11月に続編の公開を控え、埼玉県庁まで加わって広く盛り上がりを見せている映画「翔んで埼玉」。前作に続いて脚本を担当している徳永友一さんにお話を伺いました。
徳永さんが思う埼玉とは?実は徳永さん自身も埼玉に緑が?さらに原作にはない場面はどうやって生まれたのか、徳永さんが語った舞台裏とは?
(さいたま放送局 キャスター/武田涼花)
埼玉県の自虐ネタで話題になった映画「翔んで埼玉」の続編が、11月に公開されるのを前に、映画の中でこきおろされる埼玉県と滋賀県の知事に出演者らが謝罪するイベントが10月19日、東京都内で開かれました。
出演する二階堂ふみさんと加藤諒さん、それに武内英樹監督が埼玉県の大野知事に「続編を作ってしまい、申し訳ありませんでした」
滋賀県の三日月知事には、「また、滋賀県にご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ございませんでした」と頭を下げると、三日月知事は「なんで滋賀県やねん!ひどいと思いました」と返していました。
4年前に前回の作品が公開された時は埼玉県に注目が集まりました。
大野知事
「今回の映画をきっかけに滋賀県との関係を強固にしていきたい。映画を見た人には県内のゆかりの場所を訪れてほしい」
そこで、前作に続き脚本を担当している徳永友一さんにお話を伺います。
徳永友一さんのプロフィール
2005年 民放のテレビドラマ「電車男」で地上波デビュー。
その後コメディー、サスペンス、ホームドラマなど幅広いジャンルのテレビドラマの脚本を手がける。
2019年 「翔んで埼玉」の脚本を手がけ、日本アカデミー賞で最優秀脚本賞を受賞。
「翔んで埼玉」は、魔夜峰央さんの漫画が原作となっているわけですけれども、最初に漫画読んだ時って覚えていますか?
最初漫画に出たときは途中で終わってしまっているんですね。続きが気になるところで終わってるので、これを映画にしてって言われた時にこの先どうしようかなと思って。
武内英樹監督とプロデューサーとごはん食べながら何回か打ち合わせしながら、この面白いディスり漫画をどう広げていこうかみたいな。
監督は千葉出身だから。千葉も出したいって。
漫画の段階では、千葉はないですよね。
本当に虐げられているという設定だけだったので、それから作っていくのは相当苦労しました。群馬とかも出したりとかね。
そうですよね。関東全土を巻き込んで。原作にない部分の発想は、まさに徳永さんが脚本を書かれるわけですね。
そこは全部うまくつなげて。
「埼玉県民には、そこら辺の草でも食わせておけ」などのセリフはどう感じました。
とんでもないセリフだけど、これやっていいんですね。みたいな。
(4年前に公開された)映画を見てみると本当に埼玉、千葉、東京、群馬などの関東ネタというんですかね。
よくこんなリアルに描いたなというところがあったんですけれども。
どうやってネタを仕込んでいったんですか?
ネタは、すごく取材しましたね。サイタマニアさん(※埼玉にとても詳しいライター)に来ていただいて、打ち合わせ場所に。とにかく埼玉のことを教えてくださいって言って。
いろんな埼玉ネタを放り込んでもらって、埼玉の中心はどこですかとか。いろんな話を教えてくれて。
やっぱり大宮と浦和、これ熱いよって。
ここがバチバチなんだよみたいなところですか。
歴史はひも解くと危険だけど、そこはいじろうか。そういうのはすべて教えてもらったことが大きいですね。
あと実際の県民にも聞いたと聞きましたが。
そこはやっぱり人を集めて取材させてもらいましたね。本当に一般の人を集めました。リアルに住んでいる人の実感とか声を聞いて。
もともと僕も埼玉というか、(草加市の)獨協大学出身なんですよね。
ですので群馬から来ていた人もいたし、前橋とか、そういう人から話聞いたりとか。
関東の力関係じゃないですけど、電車の何駅がこうみたいな。そういう細かいところも多分取材されたのではと思っていました。
確かにそうですね。結構路線って出ますよね。住んでいる地域性というか全く違いますもんね。不思議だと思いますね。服装も何か全然違うんじゃないかって。
