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コロナに感染したからこそ伝えたい 家族5人の過酷な自宅療養

  • 2021年2月1日

「マジで死ぬんじゃないかと思うくらいでした」
そう話すのは東京都内で3世代6人で暮らす40代の男性です。自身も含め家族5人が相次いで新型コロナウイルスに感染しました。
医療機関を受診できないまま自宅療養を続け、急激に症状が悪化した70代の母親はその後入院。唯一陰性とされた小学生の娘は自分の部屋で生活し、ガラス越しのやり取りしか出来ませんでした。家庭内感染と過酷な自宅療養の実態です。
(首都圏局/記者 浜平夏子)

家庭内は感染速い どれだけ気をつけても避けにくい

話を伺ったのは、東京都内で70代の両親と40代の夫婦、それに小学生の子ども2人の3世代6人で暮らす家族です。

家庭内感染と自宅療養の現状を多くの人に知ってもらいたいと、オンライン上での取材に応じてくれました。

妻(40代)
「最初、1月2日に私がのどの痛みがありまして、声が一切出なくなった状態で熱はなかったのですが、怪しいなと思って家族と離れて過ごしていたんです。その後、近くのかかりつけの医院でPCR検査を受けて陽性の判定が出ました。そのあとから家族が濃厚接触に当たるということで保健所から連絡をいただいて…」

家族に感染が広まった経緯です。

1月5日
のどの痛みを訴えた妻と発熱した70代の父親がPCR検査で陽性となりました。仕事場と自宅の行き来しかしていない妻が感染したことが、家族にとっては衝撃だったといいます。そして自宅での療養生活が始まりました。

1月8日
70代の父親の容体が悪くなり入院することになりました。

1月10日
濃厚接触者として70代の母親と男性、それに小学生の子ども2人がPCR検査を受けたところ、娘以外はみな感染が確認されました。

男性(40代)
「家庭内は感染が早いと思います。マスクをはずして生活しますし、どれだけ気を付けていても感染は避けにくいと思います」

夜 ガラス越しに呼ぶ娘

まず気をつけたことは、家族の中で唯一陰性となった小学生の娘にいかに感染させないかということでした。家族全員が家でもマスクをつけて生活し、保健所の指導もあって娘には自分の部屋だけで生活するように言い聞かせました。最初は1人で気楽に過ごせると喜んでいた様子でしたが・・。

妻(40代)
「(娘は)口に出して言わないですが、夜眠れないと、廊下がガラス張りのドアなので、そこでトントンと呼びに来たりして、『眠ろうとするけど眠れない』と。子どもは電話を持っているので、『それで話していいよ』と言っているんだけど、顔を合わせたいと思っているので、ガラスのドアのところまで出てくるんです」

男性(40代)
「結局、家族が陽性で子どもが陰性でも、預けられないので、陽性者のもとに陰性者の子どもが残っているという状況になっちゃうんですね。子どもの免疫力に頼るしかないのが現状だと思います」

家族の食事は…

娘の食事も気を遣いました。保健所からは陽性反応が出ている方が、なるべく触れていないものを提供してほしいと言われたそうで、インスタントやレトルト、冷凍食品などを食べさせました。

一方、陽性となった家族は、味覚や嗅覚がなくなった中で食事をとりました。

母親(70代)

母親(70代)
「陽性と確認された日くらいから熱が出始めたんです。あがったり下がったりがひどくて、咳こんだり。味覚、嗅覚もなくなってきました。そうすると、何か作っても、味がわからないから、うんとしょっぱくなったりしているだろうなとか、全然わからないです」

 自宅療養の間、保健所の指導のもと1回だけ陰性の娘が外に買い物に出かけましたが、外出自体が怖いと言いだし、その後は家にあるものでしのぎました。

妻(40代)

妻(40代)
「娘だけは陰性で、『短時間だったらマスクも手洗いも、いろいろ対策をして外に出ていいです』と保健所の方からの指導もあったので、娘に頼るしかないなという状況でした。娘も、外に出ると『コロナの人がいるんじゃないか』とかそういう不安の中で、本当に意を決して出るみたいな感じで。結局、行ってもらったのは1回きりです。あとは『出たくない、怖い』と言ったので。その時、牛乳とパンと、その日必要なもの最低限を急いで買ってきてもらいました。あとは、家にあるストックを、どれだったら食べられるかなみたいなのを選んでつくるしかない感じでした」

