「ソースの自動販売機」が設置されているのは、栃木県足利市。日本最古の学校とされる「足利学校」があるまちです。自販機はこの足利市のまちかどで 今年7月から稼働しています。
商品は焼きそばソースに、足利名物・ソースカツ丼用のたれ、栃木県産トマトを使ったデミグラスソースなど、みごとにソースのみ。
中でも好評なのが、いちごのソースです。
栃木県名産のいちご「とちおとめ」がごろごろと入っていて、ヨーグルトや牛乳に混ぜるとおいしいと人気を集めています。
新型コロナウイルスの感染拡大でイベントの中止が相次ぎ、およそ2トンもの在庫を抱えてしまった食品会社が行き場を失った「とちおとめ」を使って開発したものです。
これまでに自動販売機でおよそ600個が売れたということです。
自動販売機を置いたのは足利市に本社がある食品会社です。設置を決めたのは4月で、新型コロナウイルスの感染拡大で売り上げが減る中で決断しました。
自動販売機の設置のためクラウドファンディングを行ったところ、およそ210万円の資金が集まりました。
とはいえこの会社ではこれまで自動販売機で商品を売ったことはありません。そこで、インターネットで見つけた仙台市の商社に相談し、自動販売機をソース専用に加工してもらいました。
会社の狙いは的中し、今も市内外から多くの人が訪れています。
実は、調べてみると、清涼飲料水ではなく、ソースを売っている自販機は、東京・北区にもありました。
設置されたのは2年前。それまでは直売所で平日のみの販売でしたが、「休日にもソースを購入したい」という声が多数寄せられたため、設置を決めました。
民放で紹介されたこともあり、最近は月におよそ3000本の売り上げがあるそうです。 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、2か月ほど直売所を閉鎖していた間も、自動販売機の存在は大きなものだったといいます。
密を防ぐなどの新たな生活様式が広がってきた昨今。
人と接触せずに商品を購入できる自動販売機自体が人気になっているのではないかと考え、業界団体に聞いてみましたが…。
自動販売機のメーカーなどで作る「JVMA」によると、自動販売機の出荷台数は新型コロナウイルスの感染拡大で2割ほど落ち込んでいるということです。清涼飲料水の販売が減少していることが影響しているとみられます。
では、“変わり種”自動販売機はどうなのでしょうか。販売元に状況を聞いてみました。
足利市のソース会社に自動販売機を卸した、仙台市に本社のある企業は、新型コロナウイルスの感染が広がったあと、自動販売機の注文が相次いでいると話します。先月の問い合わせ件数は、半年前に比べ50%増えたということです。
この会社ではソースのほか、クッキーなどの焼き菓子を取り扱う自動販売機を卸したとのこと。 今年に入ってからは、宮城名物「ささかまぼこ」を販売する自動販売機が、日本三景の1つ・松島がある松島町に試験的に設置されました。
塩釜市のかまぼこなどの製造・販売会社は、「観光地・松島に何か明るい話題を提供したい」という思いで自販機を設置したということです。
ソースの自販機を設置した栃木県足利市の食品会社。自販機には、自社の売り上げ向上はもちろん、「コロナ禍で減ってしまった人出を少しでも取り戻したい」という思いも込められています。
新型コロナウイルスの感染拡大で人との交流が少なくなる中、ひそかに人気を集める変わり種の自動販売機。地域を再び盛り上げたいという地元の人たちの思いを背負って、今日もまちかどに立ち続けます。