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富士山噴火新避難計画公表 いつ逃げる?予兆で?市町村一覧掲載

  • 2023年3月29日

富士山の噴火を想定した新しい避難計画を静岡・山梨・神奈川の3県などで作る協議会がまとめました。噴火前に親戚の家や宿泊施設などへ自主的に分散して避難するよう呼びかけたり、登山客を下山させたりするほか、隣接する市町村への避難を取り入れることで「逃げ遅れゼロ」を目指すとしています。

新しい避難計画では、避難を呼びかける地域を噴火直後の影響と溶岩流が到達する時間ごとに6つのエリアに分けています。それぞれのエリアの市町村や住民の人数をまとめています。

“事前の自主避難” “市街地…原則 徒歩避難”

新たな避難計画は、おととし改定された富士山の噴火を想定したハザードマップを受けて、静岡・山梨・神奈川の3県と国、有識者などでつくる協議会が見直しを進め、29日に公表されました。

避難の対象となる地域に住む人は静岡・山梨・神奈川の3県27市町村のおよそ80万人に上ります。

まず、住民に対しては混乱を避けるため噴火の前に火山性地震が増加するなどして気象庁が噴火警戒レベルを引き上げた場合などに、親戚や知人の家、宿泊施設へ自主的に分散して避難するよう呼びかけるとしています。

そのうえで、避難の対象地域を噴火に伴う現象や影響が及ぶ時間に応じて6つのエリアに分け、それぞれ移動手段や避難の開始時期を示しました。

このうち、市街地では、住民が一斉に車で避難すると深刻な渋滞が発生して逃げ遅れる可能性があることから避難に時間がかかるお年寄りなどをのぞき、一時的に安全を確保できる場所へ「原則、徒歩で避難する」という方針が改めて示されました。

登山客へ“気象庁から臨時の情報が発表された時点で下山指示”

また、登山客に対しては、噴火警戒レベルが「活火山であることに留意」を示す1の段階でも、気象庁から臨時の情報が発表された時点で下山を指示するほか、それ以外の観光客に対しても混乱が生じる前の早い段階で帰宅を呼びかけます。

避難先の考え方見直し…県外避難も可能に

避難先の考え方についても見直されました。
これまでの計画では県内での避難が想定されていましたが、隣接する県外の自治体などへの段階的な避難を可能とし、3県が受け入れの調整を行って避難を短時間で完了させるとしています。

ただ、富士山は観測を開始してから噴火したことが無く、噴火の時期や火口の場所についての不確実性が高いことをふまえて、あらかじめ避難先を決めず噴火の状況に応じて避難先を確保することとしています。

お年寄りや子どもの対策強化

避難に支援が必要な人たちへの対策も強化されました。
▽溶岩流が3時間以内に到達する地域では病院や高齢者施設などに対し入院患者らを安全に避難させるための計画づくりを促すほか、▽小学校や幼稚園などは噴火警戒レベルが3に引き上げられた時点で速やかに休校とし、保護者へ引き渡すとしています。

降灰…“原則 屋内退避” “1週間分の食料など備蓄を”

富士山周辺だけでなく関東など広範囲に及ぶ「火山灰」については、噴火の規模や風向きによって影響するエリアが変わるため事前に避難先を決めるのではなく、鉄筋コンクリート造など頑丈な建物での「屋内退避を原則」としたうえで道路の通行止めなどにより物流が滞った場合に備え、1週間分の水や食料などを備蓄しておくことも求めています。

