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千葉 銚子からハワイへ 37年ぶりに発見された瓶から始まった交流

  • 2021年9月17日

ことし37年ぶりに、ハワイで小さなガラス瓶が発見されました。
この瓶は昭和59年に千葉県銚子市の高校のクラブ活動の一環で海流調査のために海に流されたものでした。これをきっかけにガラス瓶を見つけた女の子などと高校の間で新たな交流が始まっています。
(千葉放送局 銚子支局/記者 岡根正貢)

古びた小さな瓶に入っていたのは…

ことし6月、ハワイ島に住む9歳の女の子、アビー・グラハムさんは遊びに来ていた海岸で岩の間に挟まっている泥だらけの古びた小さな古いガラス瓶を見つけました。

瓶の中には、日本語のほか英語、ポルトガル語、フランス語で「銚子沖で放流しました。拾ったら日時や名前を記入して返送してください」と書かれた返信用のハガキが入っていました。

アビーさん

とてもびっくりした!

お父さん

宝物とゴミ、どっちだと思った?

アビーさん

宝物!

 

この瓶、千葉県立銚子高校自然科学クラブの生徒たちが送ったものでした。37年前、銚子沖に恵みをもたらす黒潮を調査するため、海に流した、合わせて750本のうちの一本だったのです。

高校によりますと、ガラス瓶は海上保安部の協力を得て太平洋の黒潮に乗せて放流されたもので、鹿児島や沖縄など国内だけでなくフィリピンやアメリカ西海岸など海外でも次々と見つかっていました。
しかし、調査開始から18年後の平成14年、鹿児島県喜界島で50本目が発見されたのを最後に、漂着の知らせは途絶えていたということです。

37年ぶりに6000キロ離れたハワイで発見

高校生たちが瓶を海に流して37年。アビーさんからの返信を受け取ったのは、かつてクラブの顧問をしたこともある教頭先生です。

千葉県立銚子高校 林潤教頭
「見つかることも無いんじゃないかなと話していたが、見つかりうれしく思った」

37年ぶりにおよそ6000キロ離れた場所で発見された今回の出来事は現地の地元紙でも「映画の筋書きのようだ」と大々的に報道され、関心を集めました。

アビーさんは、調査に協力している東京大学大気海洋研究所の道田豊教授とのオンラインでのやりとりで「泥だらけで汚かったが瓶の中から手紙を見つけたときは驚きました。宝物を見つけた気分でした」と発見当時の様子について話していました。

そもそも、どうして37年ぶりにハワイでガラス瓶が見つかったのか。
道田教授は、「4年から5年かけて太平洋を時計回りに進む亜熱帯循環と呼ばれる海流に乗って北半球を何度か回り、最後には嵐や高波でハワイにたどり着いたのかもしれない」としています。

ガラス瓶をきっかけに始まった新たな交流

このガラス瓶をきっかけに新たな交流が始まっています。
林教頭は父親のジョン・グラハムさんとメールでやりとりをしました。
ジョンさんはメールに「娘の人生に貴重な経験となりいい教育となった」と記していたということです。

現役の高校生たちも、長い時間をかけて、海が巡りあわせてくれた出会いに応えたいと、アビーさんに、お礼の手紙を書きました。

“瓶を拾ってくれて、本当にありがとう!日本に来たら、銚子のおいしいお寿司を食べて下さい”などと書き、漁業のさかんな銚子のことを知ってほしいと手紙に大漁旗のミニチュアを添えることにしました。

山口明日香さん

漂流瓶が現実の世界で人と人をつなげることができることがすてきなことだと感動しました。

八角希美
さん

長い距離を自然と科学がつないでくれた縁を一生大切にしたい。

 

現在は環境保全のためこうした瓶を使った調査は行えませんが今回の発見はことし10月に開催される漂着物学会で報告されることになっています。

編集後記

「ハワイで51本目が見つかった」という知らせを聞いて、私が一番最初に話を聞きたかったなと思ったのは、かつて自然科学クラブで顧問を務めていた平塚四郎先生でした。
平塚先生は私が高校で2年間数学を教わった恩師でもありました。
平成14年節目の50本目が見つかった時、高校は記者会見を開きました。その時、私も先生から海流調査の説明を受けました。それから9年後、東日本大震災の際には、津波被害で犠牲者も出た旭市にお住まいだったため、教職を退いたにもかかわらず、潮流調査の経験を生かして津波の分析や、復興支援のボランティア活動に尽力されていました。私も折にふれ取材させていただきました。
震災から10年目を迎えた節目の取材で、数年前に平塚先生がお亡くなりになっていたことを知りました。いつもニコニコしていて穏やかな口調でお話しする姿を今でも思い出します。

  • 岡根正貢

    千葉放送局 銚子支局 記者

    岡根正貢

    30年間にわたり地元を密着取材。10年前の東日本大震災では、津波で大きな被害を受けた旭市などを取材、その後の復興も伝え続ける。

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