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千葉 習志野市藤崎5丁目 マンションのリスクに備える 住民の工夫

#3丁目の防災2
  • 2022年2月7日

「何丁目」の地域まで分け入り、首都直下地震のリスクや命を守るヒントをお伝えする「#3丁目の防災」。
2回目は、「千葉県習志野市藤崎5丁目」です。都内などに通勤・通学する人が多く住み、大規模なマンションが建ち並ぶこの町。話を聞いてみると、多様な人が住んでいるマンションの特性をうまくいかし、住民のアイデアで防災力を上げている知恵と工夫がありました。
(千葉放送局/記者 金子ひとみ)

“在宅避難” 不安はライフライン

千葉県北西部に位置する習志野市。マンションが建ち並ぶ藤崎5丁目の中心にあるのが、20年前に建てられた4棟のマンション。最高18階建ての建物に、461世帯およそ1400人が暮らしています。

地震が起きたらどこに避難するか聞いてみました。
このマンションを含め千葉県内の50人に話を聞くことができましたが、4分の3が自宅にとどまると答えました。

自宅にとどまる37人 避難所や親戚の家13人

 

一方、その「在宅避難」で心配な事を聞いてみると、電気や水が止まることへの不安が多くあがりました。

 

高層階だとエレベーターとかが止まることですね。

 

電気・水道・ライフラインが止まったら心配です。

ライフラインが止まったら…

ライフラインが止まると、住民にとってのリスクになります。

断水した場合、マンションで暮らしているとどうなるのか?
2リットルの水4本、階段を使って13階まで運んでみました。エレベーターが使えないことを想定して40メートルの高さまで水を運びます。

記者

5階です。重いので、足が痛いっていうよりも腕の方がどんどん痛みが増していく感じです。

3分15秒かかって、水を運ぶことができましたが、息が上がって苦しかったです。

ただ、マンションでの「在宅避難」がつらくなっても、この地域の避難所は、近くの小学校の1か所。住民全員は入れません。

なぜそういう状況になっているのでしょうか?
かつて藤崎5丁目周辺は順天堂大学のキャンパスがありました。

キャンパスが移転した後の広大な土地にマンションが建ち、多くの人が移り住んだことで、避難所に入るのがより難しくなったのです。

断水・停電に備えた工夫とは?

マンションの住民たちはどう備えようとしているのか。

それが、「マンションぐるみで在宅避難に備えること」です。住民どうしで自主防災会を結成し、「在宅避難」への対策に徹底的にこだわりました。

その一つが安否確認です。世帯ごとに安否や避難の状況を書いてもらい、自主防災会で集計して市に報告する仕組みをつくりました。

安否確認用のマグネットシート

マグネットシートを、それぞれのドアなどにつけ、住民が書いたあと自主防災会が回収して、安否確認を行います。
さらに、断水への備えとして、マンションの敷地内に防災用の井戸を設置。停電してもカセットボンベを動力とする発電機を使って井戸を利用できるようにしました。

自主防災会 三井久夫会長
「電気、水、非常に大事なんですけれども、停電になると水も含めていろんな活動が制限されます。安心の源にもなるんじゃないですか」

物資届ける手作りの装置!

さらに住民たちが大切にしているのが、「住民のアイデアをいかす防災」です。
その1つが、住民たちみずからが開発した手作りの装置です。エレベーターが止まったとき、物資を、高さ50メートルの高層階まで届けます。

滑車とロープで、それほど力を入れなくても持ち上げることができます。この装置の材料費は1セットで5800円。住民の発想をいかし、お金をあまりかけずに「在宅避難」への備えを進めているのです。

住民どうしがアイデアを出し合って進める習志野市藤崎5丁目の防災。住民は、話し合いを重ねることで、さらに新しいアイデアが生まれるのではないかといいます。

自主防災会 三井久夫会長
「自分たちの生活を自分たちで守るということですね。自分たちで作った設備を自分たちで生かしていけるという体制が徐々にできている。もう一息、どうやって広めていくかというところを考えていきたいと思います」

取材後記

この自主防災会には、さまざまな得意分野を持つ幅広い年代のマンションの住民が参加していました。
和やかな雰囲気の中で意見を出し合っていて、難しく考えず肩の力を抜いて取り組んでいるからこそ、滑車を使った荷揚げ装置のようなアイデアが形になるのではないかと思いました。
また、各部屋の玄関ドアに貼る安否確認用のマグネットシートには、名前は書かずに部屋番号だけを書いてもらうようにするなど、プライバシーの配慮にもこだわっていました。
最近、千葉県内では都内から転入する人が増えて、各地でマンションが建設されていますが、そういった新たなマンションに住む人たちにも参考になると感じました。

#3丁目の防災

シリーズ「#3丁目の防災」
防災を都道府県や区市町村だけでなく「ひとつひとつの町」にしぼって見ていくことにこだわり、色々な町の防災を取り上げていきます。

この町を取り上げてほしいなどのご要望や、もっとこういうところを調べてほしいなどの要望がありましたら、こちらの投稿フォーム からご意見をお寄せください。

  • 金子ひとみ

    千葉放送局 記者

    金子ひとみ

    2006年入局。札幌局などを経て社会部。いったん退職し、18年に4年ぶりに再入局。千葉県政担当を経て遊軍。 家族とマンション住まいです。

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