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“都市部特有のリスク”多摩川 命を守るための3つのポイント

  • 2021年10月5日

首都圏各地の川のリスクをお伝えする「かわ知り」。
今回は、山梨県を源流に、東京都、神奈川県との境界を流れる「多摩川」です。2019年の台風19号では、流域の都市部で浸水が発生。マンションなどの住居、駅や道路の交通インフラなどに大きな影響が出ました。水害にどう備えたらいいのか、命を守るための3つのポイントをまとめました。
(首都圏局/ディレクター 阿部和弘 )

憩いの場 “暴れ川”の一面も

山梨県甲州市の笠取山を源流に、東京や神奈川の都市部を流れる多摩川。河川敷は住民の憩いの場となっていますが、過去たびたび水害を引き起こしてきた“暴れ川”の一面があります。

1974年の「多摩川水害」。民放のドラマ「岸辺のアルバム」でも取り上げられたこの水害は、民家が濁流に飲み込まれるなど大きな被害が出ました。

おととしの台風19号でも、流域の広い範囲で浸水が発生。川崎市高津区では犠牲者も出ました。こうした水害から命を守るために、どう備えたらいいのでしょうか。

命を守るポイント(1)「調布橋」の水位を確認

確認してほしいのは、河口から上流60キロ、東京・青梅市にある「調布橋」の水位です。

なぜ「調布橋」の水位が重要なのか。理由は、山間部から流れる多摩川が、傾斜が急な「急流河川」だとされているからです。

一見、緩やかに流れるように見える多摩川が「急流河川」とはどういうことか。下のグラフを見てみてください。左右の目盛りが河口から源流の距離。上下が標高です。2000メートル近くの標高から100キロ余りを一気に流れ下っています。
荒川や利根川などの一級河川と比べると、多摩川は国内でも有数の勾配が急な河川なのです。

そのため、上流で水位が上昇すると、短時間で下流の水位も上昇します。
実際、おととしの台風19号のときを例にみると、上流で大雨となり「調布橋」の水位がピークに達したのが10月12日の夜9時過ぎ。そして、下流の大田区・田園調布にある観測所で水位がピークに達したのは、そのわずか1時間半後でした。

早めに上流の水位を確認し、水位が高くなってきたら迷わずに避難することが大切です。

大雨が予想されるときには、国土交通省のウェブサイト「川の防災情報」やNHKのニュース・防災アプリで、リアルタイムの水位を確認するようにしてください。

京浜河川事務所 太田敏之副所長
「勾配が急だということは、降った雨が一気に下流に流れてきます。下流に住む方は『調布橋』の水位を確認し、水位が上がってきている時には、次は下流で水位が上がってくると予測していただき、すぐに避難できる準備をしてほしい」

命を守るポイント(2)支流との合流部に注意

浸水のリスクが特に高いのが「支流が合流する地点」です。

多摩川の水位が上がると、支流からの水がせき止められ、氾濫につながる危険性があります。
多摩川には、主なものだけでも10の支流が流れ込み、その周辺に多くの人が住んでいます。主な10の支流とは、秋川、平井川、谷地川、浅川、残堀川、大栗川、三沢川、平瀬川、野川、それに海老取川です。さらに細かな支流も、多くあります。

おととしの台風19号の際には、川崎市高津区などを流れる「平瀬川」では、多摩川との合流部付近で氾濫が発生。周辺で浸水の被害が出ました。多摩川の水位が上がったときには、支流の合流部に特に注意してください。

命を守るポイント(3)都市部の内水氾濫に備える

「内水氾濫」は、下水道などが逆流して地上に水があふれる現象です。ゲリラ豪雨など短時間に激しい雨が降った際にも起こりますが、周辺で強い雨が降っていなくても、川の周辺で雨が降り水位が高くなることで、下水が流れ込めなくなったり川から逆流したりして発生することがあります。

そのため川から離れた場所でも、突然浸水が起きます。
おととし、被害にあったのが川崎市中原区の武蔵小杉です。

タワーマンションの周辺も浸水し、住民の生活に大きな影響が出ました。
その原因は川の氾濫ではなく、「内水氾濫」だったのです。

2019年10月 武蔵小杉/川崎 中原区

内水氾濫に備えるために

内水氾濫に備え、川崎市はことし、「内水ハザードマップ」をつくりました。

内水氾濫で浸水が想定される区域を地図に表示。
川沿いの土地が低い場所などを中心に、広い範囲にリスクがあることを示しています。

川崎市下水道管理課 川原良太担当課長
「黄色の部分は水深20センチの想定ですが、20センチでも水の流れによっては歩行が困難になることもあります。内水ハザードマップをみて、自宅や職場の水害リスクを把握していただき、いざという時に備えてほしい」

こうした「内水ハザードマップ」はまだ作っていない自治体もありますが、その場合は、家の近くの「地形」に注目してみてください。
都市部の「内水氾濫」は、土地が低くなっているところに水が集まるという特徴があります。大雨の際には、低い土地に近づかないことが大切です。

多摩川のかわ知り 3つのポイント

この記事では以下の3つのポイントをお伝えしました。

このいずれも、おととしの台風で実際に起きたことから、教訓として見えたものです。
大雨の際には、堤防を越えて水が溢れる危険はもちろん、内水氾濫のようなケースが発生する可能性もあります。決して油断せずに、多摩川のリスクを知り、いざという時のために備えてください。

「川の防災情報」 https://www.river.go.jp
「NHKニュース・防災アプリ」こちらから

 

  • 阿部和弘

    首都圏局 ディレクター

    阿部和弘

    2010年入局。秋田局、報道局、名古屋局を経て2020年から首都圏局。 これまで震災や災害などの現場を取材。

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