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東京都 地球温暖化想定し防潮堤かさ上げ計画案 豊洲 晴海 東部は?

  • 2022年11月7日

東京都は東京湾に総延長およそ60キロ、最も高い所で8メートルになる防潮堤を設けています。この防潮堤について東京都は、地球温暖化による海面上昇や台風の強大化を想定に入れた防潮堤のかさ上げ計画を全国で初めてとりまとめ、パブリックコメントを実施し、順次、工事を進めていく方針です。地区別のかさ上げの高さなど計画案の内容をまとめました。

東京都の高潮対策 きっかけは「伊勢湾台風」

東京は、区部の東部にいわゆる海抜ゼロメートル地帯が広がり、大正6年の台風や、昭和24年のキティ台風による高潮で、大きな被害を受けました。

そして、昭和34年の過去最悪の被害をもたらした「伊勢湾台風」をきっかけに、東京都は具体的な高潮対策に乗り出しました。
2年後の昭和36年、都は「伊勢湾台風」級の台風に耐えられる防潮堤や水門を東京湾に整備することを決め、それから20年近くかけて昭和54年度に完成させました。

防潮堤かさ上げ計画案 地球温暖化想定では全国初

今回、防潮堤のかさ上げの案が示されたのは、東京都の「東京湾沿岸海岸保全基本計画」です。これは高潮を防ぐ防潮堤などの施設の整備や利活用の方針を示したもので、国の法律に基づいて平成16年に策定されました。

今回、主に防潮堤の整備方針の部分が改定され、地球温暖化による海面上昇や台風の強大化を念頭に具体的にどの部分の防潮堤をどの程度かさ上げするかが示されました。

国土交通省によりますと、地球温暖化を踏まえ防潮堤のかさ上げが計画されるのは全国で初めてだということです。

防潮堤かさ上げ 計画案の想定は

こうした中、都は、まず、専門家の議論を踏まえて2100年までに気温が2度上昇する想定で、高潮のシミュレーションを行いました。
具体的には、海面は最も深刻とされるおよそ60センチ上昇することを基準にし、台風は昭和34年に大きな被害をもたらした「伊勢湾台風」を上回る勢力のものを想定しました。
さらに、上陸までのルートも3つ想定し、最悪の被害をシミュレーションしました。

台風の強大化による高潮と波浪の増大、そこに30センチの余裕を持たせた想定で計画案をまとめたということです。

防潮堤 地区別のかさ上げ計画案の高さは

東京都は、東日本大震災を踏まえた耐震化対策などを経て、現在は、東京湾に、総延長およそ60キロ、最も高い所で8メートルになる防潮堤を設けています。かさ上げの対象となるのは防潮堤の半分のおよそ30キロ、でかさ上げの高さは豊洲地区で60センチ、晴海地区で80センチ、東部地区では最も高い1.4メートルなどとなっています。

さらに、気候変動によって雨の量も増え、内水氾濫の恐れが強まるとして、水門の内側にたまった水を東京湾に流す排水機場の能力を上げることも示されています。

防潮堤のかさあげ 着工時期や予算は

今回の計画案は、2100年までに整備をしていくという方針のみで、具体的な着工の時期や予算などは盛り込まれていません。
都は11月7日からこの計画の案を提示した上で、都民に広く意見を求めるパブリックコメントを実施し、今後、優先度が高いと判断した所から工事を進めていく方針です。

東京都港湾局 枡山了太 水防対策担当課長
「海岸防災の新しい脅威が、気候変動だと考えている。将来を見据えた上で、段階的に工事を行っていきたい」

計画案の背景 世界の平均気温2度上昇で海面水位は…

国連のIPCC=「気候変動に関する政府間パネル」の最新の報告書では、2100年までに世界の平均気温が産業革命前と比べて2度上昇した場合、平均海面水位が2014年までの20年間の平均と比べて最大でおよそ60センチ上昇するなどと予測されています。

これを踏まえ、国は、今後、全国で高潮被害の深刻化が懸念されるとして、おととし、都道府県に対して、温暖化の影響予測を踏まえて海岸の防災計画を策定するよう求めました。さらに、去年には、都道府県に対し、対応を急ぐよう、2025年度までに計画を策定することが閣議決定されています。

“今から高潮対策の施設更新について議論を”

海岸防災に詳しい高知工科大学の佐藤愼司教授は、気候変動の予測精度が高まってきていることを踏まえ、今から高潮対策の施設更新について議論をすべきだと指摘します。

佐藤教授
「海水面の上昇で波や台風の経路がどう変わるとか、それぞれの地域に合わせた予測をすべきで、それに応じた対策が求められる。防潮堤をかさ上げするにも段階的にやっていかなければいけないことを考えると、数十年単位の計画にならざるを得ないので、今から対応を検討すべきだ」

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