地域の特性踏まえて避難計画を

新たに示された避難計画をふまえ、それぞれの自治体では今後、地域の特性を踏まえたより詳細な避難計画を作成したうえで、住民への周知を進めることになります。

避難を呼びかける地域 6つのエリアに分けられる

新しい避難計画では、避難を呼びかける地域を噴火直後の影響と溶岩流が到達する時間ごとに6つのエリアに分けました。具体的には以下の通りです。

●第1次避難対象エリアは想定火口範囲です。噴火警戒レベル3の段階で避難します。

●第2次避難対象エリアは主に火砕流や火砕サージ、大きな噴石が到達する可能性のある範囲です。噴火警戒レベルが4となった段階で一般の住民も車で避難するとしています。

●第3次避難対象エリアは溶岩流が3時間以内に到達する可能性のある範囲です。短時間で到達するため、噴火が起きた直後に避難するとしています。

●第4次の避難対象エリアは溶岩流が24時間以内に到達する可能性がある範囲、

●第5次避難対象エリアは溶岩流が7日間以内に到達する可能性がある範囲。

●第6次避難対象エリアは溶岩流がその後、最終的に到達する可能性がある範囲で、最大57日間かかるとされています。溶岩流が到達するまで時間があることからいずれも噴火直後は行政機関から出される情報に注意し、状況がわかってから溶岩流が流れる方向の住民が避難するとしています。

要支援者・・・車避難

噴火した後、溶岩流からの避難は一般の住民は徒歩による避難が原則とされています。
溶岩流の速度が遅いことや渋滞を防ぐ必要があるためです。

一方、高齢者や体が不自由な人、いわゆる要支援者はいずれのエリアでも車による避難です。家族や施設、行政による準備を想定しています。

観光客・登山者はいち早く「帰宅」

また、富士山には多くの観光客や登山者が訪れますが、高齢者などの要支援者の避難がスムーズにできるよう、いち早く避難し、「帰宅」することを促します。

エリアごとの推計人口は

令和2年の国勢調査に基づく避難対象エリアごとの推計人口です。3県あわせると79万2257人に達しますが、影響が及ぶ可能性のある範囲の人口で、すべての人が、同時に避難するわけではないことに注意が必要です。
それぞれの避難対象エリアの市町村と住民の人数です。

第1次避難対象エリア(475人)
【山梨県】富士吉田市 鳴沢村
【静岡県】富士宮市 富士市 御殿場市 裾野市 小山町

第2次避難対象エリア(5293人)
【山梨県】富士吉田市 忍野村 鳴沢村 富士河口湖町
【静岡県】富士宮市 富士市 御殿場市 裾野市 小山町

第3次避難対象エリア(10万8506人)
【山梨県】富士吉田市 忍野村 山中湖村鳴沢村 富士河口湖町
【静岡県】富士宮市 富士市 御殿場市 裾野市 小山町

第4次避難対象エリア(14万1040人)
【山梨県】富士吉田市 都留市 西桂町 忍野村 山中湖村 鳴沢村 富士河口湖町
【静岡県】沼津市 富士宮市 富士市 御殿場市 裾野市 長泉町 小山町

第5次避難対象エリア(24万8546人)
【神奈川県】南足柄市 山北町 開成町
【山梨県】富士吉田市 都留市 大月市 上野原市 西桂町 山中湖村富士河口湖町
【静岡県】沼津市 三島市 富士宮市 富士市 御殿場市 裾野市 清水町長泉町 小山町

第6次避難対象エリア(28万8397人)
【神奈川県】相模原市 小田原市 南足柄市 大井町 松田町 山北町 開成町
【山梨県】富士吉田市 都留市 大月市 上野原市 身延町 西桂町 山中湖村 鳴沢村 富士河口湖町 【静岡県】静岡市清水区 沼津市 三島市 富士宮市 富士市 御殿場市 裾野市 清水町 長泉町 小山町

富士山の登山口 富士吉田市では “不安の声も”

今回の避難計画では、登山者や観光客についてはエリアに関わらず早めに避難することが盛り込まれました。富士山の登山口の1つがあり、広い範囲が第1次から3次の避難対象エリアとなる山梨県の富士吉田市で話を聞きました。

観光客が多く立ち寄る富士吉田市内にある道の駅では、計画に理解を示す一方、不安の声も聞かれました。

 

有事の際は、やはり観光客を先に逃がすというのはいい考えだなと思います。

 

