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新型コロナで家庭ごみ増加 マスクも飛ぶ 収集の現場

コロナ禍のリアル5 変わらぬ日常の裏側で
  • 2020年12月10日

新型コロナの感染拡大で、多くの人の在宅の時間が増えた影響で、家庭ごみが増加しました。その中には、使用済みのマスクやティッシュも含まれ、ごみの収集には、コロナに感染するリスクも潜んでいます。朝、集積場に出され、いつの間にか消えている。一見、変わらない日常の光景の裏側で、危険と隣り合わせで働く人たちがいます。私たちの暮らしを支える人たちが置かれた現状を見つめました。
首都圏局/記者 石川由季

家庭ごみにも新型コロナの影響が

「自分たちの仕事を知ってもらうきっかけになれば」

取材を受け入れてくれたのは、練馬区の清掃事務所で働く区職員の中村義宣さん(47)です。現在、現場の班長を務めています。

中村義宣さん(47)

「今年でこの仕事を始めて、27年になりました。同じ仕事をしている叔父から紹介されて当時は『試験だけ受けてみるか』という軽い気持ちでしたが、人生の半分以上ここで仕事をしています」

この道27年の中村さんにとっても、ことしはこれまでになく忙しい年になりました。新型コロナの感染拡大で外出が制限され自宅で過ごす人が増える中、区内でもごみの量が増加し、多い時には可燃ごみの量が1か月あたり、去年に比べて1000トン以上多くなったのです。変化したのはごみの量だけではありません。

何が入っているのか 恐怖すら感じる収集の現場

家庭ごみには使用済みのマスクや鼻をかんだティッシュが、そのまま入れられていることも珍しくありません。ごみ袋の口が結ばれていないものや、収集ボックスの中にマスクが直に入れられていることもあるといいます。中村さんたちごみの収集をする人たちの仕事は、自宅で療養する感染者がいる可能性もある中、新型コロナに感染する不安や恐怖と隣り合わせとなっていました。さらに危険を感じる状況を目の当たりにしました。

(※音声は中村義宣さん)

収集車に入れ、圧力がかかったごみ袋が破裂した様子です。
場合によっては、埃などとともに、ティッシュやマスクが飛ぶこともあります。

ごみ袋の中にはマスクが

ごみが路上に散乱するだけではなく、体にめがけてマスクが飛んでくることもあるそうです。中村さんは飛び出すマスクが通行人に触れないようガードする形で、車のごみの投入口にさっと自分の体を向けていました。

「物によってはごみ袋の中身が3メートルうしろまで飛んでいくこともあります。袋の中に何が入っているのかわからない。不安、恐怖を感じます。それでも、破裂したときに通行人にかからないように、ガードしなきゃいけない」

さらに、コロナ禍の夏はマスクをつけての作業で、熱中症との戦いでもありました。地表の温度が50度を超える中、過酷そのもので、仕事を終えた職員の多くがぐったりした表情で事務所に戻ってきたと言います。

コロナ自粛の裏側 わたしたちの生活を支えるために

自宅でリモートワークする人が大勢いる一方で、中村さんたちは現場に向かわなければ仕事になりません。多くの人が外出を自粛した緊急事態宣言の期間も、変わらず電車に乗って出勤し、変わらず仕事を続けました。自分自身の感染への不安はもちろん、同居する妻と2人の子どもに感染させてはいけないと気をつかい続けました。

中村さん
「私自身も不安ですし、家族も心配しています。感染させてはいけないってプレッシャーはあるんですけど、最低限の手洗いやうがい、消毒くらいしかやれることはなかったですね」

わたしたちの仕事を知ってください 一過性であっても

そんな中村さんたちの心の支えになっていたのがコロナの感染拡大以降、集積所のごみの山の中に突如現れた「感謝の手紙」でした。

「いつも危険を伴う作業ありがとうございます。感謝でいっぱいです」

「コロナにお気をつけてお仕事してください」

コロナ禍でも働くエッセンシャルワーカーとして新聞などで取り上げられたことや、小泉環境大臣がごみの収集を行う人たちに対して感謝の気持ちを伝えるメッセージを書くよう呼びかけたことがきっかけでした。中村さんが勤務する練馬清掃事務所だけでも住民からの手紙は500通以上にのぼりました。

「お年寄りが書いた達筆なものもあれば、お子さんが描いたような絵もあったりして。いろんな方々が私たちに対して感謝の手紙をごみ袋に貼り付けてくれていました。ここに貼れたのはほんの一部です。たくさんいただいて、私たちも励みになりました」

しかし、緊急事態宣言中は毎日のように見かけた手紙も、今ではたまにしか見られなくなっています。

中村さんは「たとえ、一過性のものだったとしてもいいんです。ぼくたちに少しでも注目してくださっただけでありがたいです」と話していました。

「日常を支える」そこにある思いに応えるために

新型コロナの感染拡大をきっかけに始めた、ごみの収集員として働く人たちへの取材。収集の現場は想像以上に過酷な現場でした。

ある収集員の男性は「しじみが3個、落ちている」と苦情を受け、数十分をかけて集積場に取りに戻ったエピソードを話してくれました。
コロナ禍ではティッシュが1枚落ちているので取りに来てほしい、という苦情もあるそうです。

「どんなことばよりも、最低限のマナーを守ってごみを出してくれたり、汚れていた集積所の片づけを一緒に手伝ってもらったりすることのほうが素直に喜べる」

この男性のことばが胸に響きました。

「子どもたちには人気なんですよ、よかったらお子さんにどうぞ」

中村さんたちが取材の帰りにくれた、ごみの収集車と収集員のペーパークラフト。催しなどで小さな子どもたちに配っているものです。

帰宅して3歳の息子とペーパークラフトを一緒に作りながら「おうちから出たごみは、お兄さんたちが一生懸命、収集してくれているんだよ」と伝えました。

コロナ禍でも変わらぬ日常を支える人たち。その人たちの苦悩や葛藤に触れた取材でした。私自身も、まずは、ごみの出し方をもう1度見直し、子どもにも小さな頃から少しずつ出し方のマナーを伝えていければと思っています。

環境省の呼びかけ

1.ごみ袋の空気を抜いて出す(破裂防止にもつながります)
2.ごみ袋はしっかり縛って封をする
3.生ごみは水切りをする
4.普段からごみの減量を
5.自治体の分別・収集ルールの確認を

新型コロナの感染者や感染が疑われる人の使用済みマスクやティッシュを捨てる場合は、ごみ袋が裂けるのを防ぐため、袋がいっぱいになる前に早めに出すほか、空気を抜いてしっかり縛って出すようにしてください。
(2020年5月 環境省の周知文より)

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