皮膚がんのリスクが高まる色素性乾皮症という病気の患者です。この難病の子どもたちに、日中でも安心して外で運動してもらおうと、新たな取り組みが始まっています。
(さいたま局 所沢支局/高本純一

難病「色素性乾皮症」の子ども

東京都内に住む小学3年生の阿部新大さんです。
紫外線を浴びると皮膚がんのリスクが高まる色素性乾皮症があります。

色素性乾皮症は、国の指定難病で、紫外線に当たると、皮膚がんになりやすいとされます。抜本的な治療法はなく、日常生活では、防護服などでしっかり紫外線を避ける必要があります。
公益財団法人が運営している難病情報センターによりますと、国内には300人から600人いると推定されています。

阿部さんは、定期的に診察を受けがんのおそれがある箇所を取り除く手術も受けてきました。
部屋には、紫外線を遮るカーテン。

母親

UVカットのカーテンをしています。日ざしが強い時などは遮光カーテンを閉めています。

外出するときは、紫外線を防ぐため日焼け止めのクリームを塗り、手袋や帽子が欠かせません。

外で遊ぶのは日の光が弱まる夕方以降。誰もいなくなった公園で体を動かします。

阿部さん

動くのが好きなので、外で運動したい。

父親

非常に遊びに行くのが好きな子ですが、遊べる時間が限られてしまうことも。

“運動会に参加したい” 願いにこたえたい

紫外線に弱い子どもたちも外で遊べる機会を作りたい。
皮膚炎の息子のため自ら会社を立ち上げ、長年紫外線対策の衣類を作ってきた女性が立ち上がりました。

20年前から紫外線対策の衣類を作っている松成紀公子さんです。

1歳だった長男が、アトピー性皮膚炎と診断され、皮膚科医に紫外線対策を勧められたといいます。当時は紫外線を防ぐ乳幼児向けの商品はほとんどなかったといいます。
松成さんは会社を設立し、紫外線をカットする帽子や上着などを作り、今では多くの種類の商品を販売しています。

色素性乾皮症の子どもたちの実情を知って、暑い時期でも着ることができるウエアを作りたいと考えました。

松成紀公子さん
「作り始めたきっかけは色素性乾皮症の患者さんたちの会に出て、たくさんの苦労を聞いたことです。その中で、心にひっかかったのは、帽子をかぶってサングラスして、防護服やたくさんの洋服を着て、手袋もして、そんな状態だと暑い時期の運動会にも参加できないということでした。
なんとか運動会は参加させてあげたいということで、たった1枚で全身をUVから守って、安心して外に出してあげられるものを作りたいと思いました」

カギは暑さ対策

ウエアは、紫外線と暑さ対策を兼ね備えた性能を目指しました。

紫外線を通さないか、自前の測定機器も用意し、さまざまな生地を取り寄せては品質を確かめました。

暑さ対策はファンを付けた衣類のメーカーに協力を求めました。
空気が漏れないよう、腰のあたりをひもで縛り、袖口と襟の隙間から効率的に排出するノウハウが取り入れられました。

暑い日でも快適に過ごせるか、気温32度の環境で実験を行いデータを検証しました。
会社の担当者は、「ファンによって、服の中に空気を取り込んで、それを排出していくことで体表面の温度が下がる。非常によい結果が得られたかなと考えています」と説明していました。

ファン付き衣類メーカー 市ヶ谷透社長
「気化熱で体を冷やしますので涼しく感じていただけると思います。できるだけ快適に過ごしていただきたい」

完成したUVカットのウエア

3年ほどかけて完成したウエアは、顔に紫外線があたらないようフードを大きくしたほか、フィルムは傷がつきにくい柔らい素材で取り外しもできます。
肌が露出しないよう袖は長めのデザインで指を通すと手が隠れるようになっています。

さらに、前のポケットでも手を隠せるよう工夫されています。

松成さん

安心して外に出られるってことを伝えて、お子さんたちの笑顔が見られたらうれしいです。

 

松成さんは2月、完成したウエアを阿部さんのもとに届けました。さっそく着心地を試してみます。

阿部さん

着やすくて、良い。涼しい。

 

その後、阿部さんは学校にも着て行ったといいます。
 

阿部さん

あったかい時期になってくると暑いので、こういう扇風機がついているのがあってよかったです。うれしいです。作ってくれてほんとにありがとうございます。友達といっしょに歩いて登校したいです。

阿部さんの父親

今までの活動範囲、行動範囲が少しでも広げられ、そのことが本人の喜びにつながる。喜んでくれる姿は親としての喜びにつながってくるので、感謝しています。多くの方が協力して作ってくれて、非常にありがたく思っています。

 

松成さんは、クラウドファンディングで資金を集め、この防護服を20着ほど作って阿部さんをはじめ希望する子どもたちにプレゼントしたということです。
さらに、新たに赤ちゃんや幼児向けのウエアづくりにも取り組んでいます。

松成紀公子さん
「外で元気にいっぱい遊んで、家族の思い出をたくさん作ってほしいと思います。今回は、小学生のサイズのものを作りましたが、もっと小さい子どもや高齢者とか、紫外線に関する悩みを持っている人はいっぱいいらっしゃるので、そんな方たちのご要望に応えていきたい。世界になくて私たちが作れる1枚を作っていきたいと思います」

  • 高本 純一

    さいたま局 所沢支局

    高本 純一

    所沢市など埼玉県西部の地域のニュースや話題を取材。

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