気象庁は緊急速報メールについて、2022年12月末に大雨などの特別警報や噴火警報の配信を取りやめると発表しました。これについて気象庁は、1年前に取りやめる方針を示しましたが、自治体などからの戸惑いや懸念の声を受けて撤回していました。
今回、改めて配信をとりやめることにした理由やこれまでの経緯などについてまとめました。
緊急速報メールのデモ画面
気象庁の「緊急地震速報」や「津波警報」「大津波警報」、「大雨や暴風など気象に関する特別警報」「噴火警戒レベルが4と5にあたる噴火警報」について、携帯電話事業者はスマートフォンや携帯電話に「緊急速報メール」で配信しています。
「緊急速報メール」について気象庁は、大雨や暴風など気象に関する特別警報と、噴火警戒レベルが4と5にあたる噴火警報の配信についてことし12月末で取りやめると発表しました。
気象庁がとりやめる理由として強調したのが災害時の防災気象情報を「早めに、地域を絞って伝達することが重要だ」という点です。
緊急速報メールのデモ画面
大雨や暴風などの特別警報や噴火警報を緊急速報メールで配信した場合、文面には対象となる市区町村が記載されません。
そのため危険ではない地域も含めて一様に情報が配信されることで、「かえって住民の混乱を招くおそれがあるとの意見も寄せられている」と説明しています。
一方、緊急地震速報や津波警報・大津波警報については情報が配信された際に必要な行動などがすでに周知されているとして「危険でない地域を含めても混乱は生じにくい」としています。
緊急速報メールの配信について、気象庁が2021年10月、2週間後に配信を取りやめると発表したところ、自治体や災害情報の専門家から「突然の配信取りやめは戸惑う」とか「拙速に廃止するべきではない」などといった声が上がり、取りやめを見送る事態となっていました。
そこで気象庁は全国1741すべての市区町村を対象に防災情報の提供に関するアンケートをウェブ上で行い、大雨などの特別警報や噴火警報がどのように住民に伝えられているか、およそ半年をかけて調べました。
気象庁が発表した調査結果の詳細です。防災情報の住民への伝達手段について、回答の内訳です。
〇気象などの特別警報
緊急速報メールなど86%(1501自治体)
(強制受信型)
そのほかの手段 14%(240自治体)
(防災行政無線など)
〇噴火の特別警報(噴火警戒レベル4・5)
緊急速報メールなど86%(154自治体)
そのほかの手段 14%(25自治体)
〇避難指示
緊急速報メールなど93%(1592自治体)
そのほかの手段 7%(126自治体)
〇緊急安全確保
緊急速報メールなど93%(1606自治体)
そのほかの手段 7%(112自治体)
「そのほかの手段」の内訳は、防災行政無線や市区町村の防災メール、ホームページが該当します。
このほか、アンケートでは避難指示や緊急安全確保の発表や判断に大雨の特別警報や土砂災害警戒情報などの情報が利用されているかについても尋ねています。
一方、今回のアンケート調査には気象庁が緊急速報メールの一部の配信を取りやめるとした判断について、自治体に意見を求める質問項目は設けられていません。
大雨や暴風などの特別警報と噴火警報の緊急速報用のメール配信を取りやめることについて、気象庁は「情報はすべての市区町村でメールなど多様な手段で住民に伝えられている」「防災アプリなどで情報が提供される環境が充実している」「気象の速報メールは危険でない地域も含め広く配信される」などと説明しています。
また、「対応が拙速だ」などとしていったんは見送ったメール配信の取りやめを改めて決めたことについては「去年からことしにかけて全国すべての自治体にアンケートを行った結果、取りやめに対する反対意見などはなかった」とも説明しています。
気象庁の長谷川直之長官は10月18日の会見で、防災気象情報を、地域を絞って迅速に伝えるため、災害の危険度の高まりを5段階に色分けして示す「キキクル」の情報を、プッシュ型で伝える取り組みを今後さらに強化していく方針を示しました。
一方、9月に台風14号が上陸するなど大雨や台風への対応が多く、活発な噴火活動を続ける桜島がある鹿児島市は「噴火に関する特別警報は緊急地震速報や津波警報などと同様に、突然発生する事象に関する住民にとって重要な情報だ。緊急速報メールは第1報として即時性の高い伝達手段で、配信終了は住民などへの影響が大きい」としています。
その上で「市民が速やかに情報を入手し避難できるよう正確かつ迅速な情報の提供をお願いしたい」としています。