ことしのパリオリンピック注目競技のひとつがバスケットボール。男子日本代表は48年ぶりに自力で出場権を獲得し、Bリーグも盛り上がりを見せています。
Bリーグ2部、B2で埼玉県越谷市を拠点とする「越谷アルファーズ」に「Bリーマン」と呼ばれる選手がいます。「Bリーガー」と「サラリーマン」の“二足のわらじ”。
厳しい環境の中でB1昇格へと奮闘する姿を取材しました。
さいたま局記者/江田剛章
埼玉県越谷市を拠点とするB2の「越谷アルファーズ」。
シーズンも折り返しを迎え、B1昇格に向けた熱戦が続いています。
12月23日のホームゲームでは会場に「レッツ・ゴーアルファーズ!!」の大声援が響きました。
ファンは埼玉特産の「ねぎ」をあしらった応援グッズを手に応援します。
試合の重要な局面で起用されるのが34歳のベテラン、田村晋 選手です。
持ち味は粘り強いディフェンスで、これまでに何度もチームのピンチを救ってきました。
選手としての「Bリーガー」と会社員としての「サラリーマン」を両立させる、「Bリーマン」としてコートに立ち続けています。
田村選手は平日、都内にあるオフィス向けITサービスなどを手がける企業で働いています。人事部門のキャリア採用を担当するグループでとりまとめ役を任されている。
この日は、人材確保に向けた今後の戦略などをメンバーと協議していました。
越谷アルファーズ 田村晋 選手
「こうやって仕事をできてるのもバスケットボールをできているのも、本当にいろいろな人のおかげなので、きちんと両方ともしっかりとやれるように頑張っています」
フルタイムで仕事を終えたあと、田村選手は1時間以上かけて埼玉県内の練習場へ移動します。
練習場に姿を見せたのは田村選手1人。チーム練習はオフの日です。
週4日のチーム練習のほか、オフの日に1人で練習することも多いそうです。
この日は黙々とシュート練習などに取り組んでいました。
試合は土日を中心に行われます。このため田村選手は、シーズン中、ほとんど休みがないといいます。
「バスケットボールに携わる時間とかもやはり限られてきますし、バスケットボールをやって仕事をしてというのは、すごく大変ですね。自分でもよくやっているなと思います」
田村選手は2016年に、当時所属していた別の実業団チームから、より高いレベルを求めて、いまのチームに移籍しました。3年後、チームはB2に昇格を果たしました。
その後、リーグ全体でもプロ契約の選手が増えて、田村選手のように「Bリーマン」としてプレーする選手はわずかとなりました。
それでも田村選手は、「Bリーマン」としてプレーすることに誇りを持ち続けています。
「B3からいまはB2に上がりましたが、さまざまな苦労を乗り越える中でチームを支えて来たのが当時多く在籍していた『Bリーマン』たちでした。いま、チームに在籍しているのはプロ契約の選手がほとんどですが、本当にいろいろな人たちが関わってきたことでいまのチームがありますし、自分は『Bリーマン』として、そういう人たちの思いも背負って、B2で優勝してB1の舞台に立ちたいと思っています」
「Bリーマン」として田村選手がプレーを続ける原動力には、ひとりの選手の存在があります。
男子バスケットボール日本代表チームを引っ張る、比江島慎 選手です。
高校時代、田村選手は全国制覇を果たしたチームのキャプテンを務めていました。
同じチームでともにプレーしていたのが、1学年下の比江島選手です。
今でも定期的に連絡を取り合っているという2人は、去年、オリンピック出場を決めた際にもSNSでメッセージを交わしていました。
成長した後輩と今度はライバルとして同じ舞台で戦いたい。
田村選手は、比江島選手もプレーするB1の舞台を目指す思いを強くしています。
「比江島選手が日本代表チームで活躍しているところを見ると、やはり自分もまた頑張ろうと思いますね。比江島選手もそうですし、やはり同年代の選手も含めてまだまだ活躍している人もいっぱいいるので、同じコートに立って勝負をしてみたいなという気持ちはありますね」
越谷アルファーズは東地区2位(1月22日現在)でB1昇格に向けたプレーオフ進出圏内にいます。
12月23日の福島ファイヤーボンズ戦に途中出場した田村選手は、持ち味をいかして相手の攻撃の芽を摘みました。
チームは75対54で勝利。昇格に向けた厳しい戦いが続く中、田村選手は「Bリーマン」として、悲願のB1昇格を目指すチームを引っ張るべく、ことしにかける思いを新たにしています。
越谷アルファーズ 田村晋 選手
「仕事とバスケットボールを両立させるという厳しい環境だからこそ、プロに勝ちたいではないですが、そういう気持ちが芽生えます。やはり勝負の世界なのでそこをモチベーションに頑張れているのかなと感じています。より強いチームになって、ことしはぜひB1の舞台に行きたいと思っています」