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大地震で帰宅困難「ヒールで足が…」通勤時に備えておきたいこと

  • 2021年12月1日

「ヒールで足が死にました」
ことし10月、首都圏を襲った震度5強の地震のあと、SNSで見られたつぶやきです。そういえば、今の私の格好もヒールのある靴にスカート。仕事道具でバッグも重くなっています…。
「『帰宅困難』になったら、働く女性ならではの大変さがありそう」と改めて思った私。
では、どう備え、何を持ち歩けばいいの?徹底的に調べてみました。
(首都圏局/記者 岡部咲)

記事の最後に、「女性に持ち歩いてほしいものリスト」を掲載しています。

ヒールじゃなくてよかった…

今回の取材のきっかけは、ことし10月、東京と埼玉で震度5強を観測した地震です。

10月8日の首都圏ネットワーク

揺れを感じてすぐに向かったのは、職場の記者クラブがある東京都庁。しかし、エレベーターが止まり、職場のある6階まで階段で上がらざるを得ませんでした。
私はたまたまスニーカーを履いていましたが、それでも息絶え絶えの状態に…。
周りを見ると、ヒールを履いたまま階段を下りていく女性の都庁職員もいました。素直に「ヒールじゃなくてよかった…」と感じてしまいました。

ヒールを履いていたみんな、大丈夫だった?

「みんな、大丈夫だったのかな?」
地震のあと、ツイッターを見ると、やはり多くの女性が同じ大変さを感じていました。多くの人が「帰宅困難」となって、歩いて帰ったり電車で立ちっぱなしになったりしたからです。

たまたまヒールで足が死にました
最上階までヒールで階段上がってしんどかった
ヒールで筋肉痛になった

 

ネットで話題!“20キロ歩けるパンプス”

そんな中、ツイッターで、あるパンプスが話題になっているのを見つけました。
「20キロ歩いて帰宅できるパンプス」と利用者の女性が投稿し、3万を超える「いいね」が付いていたのです。

パンプスで20キロ!?痛くないの?そんなパンプスがあれば、帰宅困難も怖くないかも!
しかし、このパンプスを取り扱っている靴販売店に電話すると、「すべて売り切れ」とのこと。「そんなに人気なんだったら」と、メーカーを取材してみることにしました。

話題のパンプスを履いてみました

このパンプス、東京・新宿区のメーカーが販売している商品で、10月の地震の2日後には、公式通販サイトの注文がふだんの40倍に。地震からまもなく2か月になる今も、品薄が続いているということです。

担当者に聞くと、このパンプスが生まれたきっかけは、10年前の東日本大震災でした。帰宅困難になった女性社員が20キロ歩いて帰った経験を原点に、「20キロ歩けるパンプス」をコンセプトにした商品を開発したそうです。

このパンプス、私も実際に履いてみました。かかとで着地したときの、「ガツン!」というヒール特有の衝撃がなく、かかとが沈み込みます。着地したあとに前に蹴り出すときも、靴がクッションになってつま先や指の付け根が痛くありません。

歩きやすさの秘けつは、スニーカーにも使用される高反発の素材を利用したインソールと、ゴム製のヒールだそうです。

アキレス シューズ事業部 中西由佳理さん
「反響の大きさにすごく驚くとともに、防災へのみなさんの関心が高まっているのを感じています。災害時に足が少し痛くならないだけでも気持ちが違ってくると思うので、そういう面でもサポートできる靴を目指していきたい」

東日本大震災をきっかけに、スニーカーで通勤する人が増えたと言われていますが、今回の地震は、改めて女性が足元を見直すきっかけになったのかもしれません。

女子小学生が考えた“防災ポーチ”とは

取材を進めていくうちに、「防災ポーチ」を作った女子小学生がいることを知りました。

作ったのは、練馬区を中心に活動するガールスカウトの小学生たちです。帰宅困難になったときに役立つものは何かを考えて、ひとつのポーチにまとめたのです。

このポーチは、公民館などで配られる子ども新聞で紹介したほか、地域のイベントで実際に販売されたこともあります。その中身です。

カイロやばんそうこう、常備薬といった通常の防災用品に加え、女子ならではの視点もあります。

例えば、鏡。理由は、避難先でも、身だしなみが気になるから。
そして、ホイッスル。危険な目に遭ったときに助けを呼べるようポーチの中に入れたそうです。

なるほど。それぞれ、災害が起きたときのことを真剣に想像してポーチの中身を考えたことがわかります。自分が何を持ち歩けばいいのかは、それぞれ置かれた状況で考えるといいのだと思いました。

