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さいたま市大宮区北袋町1丁目の防災 カギは“ゆるやかにつながる”

  • 2022年5月11日

地域の詳しい防災を伝える「#3丁目の防災」。
今回は、さいたま市大宮区北袋町1丁目です。この地域は、再開発が進むさいたま新都心エリアにあり新築のマンションが建ち並んでいますが、住民どうしのつながりが課題となっています。いざという時に助け合うにはどうすればいいのか。解決のためのキーワードは“ゆるやかにつながる”です。
(さいたま放送局/記者 永野麻衣)

さいたま新都心エリアに大規模マンション

東京23区への一極集中の是正などを目指し、22年前に誕生したさいたま新都心。

玄関口のJRさいたま新都心駅から徒歩5分ほどの距離に、さいたま市大宮区北袋町1丁目があります。

その一角に、供給戸数1400戸余りの大規模マンションが出現しました。去年から入居が始まり、現在、およそ1200世帯が暮らしています。

災害時は在宅避難を

このマンションの自治会長を務めるのが菊池美範さんです。菊池さんは、建物の耐震性能を踏まえた防災対策に力を入れています。

自治会長 菊池美範さん
「最新の耐震性能で設計施工されているので、そのあたりは、安全性は高いのではないかという認識です。建物は健在であるという前提で在宅避難を打ち出しています」

在宅避難を想定した対策

住民の在宅避難を支えるため、自治会は防災倉庫を管理しています。

世帯数が多いため、水や食料はそれぞれの家庭で備蓄してもらい、倉庫にはLED投光器や発電機、それに人命救助に必要な担架など個人で対応しきれない機材などをそろえています。

かまどが収納されたスツール

マンションの中庭には、災害時に炊き出しができるかまどが備え付けられています。かまどは、四角いいすの中に収納されていて、中から取りだして使います。

さらに、外の複数のマンホールは、仕切りや便座を設置し、臨時のトイレとして活用します。

課題は住民どうしのつながりの薄さ

できたばかりのマンションだけあって、ハード面ではさまざまな対策がとられている一方、住民どうしのつながりが薄いことが課題となっています。

住民

大きな建物で世帯数も多いので、ほとんど顔見知りがいません。そのあたりがちょっと不安です。

いざという時に住民どうしが助け合うにはどうすればいいのか。自治会は、防災を含めたさまざまなテーマのイベントを通じて交流の場を広げようとしています。

“ゆるやかにつながる”

去年は、災害時の安否確認の際に活用する「防災ハンカチ」を住民たちが体験しました。

ハンカチを掲げていない世帯を見分け速やかな救助につなげるのがねらいで、イベント開催に合わせて行われました。また、防災フェスタをオンラインで実施し、在宅避難について理解を深めたりクイズ形式で楽しみながら防災の知識を学んだりしました。

子どもが楽しめるワークショップも開催してきました。これらに共通するコンセプトが「ゆるやかにつながる」ことです。

自治会長 菊池美範さん
「住民のプライベートをきちんと確保したうえで、つながれるところはつながりましょうという考え方です。ゆるやかにつながることで住民どうしが顔を覚えるということなんですね。そのことによって、災害時に体の動きとなって出てくると考えています」

自治会とコンサルティング会社が連携

自治会の活動を支えているのが防災士の資格を持つコンサルティング会社の担当者です。マンションを開発した不動産会社が、防災にも生かせる住民のコミュニティーづくりを進めようとこうした連携を取り入れました。

この日は、家庭で十分備蓄が進んでいない簡易トイレを配付する計画について意見を交わし、役員たちが対面で渡す方法をとることで、住民と顔が見える関係づくりに生かしていくことになりました。

コンサルティング会社との連携を進める中で、自治会が注目しているのが中庭の花壇です。一緒にガーデニングを楽しみながら世代を超えた交流の場にしたい考えです。住民たちが食べられるものなど災害時に役立つ植物を育ててはどうかといったアイデアも出されました。

自治会長 菊池美範さん
「隣に誰が住んでいたかわからなかったという状況にしないために、ふだんからコミュニティーを作っておいて、いざという時はみんなの顔を覚えているようふれあっていただく、防災の点では、そこがいちばん大きいと思います」

取材後記

防災力を高める方法のひとつに訓練があります。比較的短期間で防災の知識や団結力を深めることができる一方で、住民が大きな負担に感じてしまうと、十分な効果が得られないおそれもあります。ゆるやかではあるものの、日々の生活の中で楽しみながら防災の対策を進めていこうという自治会の取り組みは、ほかのマンションや地域でも参考になると感じました。

  • 永野麻衣

    さいたま放送局 記者

    永野麻衣

    富山局、名古屋局、社会部を経て、2020年から現所属。

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