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都立高校入試の男女別定員制撤廃へ 学習塾や受験生の反応は

  • 2021年10月14日

公立高校では全国で唯一、男女別の定員を設けている東京都。9月、この制度を今後段階的に見直し撤廃する方針を示しました。この方針を受験の現場ではどう受け止めているのでしょうか。
「来年受験だから間に合わない」
「男女が少しずつ平等になっていくことは大切」
「ぜひ正当に評価を。子どもたちの一生がかかっています」

長年この制度の改革を望んできた学習塾の関係者に、今の思いを聞きました。
(首都圏局/ディレクター 木村桜子)

男女別定員制撤廃へ 学習塾では

男女別定員制を撤廃する方針が出されたことで、受験生にはどんな影響があるのか。
10月はじめ、大田区で受験指導を行う学習塾を訪ねると、この制度の経緯を含めて受験生への説明がさっそく行われていました。

塾長

男女別定員制は1950年にできた今から70年前の制度です。古いでしょ?世の中どんどん変わっているのに制度は生きているわけだよね。日本中で東京だけなんだけど。男女別で定員が決められるとどういうことが起きるかというと、だいたいの学校で女子が入るのが難しくなります。男子、ラッキーと思うかもしれないけど、女子は大変なんですよ。

この塾では、指導の内容やクラス分けは男女同じです。しかし志望校を決めるときには男女別の偏差値の基準を用いて進路指導をしています。ほとんどの場合、同じ志望校では女子の方が男子よりも高い成績を上げなければならず、男女別定員制は志望校を選ぶときに大きく影響してきたといいます。

そして、9月に打ち出された制度見直しの方針。
しかし、今回の報告では制度を完全に撤廃する時期は示されませんでした。塾長はこう続けました。

塾長

東京都も男女別定員制をなくしていく方向に動いてはいるけど、君たちは来年受験だから間に合わない。一生懸命やることには違わないわけですから、そこは覚悟してしっかり勉強してください。先生にしてみれば、公平に判断してもらいたい。一生懸命努力して1点でもいい人が合格するべきだと思っています。あとは皆さんも自分で考えてみてください。

受験生の反応 “撤廃すぐにして” “将来のために”

男女別定員制について、受験生はどう考えているのか話を聞いてみました。

 

合格する点数に差があって、女子のほうが合格しづらくなっているのは不平等だと思います。

 

勉強している量が同じで男子のほうが受かりやすいのはずるいし、頑張って勉強している女子の方が報われないという問題はあるので。男子がラッキーと思ったことはあまりないです。

 

志望校(の合格最低点)が男女で15点ぐらい違うので、同じにしてほしいです。いま、正直ランクを下げようかと思っているので。

 Q:制度が撤廃されることについては?

 

もう少し早く変えられたんじゃないかと思います。女子男子関係なく頑張ってきた人が報われるのならすごくいいこと。

 

男女が少しずつ平等になっていくことは大切だとは思います。

 

撤廃するなら一気にしてほしかったです。でも、将来の子たちが入りやすくなると思うので、それがうれしいです。

“子どもを公平に評価して” 塾長の思い

40年以上にわたり地域の生徒たちを指導してきた塾長の木暮太郎さん。男女別定員制が今なお残っていることに、ずっと疑問を感じてきたそうです。
最後の1点まで粘ることが受験を勝ち抜く道だ、と生徒たちに説く一方で、性別によって10点、20点と差がつくことをどう説明すればいいのか。男子だったら入れるはずの志望校を女子には諦めさせなければならないのはなぜか。この制度に葛藤させられてきました。

学習塾 塾長 木暮太郎さん
「合格の最低ラインを調べると女子は明らかに高いんですよ、男子よりも。当落線上にいる子たちは非常にそこで苦しみます。女子だからあきらめて学校を1つ落としてもらおうと、そういう進路指導をする子が今までもたくさんいました。それは本当に気の毒だし、正しいことではありません。こちらもやりたくないけど、その制度を受け入れるしかなかったのです。全力を尽くすのは男女で当たり前のことですが、特に女子は大変だから頑張らなくちゃだめだねっていう話をせざるを得ない」

制度が生まれてから70年たって出された撤廃の方針。木暮さんは喜んではいませんでした。

「遅すぎますね。子どもたちが本当に公平に評価される制度であるべきです。男子だから得とか女子だから損だとか、そういうことを考えているのがそもそも不自然です。点数どおり合否が決まることが、われわれ大人が子どもたちに対して一番正直であるということです。ぜひ正当に評価していただきたい。子どもたちの一生がかかっています」

  • 木村桜子

    首都圏局 ディレクター

    木村桜子

    2012年入局。大阪局、神戸局などを経て2020年から首都圏局。保育や教育、ジェンダーの問題に関心を持ち取材中。

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