どうやって帰っていいかが、やはり地元じゃないから分からないじゃないですか。それは困ります。

 

たぶん、一斉に観光客を帰ると渋滞とかになったりで、また結局動かなくなってとなったりしそうなんで、いったん逃げられる場所があればというのがあります。

神奈川県開成町では…

新たな避難計画では町全体が第5次と第6次の避難対象エリアに含まれた神奈川県開成町では、全人口のおよそ1万8000人が避難対象となっています。

町では、これまで独自のシミュレーションを作成して、行動計画を住民に説明するなど対策を進めてきました。

新しい避難計画を受けて、町ではシナリオに応じた避難先の確保が必要だとしています。

開成町防災安全課 葛西宣則 専門員
「避難先の調整は、市や町に任せられていて、個別に避難を要請すると周辺の市町と同時避難になる可能性があるので、県や関係する自治体と連携して進めたい」

専門家 “噴火の際に居住地域に何が起こるか調べて”

避難計画の見直しに携わった東京大学名誉教授で山梨県富士山科学研究所の藤井敏嗣所長は「火口との距離や想定される現象は地域ごとに異なる。基本方針は書いたが、自治体は、特性に応じた計画を作るだけでなく、実際に避難訓練を行って問題点を検証してほしい。ハザードマップの通りに噴火が起きるわけではなく、臨機応変な対応が求められる」と述べました。

その上で住民に対しては「計画自体は行政が作るが、危険性を知っているかどうかが最終的に身を守る最大の武器になる。噴火した際に、自分が住んでいる地域にはどういうことが起きるのかふだんから調べて欲しい」と呼びかけました。

火山灰による影響は・・・

富士山で大規模な噴火が発生した場合、風向きや風速によっては周辺の自治体だけでなく東京の都心を含む首都圏の広い範囲に火山灰が降り、公共交通機関や物流に影響が出て生活に支障が出るおそれが指摘されています。

交通機関がマヒするおそれ

火山灰による生活への影響をまとめた国の検討会によりますと、▽道路に1ミリ以上積もると車が出せる速度は30キロ程度、▽5センチ以上積もると10キロ程度まで落ち、▽10センチ以上積もると、通行ができなくなります。2011年に起きた霧島連山の新燃岳の噴火では、宮崎県都城市などで数ミリから数センチの火山灰が積もり、車がスリップするなどして交通事故が相次ぎました。

また、▽鉄道ではレールに0.5ミリの火山灰が積もるだけで運行が停止され、列車の運行システムに障害が出るおそれがあります。鹿児島市などでは桜島の火山灰の影響で、鉄道の運行がたびたび止まっています。航空機への影響も懸念されます。▽ジェット機のエンジンが火山灰を吸い込むと最悪の場合、停止するおそれがあるほか、▽空港の滑走路も火山灰が積もると閉鎖される可能性があります。

物流の停滞で生活に支障も

▽道路が使えなくなると物流が滞り、食料や飲み水のほか医療物資などが入手できなくなり、営業できなくなる店もあるとみられています。さらに▽雨が降っている場合には電気設備に火山灰が付着して停電が起きたり、断水や通信設備に影響が出たりするおそれもあります。このほか、積もった火山灰で建物が損傷したり倒壊したりするおそれがあるほか、大量の火山灰にさらされるとせきが出たり目や鼻などに異常が出たりすることがあり、ぜんそく患者や肺に疾患がある人は症状が悪化する場合があります。

影響は首都圏の広範囲に

協議会が2019年に公表した広域避難計画によると、300年あまり前の江戸時代の噴火をもとに火山灰が2センチ以上に達する地域の推計人口は神奈川県を中心に885万人にのぼると推計されています。火山灰を大量に噴き出す江戸時代のようなタイプの噴火が発生した場合、風向きや風速によっては富士山周辺だけでなく、東京の都心など関東各地にも到達するとみられていて、短時間で都市機能がマヒするおそれがあります。

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