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延期の2020オリンピック ボランティアや施設はいま

  • 2020年10月2日
「東京オリンピック・パラリンピックの1年延期」。
衝撃的なニュースが世界中を駆け巡ったのは3月24日のことだった。東京都をはじめとした関係者は新型コロナウイルスへの対応や準備の見直しを迫られた。 “特別な夏” になるはずだったこの夏は、 “異様な夏” に一変してしまった。
それから半年。「本当に大会を開催できるのか」今なお不安の声が消えない中で、来年に延期された “特別な夏” の足音は、1歩1歩近づいて来ている。開催都市の東京都やボランティアなどの関係者の今は。その姿を追った。首都圏局 岡部 咲

開催延期 巨大な競技会場は今

9月下旬の土曜日。東京・品川区と大田区にまたがる「大井ホッケー競技場」を訪れた。

大井ホッケー競技場

「右に行け!」
ピッチからはにぎやかな声が聞かれた。
短く刈り込まれた真っ青な芝の上で、ホッケーの社会人チームが、汗を流している最中だった。この日は、東京都ホッケー協会が会場を借りて、何チームかが試合を行う予定とのことだった。

新築の家のような香りが漂う新しくてきれいなこの施設。ここは東京大会のホッケーの競技会場だ。都は、およそ48億円かけて整備したこの会場を、「来年の大会まで活用しないのはもったいない」と考え、ことし8月から競技団体への貸し出しを始めた。

 

都にとっては、競技会場をアピールできる絶好のチャンスとなり、利用者にとっても、オリンピックの会場で練習できる、貴重な機会となることから、ウィンウィンの利用法だ。利用者からも歓迎する声が聞かれた。

「オリンピック会場で練習できるのでテンションが上がる。この会場で東京大会を見たいという気持ちになる」

利用者のマナーにも感嘆した。「きれいに使おう」という意識が強く、来年の東京大会のことを考え、ルールを守って会場を利用する姿に、すがすがしさを感じた。

一方で、バスケットボールなどの会場となっている江東区の「有明アリーナ」。こちらは、大会に向けた仮設工事が中断したため、貸し出しはできない状況だ。

有明アリーナ

こちらの会場も訪れてみた。
中には入れなかったが、工事が中断した影響で、敷地内には、資材やテントの骨組みなどが置かれていた。

一見すると利活用ができないような状況にも見える会場だが、アーティストの無観客ライブの会場として活用することが検討されている。

都は、延期に伴って生じた空白の期間に施設を何らかの形で活用することで、都民や国民に親しみをもってもらい、「いったんはしぼんだ」とも言われる大会に向けた機運を改めて高めていきたい考えだ。

開催を信じて ボランティアは今

ボランティアはどう過ごしているのか。
東京大会で、競技会場の周辺や駅などで観客を案内するボランティア活動にあたる予定の東京・町田市の長谷川紀生さん(66歳)を訪ねた。
「さすがに気落ちしているのではないか…」 そう思っていたが、長谷川さんの声は、予想に反して明るかった。

普段から行っている観光ボランティアのユニフォームを手にほほえむ長谷川さん

「とにかく中止にならなくてよかった。中止じゃなくて延期だから来年は絶対開催される!そう信じています」

来年の東京大会では
▼競技会場や選手村などで活動する「フィールドキャスト」が8万人
▼競技会場の周辺や駅などで観客を案内する「シティキャスト」が3万人
あわせてのべ11万人のボランティアが活動を予定していて、長谷川さんは、その両方に参加する予定だ。

大手電機メーカーの技術者だった長谷川さん。転勤でイギリスに5年間住んだ経験があり、海外の友人も多い。大会のボランティア活動を通じて、世界中から日本を訪れる人と交流することを心待ちにしている。

長谷川紀生さん
「来年の大会までの時間は、2つの “筋肉” を落とさないように心がけています」

長谷川さんが鍛えるという2つの “筋肉” とは…

1つは まさしく全身の “筋肉”

猛暑の夏に開催される大会のボランティア活動には体力が欠かせないと考え、筋トレに励む毎日だ。40回の腕立て伏せ、30回のスクワットに加え、ヨガと1時間のウォーキングを続けている。

もう1つは 英語の “筋肉”

聞く・話すといった力が落ちないよう、1日30分、ラジオの講座を活用して、毎日英語の学習に励んでいる。
長谷川紀生さん
「日本を本当に楽しんでもらうお手伝いができたらいいなと思っています。本番を思い切り楽しめるように準備をしたい」

並々ならぬ気合いに満ちあふれた長谷川さんが見据えるのは、もう来年だけだ。

混乱と当惑と 延期で都の事務局は

来年に向けた期待感もある一方で、東京都はどんな状況にあるのだろうか。
東京・西新宿にそびえ立つ都庁第一本庁舎。その14階と15階に、大会の準備にあたる部局、「オリンピック・パラリンピック準備局」がある。

半年前。大会開催に向け大いに盛り上がった機運は、延期決定で一変した。他の部局への応援、外出自粛を受けた在宅勤務。厳しい要員体制の中で延期対応に忙殺されることになった。

「感染が拡大する中で、どうなるのか」
「この状況だと延期は受け入れるしかないのでは」
「準備した多くがやり直しになる。すぐ対応せねばと焦った」

大会を支える経済界、練習会場を提供する自治体、参加するボランティア、聖火ランナー…関係者は多岐にわたる。競技会場や関連イベントの会場を来年も確保できるのか。担当者は、連絡と調整に追われる日々を過ごしたという。

あれから半年。新型コロナウイルス対応のため、ほかの部局に応援で派遣されていた職員たちも、準備局に戻ってきた。来年の開催に向けて、開催都市の本丸は、本格的な動きを取り戻そうとしている。

「ウィズ コロナ」 “特別な来年の夏” を目指して

“見えざる敵” 、新型コロナウイルス。世界有数のビッグイベントで、どう安全を確保するのか。「来夏、本当に大会を開催できるのか」という声にこたえるために、東京都は、IOC=国際オリンピック委員会や大会組織委員会、政府などと、すでに議論を始めている。政府が主導する会議では、主要な対策について年内をメドにまとめる方針だ。

9月25日 IOCと組織委員会の会見

また、延期に伴い増大の可能性が指摘されている大会経費は、運営方法やサービスを見直す簡素化を実現し、「できる限り抑えたい」というのが関係者の一致した思いだ。どの程度、経費を抑えることができるかは、大会開催に向けた機運にも影響を及ぼしかねないという指摘もあり、どう調整を進めていくかが “特別な来年の夏” に向けたひとつのカギになりそうだ。

小池知事 9月25日

「どのような形でこの大会を安全・安心に開くことができるかということで、組織委員会、東京都などが対応を議論している。大会の開催が、見えざる敵である新型コロナウイルスに打ち勝つ、その証しとして、また、世界共通の絆を証明する、そのような大会にすべしという共通の思いで進めている」

小池知事は、来年の大会開催に向け、準備に万全を期す考えだ。
 

「ウィズ コロナ」の中で臨む初めてのオリンピック・パラリンピック。
誰もやったことのない取り組みだけに、 “特別な来年の夏” に向け、どう進んでいくのか、誰にも見当はつかない。

ただ、間違いないのは、すべての関係者の歩みが、加速していくということだ。
歴史の1ページを作り上げるための取り組みを、残る10か月、しっかり追いかけていきたい。

  • 岡部 咲

    首都圏局 都庁クラブ

    岡部 咲

    2011年入局。宮崎局、宇都宮局を経て、2020年9月から都庁担当。

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