実際に聞き込みした中で衝撃を受けたことはありますか。
案外みんなやっぱりいじってほしいんだということは思いました。
結局みんな郷土愛あるんだということに気付けた。みんな何か田舎なんで恥ずかしいとか、そういうのはなくて。こんな面白いところがあります、みたいな。
実際のこの映画になったシーンで、漫画で描かれていない部分というのが、徳永さんが書かれた部分だと思うんですけど、そういう中で私が一番好きなシーンが、東京テイスティングですね。
(※映画の中で、東京都内各地の空気の“におい”から地名を当てる)
どういう発想で思いついたんですか。
もともと漫画ではバレーボール対決だったんです。
もうちょっとディスりも含めた面白いものないかなって想像していて。 GACKTさんといえば格付けだから。東京のにおいをかぎ分けることできたらいいなあと。
あと、一番大きいのは千葉との対決にするという発想ですね。
対決といって戦争するのかと思いきや、出身地対決というなんの血も流さない対決ですね。
(※映画の中で、埼玉・千葉出身の有名人を互いに言い合う)
これもよく思いついたと思うものの1つです。いろいろ調べていく中で、埼玉の出身芸能人とか有名人とか結構よく出てきたので。
それを映画でやったら面白いかなと思ってやったら、すごくウケましたね。
徳永さんのいろんな発想が話題につながっていると、よく分かりますね。
埼玉県民に1作目の映画を見た時の率直な感想や、映画をきっかけに埼玉がいじられていることについてどう思うのか?埼玉の良さは?などを聞いてきました。
そんなに気にはならない。魅力度ランキングみたいなのでも下じゃないですか。 だからかえってネタになるぐらいの方がおいしいんじゃないのかなって思いますけどね。
何にもないけどいろいろあるのが埼玉で宣伝になっていいと思います。
映画が終わった時に拍手とスタンディングオベーションが起きたぐらい。埼玉県民だけかもしれないんですけど、ハッピーになって大笑いして泣いてという映画だったので、すばらしいシナリオだと思っています。
昔から埼玉って何かいじられるような。東京じゃないけど東京の方から来たとか言っちゃったりとか。だから慣れてる。
公園も多いし、ごみごみしていないし、穏やかで住みやすいです。
率直な意見いくつかお聞きいたしました。 いかがでしたでしょうか。
いや~でもうれしいですね。みんな好意的だったので。
おいしいからいいんじゃないとか。
皆さん共通していたのは住みやすさ、東京都内にも出やすいしみたいな。
住みやすさは抜群ですよね。
(映画後のスタンディングオベーションを味わって)涙が出ましたよ。 浦和美園で見て。こんなにみんな受け入れてくれるんだと思って。
拍手の中、1人で泣いていました。 こんな幸せなことはないです。
さて、ここからは、徳永さんの脚本家への歩みを聞いていきます。
脚本家を目指されたのは、いつぐらいからですか。
僕は中学生ですね。トレンディードラマブームだったので、東京ラブストーリーとか。すごいなドラマと思って。
物を書くのは好きだったので、いつか書いてみたいなというのは中学生のころから思っていましたね。
そうなんですね。大学とかの進路も脚本家になるという前提でいろいろ進まれたんですか?
そうですね。
獨協大学の法学部なんですけど、法学部に行った方が刑事ドラマとか書く時とかに役に立つかなって。刑法のゼミにも入って、しっかり計算高く生きていました。
それは実際に生きたって事ですね。
刑事ドラマを書くときに生きましたね。やはり知識があったほうがいいので。
それと大学に行きながら、当時六本木にあった脚本家スクールに週2回、4年ぐらい通ってましたかね。
中学からある程度脚本家という道が見えていて、ほかの道に行きたいという事はなかったんですか?
やっぱりドラマずっと好きだったんです。小説書いてみようかなと思って、小説を書いたことはありますけど。
ドラマが好きだったので映像になるほうがいいなと。
脚本家って小説と大きな違いといえば、自分が書いた文字をまさに映像化することですよね。
役者が演じて映画になったりドラマになったりということが醍醐味ですか?
