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千葉 台風15号(2019)の長期停電教訓に「マイクログリッド」

  • 2021年9月9日

強い雨と風で、千葉県を中心に甚大な被害をもたらした台風15号から2年になります。台風15号では、停電が長期化して、熱中症などで亡くなる人が相次ぎました。その後、停電に備えて、大手電力に頼らず、地域の電力はみずから確保しようとする取り組みが進められています。
(千葉放送局 成田支局/記者 岩澤千太朗)

最大64万戸余 長期停電の恐怖

おととし、千葉県を中心に大きな被害をもたらした台風15号。鉄塔や電柱の倒壊によって、最大64万戸あまりが停電。完全に復旧するまで、19日間かかりました。残暑のなか多くの人がエアコンが使えませんでした。
千葉県によりますと、長期間にわたる停電の影響で熱中症などで8人が死亡しました。

10日以上停電が続いた多古町の避難所に避難していた金子知子さんです。安心できるはずの避難所が停電したことに恐怖を感じたと、当時を振り返ります。

金子知子さん
「避難所が停電になることは考えられないでしょう。停電になってエアコンも使えないから別の避難所に移動するので行ってくださいと言われびっくりしました」

早期復旧の対策進める東電

台風15号で停電の復旧が大幅に遅れたことを教訓に東京電力は、復旧にかかる時間を短縮させる対策を進めています。
通常、停電が起きた際は、復旧作業のため、作業員が電柱にある「開閉器」と呼ばれるスイッチを手動で切っていました。この作業をなくそうとしています。

東京電力は、電柱にリモートで操作できる受信機を取り付け、自動化を進めています。これで停電の復旧作業が、最短で数分に短縮できるとして、千葉県内で新たにおよそ300か所設置する計画です。

東京電力パワーグリッドの担当者

今回の台風によって自動開閉器の必要性が再認識されたので、人命に関わる病院や災害復旧拠点など有効なところに付けていきたい。

しかし、東京電力は、大きなコストや負担がかかるため、すべてを自動化することは難しいとしています。

大手電力に頼らないマイクログリッド

こうしたなか、大手電力に頼らない「マイクログリッド」と呼ばれるまちづくりが進められています。長期停電に備えて、地域の電力をみずから確保しようとする取り組みです。

「マイクログリッド」とは、電力会社からの送電がストップして、長期停電が起きた際、地域全体の電力を太陽光発電などでまかなう小規模な電力網です。
災害が起きたとき、地域全体が停電してしまうのを防ぎ、地域ごとに分散して電力供給ができる、いわば電力の地産地消といえる仕組みです。

およそ7割の世帯が停電したいすみ市は「マイクログリッド」を導入しました。避難所となっている中学校の屋上に太陽光パネルを設置し、再来年から電力供給を始める予定です。

経済産業省によりますと、国の補助金を活用して「マイクログリッド」の導入や検討を行っている取り組みは、全国でおよそ50件にのぼっているということです。

いすみ市危機管理課市原正一課長

最大でも1週間程度の電力の供給が可能で、停電の復旧を待たずに電気の供給ができるというところでマイクログリッド事業にはメリットがある。

取材後記

おととしNHK成田支局に赴任したばかりだった私は、台風15号で停電した避難所や病院などを連日取材しました。
当時、住民からは「まさか千葉県が台風の被害を受けるなんて」という声を多く聞きました。2年たって被災地を改めて取材すると、「長期間の停電時は大手電力の復旧に頼ってはいられない」という新たな声を聞きました。「マイクログリッド」は、東京電力も、停電時にむしろ安定的に電力供給できる仕組みとして協力したいとしていて、今後、この仕組みを導入する地域が増えると見られます。そして、自分たちでできる備えも重要です。いつ起きるかわからない自然災害に備えて、食料や飲料水の準備、情報を得るために欠かせないスマートフォンやラジオの電源なども、改めて確認しておきたいと思います。

  • 岩澤千太朗

    千葉放送局 成田支局 記者

    岩澤千太朗

    平成28年入局 大阪局を経て現所属 成田空港の航空取材や地域の漁業・農業の取材にあたる

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