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真冬でも式典ではタイツ禁止!? 学校の“つらい校則”は誰のため? 

  • 2022年1月24日

「寒いのにタイツ禁止だから靴下で終業式に出た娘、始業式は休みたいと言い出した」
去年12月、SNSでこんな投稿を見つけました。都内の中学校に子どもを通わせている保護者の声です。真冬でも、終業式や始業式など「式典がある日にはタイツをはいてはいけない」という校則があるのだそうです。学校がタイツの着用を禁止するのはなぜなのでしょうか?投稿者や教育委員会に取材してみました。
(首都圏局/ディレクター 木村桜子)

タイツは「ドレスマナー」違反!? 校則に疑問持つ親子

SNSに投稿をしたのは、東京都内に住む井上智美さん(仮名・40代)です。
12月下旬、2学期の終業式の当日になって、区立中学校に通う娘の美咲さん(中1)から“きょうは式典だから、タイツを着用しての登校が禁止されている”と聞かされました。

「なぜ真冬に、防寒具であるタイツの着用が認められないのか」と驚いた井上さん。
去年10月に学校から配られた生活指導だよりを見返してみると、「普段の学校生活ではタイツの着用は認めるものの、式典時は着用不可」という記載がありました。

生徒指導だより

井上さん(仮名)
「いくら校則で決められているからとはいえ、女子生徒の中には生理などの体調不良でおなかを冷やしたくない子もいるだろうし、寒さに弱い子もいると思います。なぜ式典ではタイツを着用してはいけないのか、保護者に対しても校則についての合理的な説明はなく、納得できないと思いました」

美咲さん(仮名)
「終業式の前日には、生徒指導の先生から“女子は明日寒いかもしれないけど、1日頑張れよ!”と声かけがありました。学校からはタイツ禁止の理由として “式典時にはタイツをはいてはいけないというドレスマナーがあるから”と聞かされました。自分でも調べてみましたが、そのようなマナーは見つけることができませんでした」

娘の健康を心配した井上さん。登下校の時だけでもタイツを着用した方がいいと伝えましたが、美咲さんは「校則を守らないと、周囲から浮いて悪目立ちしてしまう」「内申点に悪い影響が出てしまうかも」とかたくなに校則を守ろうとしている様子だったといいます。
結局、美咲さんはタイツを着用せず、スカートと白ソックスで登校しました。

普段より寒い思いをしながら終業式に出席した美咲さん。そこで驚いたのは生徒と教師の服装の違いでした。
スカートと白ソックス姿の女子生徒たちに対して、女性の教師は全員ズボンを着用していたというのです。

美咲さん(仮名)
「普段スカートの先生もズボンをはいていました。なぜ先生だけ防寒が認められるのか、納得できませんでした。生徒にタイツを禁止するというのなら、大人である先生たちも防寒をしないで過ごしてほしいです」

時代に合わない校則“子どもの人権”考え見直しを

真冬にタイツの着用を禁止することは、制服でスカートを着ることを決められている女子生徒たちにとってあまりにも酷なことではないか。
1月の始業式を前に、井上さんは学校に電話をかけ「式典の日でも、登下校時などはタイツ着用を認めてほしい」とうったえました。
その結果、学校からは「式典の時間帯以外はタイツの着用を許可する。健康上の理由でタイツの着用が必要な場合は、学校まで電話で相談するように」と連絡がきました。
娘の美咲さんはタイツを着用して登校できたものの、式典時にはタイツを脱ぎ、白ソックスにはき替えて出席しました。

学校からの始業式に関する一斉メール

井上さん(仮名)
「娘が通う中学校では、タイツ着用禁止の校則のほかにも、持ち物や靴下、下着の色まで指定されています。熱中症対策の水分補給にも細かいルールが決められているなど、子どもの行動を縛る内容の校則が多いです。
昔は校則を細かく設定し、子どもたちの行動を管理するのが当たり前だったかもしれません。しかし今は、子どもたちの考えを尊重する時代だと思います。
学校には、時代にそぐわない校則を見直し、子どもの人権について真剣に考えてほしいです」

“タイツ着用禁止”の指導 教育委員会の見解は

美咲さんの学校で行われている“タイツ着用禁止”の指導について、区の教育委員会の担当者に話を聞きました。
区内の学校全てに“式典時のタイツ着用禁止“の校則があるわけではなく、生徒の防寒対策については、学校それぞれで対応しているという回答でした。

区教育委員会の担当者
「おそらく“儀式だから”“伝統だから”という教員個人の認識で指導してしまっているのではないでしょうか。学校では“教員も生徒も同じルールで”と言うわけにはいきませんが、防寒・健康面では大人も子どもも関係ありません。生徒にだけ防寒対策を禁止するのはそぐわない。学校側の配慮が必要で、不適切な指導だと思います。
教育委員会では区立の学校に対し、慣例や合理的ではない校則を見直し、子どもの意思をくみ取りながら指導するよう伝えています。ただ学校長から現場の教員に対してきちんとフィードバックができているかは学校ごとにばらつきがあり、課題と感じているところです」

取材後記

井上さんが娘の学校の校則に異議を唱えるのは、自分自身が学生時代に理不尽な校則で学校生活や行動を制限され、苦しんだ経験があるからとのことでした。
“正当で合理的な理由のない校則に、娘も同じように苦しめられているのを見たくない”という、井上さんの言葉が心に残りました。

 

“なぜ守らなければいけないの?”と疑問に思うつらい校則はありませんか。
 こちらの投稿フォーム からご意見をお寄せください。

  • 木村桜子

    首都圏局 ディレクター

    木村桜子

    2012年入局。大阪局、神戸局などを経て2020年から首都圏局。保育や教育、ジェンダーの問題に関心を持ち取材中。

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