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「通学路にガードレールがない」投稿相次ぐ 千葉・我孫子の現場は

  • 2021年12月15日

体を縦にしながらやっとの事ですれ違う子どもたち。車道との間にはガードレールはありません。千葉県我孫子市、ある小学校の通学路です。
NHKでは、ことし6月に起きた千葉県八街市で下校中の児童5人が巻き込まれた事故のあと、視聴者から寄せられた「危険な通学路」に関する投稿をもとに、取材を続けています。
投稿のなかで目立つのは「通学路にガードレールがない」という声。20件以上にのぼります。
そのうちの一つの現場に記者が向かいました。
(「その通学路、安全ですか?」取材班 千葉放送局/記者 渡辺佑捺)

ガードレールがない幹線道路の通学路

「幹線道路沿いの通学路にガードレールがなく危険を感じる」
千葉県北西部、我孫子市から寄せられた投稿です。
現場の道路は我孫子市内を利根川に並行するように走る、国道356号。千葉県銚子市と我孫子市を結び多くの車が行き交う幹線道路です。この道路沿いのガードレールのない歩道が近くの小学校と中学校に通う子どもたちの通学路になっています。

 現場を訪ね、投稿をくれた女性を待つ間、歩道に数分間立ってみて気になったのが、走り抜ける車のスピードです。歩道が狭く、車との距離が近いため、体感的にはかなり速く感じます。
また、歩道と車道の間にはガードレールがないため、車がもし突っ込んできたらと、不安を感じました。

「毎日不安」保護者の声

今回、投稿をくれた佐藤桂世さんと、2人のお子さんに現場に来てもらい、詳しい話を聞くことができました。
佐藤さんの息子は中学1年生と小学2年生。この国道沿いの通学路を利用しています。

渡辺記者

ふだん、この国道沿いの通学路を利用していてどのような危険を感じていますか?

佐藤さん

この道路は私の息子たちが通う学校のほかにも、複数の公立の小中学校の通学路になっていて、朝は多くの生徒や児童が歩いています。通学する時間帯は、通勤でスピードを出している車も多いので、いつか車が歩道に突っ込んできて事故がおきないか不安です。

 

さっきしばらく様子を見て気づきましたが、車の速度が結構早く感じますね。

 

車には通学の時間帯だけでも速度を落としてもらいたいのですけれども、ときどき学校からは『道路に児童が急に飛び出してきて危ないとドライバーからクレームがありました』と連絡が来るんです。もちろん子どもたちも気をつけなくてはいけないのですが、ドライバーの方にも気を付けていただきたいと思っています。

歩道の幅を示す記者

佐藤さんによると、国道356号は、特に朝や夕方の通勤時間帯には交通量が多くなり、急いでいるためかスピードを出す車も多くなるということです。

佐藤さんが特に危険だと感じているのは、歩車道の境目にガードレールがなく、縁石や白線だけが引かれている場所です。そのあたりを見てみると、歩道沿いには住宅が建ち並んでいて、車が突っ込んできたときに、逃げる場所がないところもあります。

赤い部分が、佐藤さんが特に危険を感じている通学路の場所

すれ違うのも一苦労…子どもの目で感じる不安

子どもの目線ではどうか。話を聞いてみました。

渡辺記者

実際にこの国道を通るとき、どのように感じていますか?

中学1年生の次男

実際に自転車で道を通っていると、車との距離が近くて、怖いと思ったことがあります。中学校は自転車で通学しますが、国道356号沿いは危ないので自転車から降りて通学するよう言われています。

歩道が狭いため、すれ違うのも一苦労だといいます。登下校中の子どもたちは、ランドセルを背負ったり、かばんを肩からかけたりしているのでなおさらだといいます。現場で取材中にもすれ違う時に車道に出てしまう人がみられました。

「ガードレール設置」を市に要望も…

佐藤さんはこれまでにガードレールを設置してほしいと我孫子市などに訴えてきたといいます。きっかけは2019年5月、滋賀県大津市の交差点で歩道に車が突っ込み、散歩中の保育園児が死傷した事故でした。
しかし、それから2年がたちましたが、佐藤さんが指摘した場所については、対策が進んでいません。なぜなのか、道路を管理する千葉県柏土木事務所に話を聞きました。

渡辺記者

地域の住民からガードレールなどの設置要望があるかと思います。この国道ではなぜガードレールなどの設置が進まないのでしょうか?

土木事務所

この国道は、旧水戸街道ともいわれ、もともと馬車道として使われたような古い道です。道路沿いには昔からある家屋や商店が建ち並んでいます。全体の幅に制限があるなかで、車道と歩道の幅をそれぞれ十分に確保することは難しいのです。細い歩道にガードレールを設置してしまうと車椅子が通れなくなってしまうなど問題もあり、設置が難しい場所もあります。

 

ガードレール以外にも、通学路の安全を高める方法はとれないのでしょうか?

 

改善しなければならない箇所は非常に多いのが現状です。そのため教育委員会からの要望にある箇所を優先に、対応しています。道路環境によって対策はひとつひとつ変わってくるので、まず現地調査を進めて、対応していく必要があると考えています。

通学路沿いに立てられた「学童注意」の看板

こうした通学路の現状について我孫子市の教育委員会はどう考えているのか。

我孫子市教育委員会
「このあたりの通学路については、京都府亀岡市で無免許運転の車が登校中の小学生の列に突っ込んだ事故をきっかけに行われた平成24年度の通学路の緊急点検の際に、『歩道が狭く凹凸が多い。自転車と歩行者がすれ違えない』として、改善の候補箇所として挙がりました。ただ、古くから住居が建ち並んでいる道路で、道路環境を変えることが難しいのです。そこで、『学校による交通安全教育の推進』で対応することになりました。このため各学校では、できるだけこの国道を避けた道を通って通学するよう指導をしています」

ただ、住宅の場所によってはこの道を通らざるを得ない児童もいて、実際には複数の子どもたちがこの道路を通学路として利用しています。現場では事故を防ぐために、保護者や高齢者による見守り活動が行われていますが、子どもたちが通るすべての時間に活動することはできません。佐藤さんは、子どもたちの通学路の改善に「高い壁」を感じているといいます。

佐藤さん
「車との間にガードレールがワンクッションあるだけでも安心感が違いますし、もし居眠りなどで自動車がつっこんできても、ガードレールがあれば直接車がぶつかるよりも衝撃を防げると思います。幸いにも、事故が起きたという話は私が知る限りありませんが、何か起きてからでは遅いと思っています。子どもたちの安全のためにも、どうか改善されてほしいです」

ガードレールが設置できないときには

今回のケースでは道路周辺の環境、自治体側の予算などがネックとなり、設置が進んでいませんでした。ほかの地域からも「ガードレールがなかなか設置されない」という多くの投稿が届いています。

現場ごとに事情は異なるかもしれませんが、車通りが多いにも関わらずガードレールのない通学路が各地にあるということは、ドライバーがひとたび操作を誤れば、大きな事故につながりかねないということです。道路環境の改善が求められるところですが、対策がとられるまでの間、できることとしては、ドライバーがこうした日本の道路事情を十分認識して、一層慎重に運転することが求められると感じました。

「ガードレール」を設置できない地域で、どのような対策が有効か、これからも取材を進めていきます。もしみなさんの周りで、「このように対策をした」という例があれば、ぜひ情報をお寄せください。

 
  • 渡辺佑捺

    千葉放送局 記者

    渡辺佑捺

    2021年入局。警察・司法を担当。台風や豪雨災害が相次いだ千葉の人たちが安全・安心に暮らせるように、これからも防災・減災につながる情報を発信していきます。

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