最初は無症状だったのに…“マジで死ぬんじゃないかと思った”

急激に体調が変化したのが男性と70代の母親でした。

男性(40代)

男性(40代)
「最初、陽性が出たとき無症状だったので、このまま2週間くらい過ごすのかなということでリモートワークをやっていました。ところがある日の夜、突然、熱が39度5分まで上がって、40度くらいまで上がったと思います。症状が出始めてからは、電話をかろうじてかけられるくらいのレベルのところまで落ちて、最終的には、もうまったく動けなくなりました。急激です、最初元気だったのに」

 症状は、熱と咳がひどく、肺の痛みも四六時中感じるようになりました。保健所からは毎日、健康観察で連絡をもらうのですが、以下のようなやりとりが数日繰り返されたと言います。

男性
「熱は39度を超えていて咳が頻繁に出て、肺も痛くて苦しいです」

 

保健所
「その他、症状はありますか」

 

男性
「味覚は多少あるけど、臭いは、あまり感じません」

 

保健所
「わかりました、また明日連絡しますね」

 

男性(40代)
「今、自分がどのようなステージまで進んでいるかが全然わからない状態で、症状が進行していく感じで、最後、マジで死ぬんじゃないかと思うくらいでした」

70代の母親にとっても、症状の進行が分からない自宅療養は不安だと言います。

母親(70代)
「家にいるのはすごく不安なんですね。入院できたらしたいなと思います。主人のことがあったから、主人はすごい急激に悪くなったから怖いなと思っています。1月10日くらいからいろんなことが出てきて全身が痛いとか、すごい倦怠感というのかな。今までに味わったことのないような、ちょっと説明するのに難しいです。味覚嗅覚がないのも、ものすごく不安です。だんだん食が細くなって、これじゃいけないなと、薬を飲むのにちょっとだけ食べるかなという感じ。だんだん食べたくなくなる。自宅療養は怖いです」

訪問診療で救われた

防護服を着た医師 ※周辺を加工してあります

日々、症状が悪化していると保健所に相談を続けた結果、急きょ区内のクリニックの医師に対応してもらえることになり、訪問診療を受けました。

入院した父親が肺の症状が重くなっていたため、自分の肺がどうなっているのかが一番心配でした。

男性(40代)
「先生に肺の音を聞いてもらって、『肺に異常な音はしていません』と言われたのが、すごく安心して、自宅療養に臨めるかなというところになりました。私と子どもと母は、一回も医者に診てもらっていない状態で自宅療養に切り替わっているので、どう判断され自宅療養になっているのかがわからない。素人目で見て、健康だから自宅療養してくださいみたいな感じになっているので、そこがものすごい不安ですね」

訪問診療をした医師は、問診に加えて採血検査も行いました。医師は感染がわかって数日たってから日増しに状態が悪くなる2人を心配し、注意深く状況をみる必要があると考えていたといいます。

母親はその後入院

その後、母親の症状に変化がありました。座った状態で足踏みをしただけで血液中の酸素の状態が悪化したことから1月19日に入院することになったのです。入院先の病院で重症患者にも使われる新型コロナウイルスの治療薬、レムデシビルなどを投与されて治療中だということです。

入院する母親を見送る家族

自宅療養を支える態勢の充実を

東京都内で自宅療養をしている人は、1月27日時点で7000人余りに上っています。こうした状況の中、男性は自宅療養を支える態勢を充実させる必要があるのではないかと感じたといいます。

男性(40代)
「医療機関の方は一生懸命やっていただいているし、保健所の方も、すごい丁寧に電話をいただいているのですが、仕組みが限界に来ているのかなと思います。今、誰でも自宅療養になっちゃうので、重症化しそうになっているにもかかわらず、自宅療養になっている人も必ずいると思いますので、初期の問診が必要だと思います。あとは自宅療養させるのであれば最低限の薬、熱冷ましとか、そういうのは自動的に渡される仕組みも必要じゃないかと。せめて、初期の段階とか、2~3日たって医者に電話で相談できるとか、往診してもらえるという制度を各自治体でやってもらえないのであれば、自宅療養は危ないのではないかと思います」

 

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