醍醐味ですね。自分の手を離れて自分の中で完結しない。そして客観的に自分の作品が見られるから、いいなと思いました。
初めて地上波になったのは「電車男」という作品でしたけれども、自分が書いた文字が映像化された時って覚えてますか。
覚えています。感動しましたね。
デビュー作も「翔んで埼玉」の武内監督だったんですよ。すごく面白く仕上げてくれて。 客観的に見ても、脚本よりも面白くなってるなとか。
あと、やっぱり(自分の名前の)テロップ出たときは一番うれしかったかな。
そうやって一本道を歩めた原動力というのは何だったんですか。
すごく楽観的なので。
まあ(脚本家に)なれるなという変な自信はすごくあったんですね。
ただもちろん食べられないのでデビューするまでと、デビューしてすぐは。
だから大学卒業したら社会人としてサラリーマンもして、勉強を続けてようやく28歳でデビューしました。
でも社会に出たことがやっぱり生きるじゃないですか、脚本って。
人材派遣の仕事をされていたんですね。
やはり人材派遣会社だといろんな会社見られるのかなと思って。
そこの入社試験の時に「脚本家になりたいんです」と言ったら、すごく応援してくれました。
食べられるようになるまではうちにいていいよって。
デビューするときはすごく有休使いまくって。
脚本家っていろんなこと知ってないと書けないですね。
つらい事も楽しいことも全部が生きるからいい職業だなって思いますけどね。
徳永さんは、ドラマや映画を書く時のルーティーンはありますか。
すごい朝型なんですよ。朝6時には仕事。直前に起きてすぐ仕事できるタイプなので、5時半すぎに起きて6時に音楽かけて、お昼食べて大体午後3時4時くらいまで仕事。ちょっと脳が疲れちゃうので。
そしたらもうやめてお酒飲んでごはん食べて9時くらいに寝ているかもしれない。
健康的ですね
健康的ですよ。
昔は、徹夜でとかやっていたんですけど、あるとき、このスタイルを続けていたら脚本家として長生きできないんじゃないかと思って。
朝のほうが圧倒的にさえるし。
集中力が半端ないんですよ。朝が一番集中できますね。
徳永さんが、朝、書いているというのは初めて知りました。
さて「翔んで埼玉」の続編がいよいよ公開されるわけですけれども、こちらはどんなお話になっているのでしょうか。
今回はやっぱり関西でやってくれという意見がたくさんあり、SNSでも多かったです。確かに関西もヒエラルキーあるよなと思って。
大阪が絶対的、京都があって滋賀があって和歌山、奈良って、あと兵庫、神戸とかね。
これいじったら面白いかもねと思ってまず取材に行ってみた。
やっぱり取材に行ったんですね。
何回も行ったんですけど面白いなと思って。
「翔んで埼玉」なのでもちろん埼玉らしさをしっかり残して、埼玉がヒーローになるような作りにしっかりとしています。
県民の日の盛り上がりぶりは、こちらの記事から
11月14日は、ご存じ埼玉県民の日ですけれども、ポスターが埼玉県民の日盛り上がってごめんなさいって。
スペシャルステージのイベントには、GACKTさんと二階堂さんが来て、埼玉県もしっかり翔んで埼玉にのっかっていますね。
これだけ全力で乗っかるところが埼玉ですよね。
寛容な県民性に終始感謝っていう部分ですよね。
見どころはどんなところですか。
やはりどこの地域でも、ヒエラルキーがあるんですね。関東より関西の方が結構えげつない。だから(映画も)2のほうがえげつないですね。
関西でいう埼玉ってどこなんだろうなってすごく悩みましたね。和歌山なの?奈良なの?とか(笑)
そこは取材して決めましたね。
あくまでファンタジーですよね(笑)
そうです。いたるところにファンタジーがあります。
あとリスペクトです。
最後に徳永さんの脚本家としての目標や意気込みなどもいただければなと思います。
やはり(ネットの)配信時代になって世界の人たちに見てもらえる機会ができてきているのでこれから配信ドラマとかもやっていきたい。
あと映画も、世界に向けてアジアに向けての作品を作ってきたいですね。今まで日本、日本でやって来たのでちょっと羽ばたいていきたいですね。
徳永さん埼玉に通っていた方で緑もしっかりありますから、これから埼玉の話をいろんなとこでしていただければと思います。貴重なお話ありがとうございました。