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与野中央公園に5000人収容のアリーナ計画 揺れる住民の思いは さいたま市

  • 2024年6月18日

さいたま市中央区にある与野中央公園。住宅地にあるこの公園は、市民にとって憩いの場です。        この公園に、5000人が収容できるアリーナを整備する計画が示されました。スポーツによるまちづくりを目指すための計画。
しかし、この計画をめぐって住民の間では、賛成と反対で意見の分かれる事態になっています。

(さいたま局/記者 粕尾祐介)

みんなの“与野中央公園”

与野中央公園

広さおよそ8ヘクタール、遊具やテニスコートもあり、休日には家族連れも多く訪れるさいたま市中央区にある与野中央公園です。
JR埼京線の「与野本町駅」から近く、住宅地の中にある緑の多いこの公園は、「まちのオアシス」ともいえる存在です。

 

住民
「遊具も大きいですし、ボールでも遊べるのですごいよい公園だと思います」

住民
「家が近くなので、月に何回か来ています」

5000人収容アリーナ計画 全容は

図の「次世代型スポーツ施設」がアリーナ

緑豊かで子ども連れも多く利用するこの公園に、去年、さいたま市は西側の一角に5000人が収容可能なアリーナを整備する基本計画を市民に示しました。
予算規模はおよそ数十億円になる見込みで、プロバスケットチームの試合や、コンサート会場などの興業イベントに利用される予定です。

賛成する市民 「アリーナできればにぎわい生まれる」

アリーナに賛成する星野邦敏さん

アリーナの建設に賛成する市民に話を聞きに行きました。3歳と0歳の子どもを育てる星野邦敏さんです。
公園から車で10分ほどで行くことができる、さいたま市大宮区に住んでいます。            
賛成する理由は、身近な環境でプロスポーツを見ることができるようになれば、子どもの教育にもよいのではないかと考えるからです。

星野さんの3歳の長女

与野中央公園では休日に子どもを遊ばせることもあります。
「アリーナが建設されても、子どもの遊び場は一部残るので今後も遊びにいきたい」と話します。

与野中央公園で遊ぶ星野さんの長女

星野邦敏さん
「公園が子どもの遊び場という機能は失わないと思います。うちの場合は下に生まれたばかりの子供もいるので、その子も一緒に連れて行くとなると、歩いては行きづらいので車で行ける公園はありがたいです。今後も利用します」

星野さんは浦和美園出身。
大学生の時、埼玉スタジアムができる際も住民が賛成と反対で意見が割れたのを目の当たりにしてきました。しかし、その後、スタジアムができて駅やアパートができ、再開発がすすみ、まちは発展したと感じています。このため、与野中央公園もアリーナができて人が集まり、地域が発展するのではないかと期待しているのです。

星野邦敏さん
「アリーナを作ったことによって次の20年30年その周辺の地域がより発展する。整備されたあとの公園もきっとよりよくなるんじゃないかなと思います」

一方で、反対する声が大きくなっているのも事実です。
アリーナ整備の基本計画が広く知られると、市民からは歓迎する声の一方で、不安を口にする人も出てきました。
去年、さいたま市が行ったパブリックコメントでは56人から181件の意見が寄せられ、賛成が1割、反対が6割ぐらいという結果になりました。

令和5年11月の反対運動
令和5年9月に反対署名を市に提出

アリーナ整備に反対する人たちは署名運動を始めていて、ことし5月中旬までに署名は1万人にのぼりました。
主に反対する意見は、
「アリーナを作らず緑豊かなそのままの公園にしてほしい」
「プロスポーツで利用するアリーナではなく、市民が利用できる規模の小さいサブアリーナを作ってほしい」
「同じ中央区にさいたまスーパーアリーナがあるのにアリーナは必要ない」
などさまざまな意見がありました。

反対する市民 「混雑、事故が不安 緑の広場を望む」

アリーナに反対する森川靖子さん

アリーナの建設に反対している森川靖子さんです。森川さんは公園の近くに20年以上住んできました。
大きな公園があったことも近くに住む決め手になったということです。

息子2人と友達が公園近くで植樹を行った写真

息子2人をこの公園で遊ばせたり、公園近くでどんぐりの木を植えるイベントにも参加したりした思い出の公園です。

森川靖子さん
「小さいときは子どもを連れて遊ばせましたし、子どもたちは小学生ぐらいになると自分でお友達と遊びに来ていました」

息子たちが成人した今は、犬の散歩でほぼ毎日、公園やその周辺を散策するのが日課です。

記者に工事予定地を説明する森川さん

アリーナ建設で、周辺の環境が変わってしまうことに不安が募るといいます。

森川靖子さん
「急に5000人も来ると駅まで行くにも時間帯によっては行きにくくなってしまったり、駅周辺が使いにくかったりするようになってしまうのではと思います。また、駐車場の出入り口を公園の近くに作るという計画なので、子どもの事故なども心配だなと思います。アリーナじゃなくて、誰でも使える緑の広場の公園にしてほしい」

反対意見が強まる背景は

記者にアリーナ計画を説明する室長

計画を進めるさいたま市は、市民の声を受け止めながらも引き続き説明を行っていきたいということです。

さいたま市スポーツ政策室 大熊裕史室長

さいたま市スポーツ政策室 大熊裕史室長
「反対の意見をいただいているのも事実です。新しいスポーツ施設の意義、必要性についてはご理解をいただきながら進めていきたい。地元の皆さんからご心配の声がありますので、丁寧に説明を続けていきたい」

PFI制度とは なぜ市民の聞きたいことが説明できない?

アリーナの建設予定地

今回、アリーナの整備はPFI制度という民間事業者の資金やアイデアを導入する方式をとっています。
このため、計画の詳細はさいたま市が決めるのではなく、公募で決まった事業者が決めます。さいたま市は駅からアリーナまでの動線や駐車場の位置など、住民が示してほしい情報を説明できないジレンマを抱えているのです。
住民が求める十分な説明を行うことができず、それが一層住民の不安を強める結果になっています。

専門家 「市民の声を聞くことが大事」

専門家は、今後大切なのは、いかに早く情報を示し市民の意見を聞くかだといいます。

駒澤大学法学部政治学科 内海麻利教授

駒澤大学法学部政治学科 内海麻利教授
「市民の声を聞けるような場を作っていくということが求められると思います。どの事業者を選んでいくのか、どのような計画になるのかが市民の方の関心事だと思いますので、事業者を選ぶ過程を透明性をもって進めていくことが必要です。透明性をもつことが、市民の不安を払拭することになるのではと思います」

取材後記

5000人収容のアリーナ整備計画。たしかに夢のある計画です。
しかし、私は今回、地元の住民への取材を進めると、市から十分な説明が受けられていない現状や不満に触れました。
さいたま市は、今後アリーナの整備費用などの予算案を議会に提案することにしていますが、市がどこまで住民の声に向き合うことができるのか、注視していきたいと思います。

  • 粕尾祐介

    さいたま放送局

    粕尾祐介

    さいたま市政を担当。

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