 

動画で地震の様子を見たときに、必要だと思ったことを入れました。

 

ポーチがあれば安心できるし、いつでも楽しくいられると思います。みんなにも作ってほしい。

“防災のプロ”に聞いてみると

女性が持ち歩いた方がいいものを、「防災のプロ」にも聞いてみました。日本防災士会の理事の正谷絵美さんです。

持ってきたのは、大きなリュック。
「ここまでしないといけないのか…」とたじろぎますが、そうではないと言います。必要なのは、ガールスカウトの子どもたちのように、自分が被災した姿を想像することだと強調しました。

日本防災士会 理事 正谷絵美さん
「実はたくさんの物を持ち歩く必要はないと思います。自分に必要なもの、自分に合ったものが何か、普段から考えておくことが大切なんです」

帰宅困難の意外な課題はスカート!?

例えば、数々の被災地を回ってきた正谷さんが、バッグに入れているもののひとつがあります。それは薄手のジーンズ柄のスパッツでした。

その理由は、一時的に身を寄せる施設で、スカートを履いた女性が、座りにくそうにしていたからです。

「スカートで座ると、中が見えてしまうので、困ってしまいます。座れずに立ち続けると、体力を消耗してしまいます」

東日本大震災時の様子

しかし、そこで「ふだんからズボンを」とならないのが、正谷さん流。おしゃれも諦めず、スパッツを一枚持つだけで、気が楽になるといいます。

防災の秘けつ「自分に合ったものを」

最後に、正谷さんが、女性にふだんから持ってほしいもののリストをまとめてもらいました。このリストも参考に、ふだんの持ち物を考えてほしいと言います。

「例えば、今スカートを履いて地面に座ったら、水がなくなったら、どうなるのか。いろいろとリストがあると思うんですが、それをすべて揃えるのではなくていいと思います。自分自身が何か備えているだけで安心感が違いますので、ちょっとした心の支えや余裕を持てる準備を進めてほしい」

正谷さんの「女性に持ち歩いてほしいものリスト」

「正谷さんおすすめの持ち歩いてほしいものリスト」
□ スマートフォンのモバイルバッテリー
□ 水の入ったペットボトル
□ 食べ物(ようかんがイチオシ、あめ玉、日持ちする菓子パンもおすすめ)
□ 緊急用の簡易トイレ(トイレにかぶせて使用し、水分を含むと固まるもの)
□ 大人用オムツ(トイレ対策に)
□ ティッシュ
□ ハンカチ
□ 生理用品
□ 常備薬
□ 除菌シート
□ マスク(新型コロナ感染防止対策や崩れたメイク隠しにも)
□ 小銭(キャッシュレスは災害時に使えない可能性も)
□ カイロ(貼るタイプがオススメ。夏は熱中症予防の塩分タブレットに交代)
□ 替えのコンタクト
□ メガネ
□ 手袋やニットの帽子
□ 薄手のスパッツ(スカートで出かけるとき)
□ 運動靴(畳めば薄くなるもの)
□ 着替えの服
□ 雨具(傘と雨がっぱ)
□ 歯ブラシ
□ ネックピロー(避難所で何日か過ごすときに欠かせない)
□ 家族写真と手紙(災害時に自分の気持ちを励ますため)

  • 岡部 咲

    首都圏局 記者

    岡部 咲

    2011年入局。宮崎局、宇都宮局を経て、2018年から首都圏局。防災士の資格を持ち、身近な防災を取材。

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