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留守電設定 その一押しが特殊詐欺の被害を防ぐ 越谷警察署

  • 2023年03月09日

あとを絶たない特殊詐欺の被害。警察は、家にいても留守番電話にするのが有効な対策としています。ボタン1つで手軽にできる一方、その一押しがなかなか定着しない現状が警察署の取り組みを通じて見えてきました。

(さいたま局記者/小野匠哉)

特殊詐欺被害 去年は約28億円

イメージ画像

身内や警察官、行政職員などになりすまし金をだましとる特殊詐欺。「還付金がある」とか「キャッシュカードを預かる必要がある」などと、ことば巧みにあなたを引き込もうとします。
次のやりとりは、埼玉県警がホームページで公開している実際にあった詐欺電話の内容です。

犯人

もしもし、私●●市役所健康保険課の●●と申します。●●様のご自宅でお間違いないでしょうか。

被害者

そうです。はい。

犯人

今年の4月ごろにこちらから●●様のご自宅に累積医療費のご案内と書かれた封筒をお送りしているのですが、封筒の中身は確認してもらえましたでしょうか。

被害者

すみません。もう一度お願いします。なんという書類ですか。

犯人

累積医療費のご案内ですね。

実際の音声は、次のURLで公開されています。(NHKのサイトを離れます)
 https://www.police.pref.saitama.lg.jp/c0010/kurashi/kanpuonsei.html

多くの場合、かわるがわる何人も登場し、一度電話に出てしまうとうそと気づくのは困難です。

埼玉県警本部

警察によりますと、埼玉県では去年、28億1000万円あまりの被害が出ました。新型コロナの影響で、被害額は減少傾向でしたが、この5年で最多となりました。被害者の9割が高齢者で、ほとんどが自宅への電話がきっかけでした。
街で話を聞いてみると、特殊詐欺とみられる不審な電話がかかってきたという人も少なくありませんでした。

以前に1回か2回かかってきたかしらね。どういうご用件でしょうかと言って、返事がない時はすぐに切っちゃうんです。

通帳とかカードとか書き換えしなくちゃいけないって。年寄りを狙ってくるのが多いよね。

最近、不審な電話も多くて。強盗もあるのでやっぱり怖いものね。すごく怖い。

「留守電」徹底で被害を防げ

こうした中、埼玉県警の越谷警察署は、被害の多い高齢者に重点を置き自宅の電話を留守番電話に設定するよう呼びかけています。

さらに、対策を徹底するため、去年から始めたのが「防犯診断プログラム」という取り組みです。プログラムに参加する高齢者には、1週間以内に警察から電話をすると予告します。そのうえで、抜き打ちで電話をかけ、留守番電話になっているかチェックします。

ところで、なぜ、留守番電話が有効なのでしょうか。留守番電話にしておけば電話がかかってきても自動音声が流れるため、相手と話す必要がありません。つまり、犯人との接触を断つことができるのです。また、犯人は録音を嫌うため撃退することもできます。

つい出てしまう人も・・・

「留守番電話に設定しください。
1週間以内に電話をします」

そう伝えられた高齢者は、警察の抜き打ちの電話に出るのか、出ないのか。警察署で取材しました。

警察官

(呼び出し中)

(留守番電話)「ただいま電話に出ることができません」

防犯診断プログラムの連絡です。適切に留守番電話に設定しているのでとても安心しました。

取材した日は、多くの人が留守番電話に設定し、電話に出ることはありませんでした。
しかし、中には。

(呼び出し中)

高齢女性

はい。

もしもし。
ご自宅の電話、留守番電話機能はついていると思うのですが。

高齢女性

ついていたけど、早く出ちゃったんです。
すみません。

このあと電話に出なければ留守番電話につながる感じですか。

高齢女性

はい。

この女性は、夫から「防犯診断プログラム」に参加したことを知らされていました。
留守番電話にも設定していましたが、自動音声が流れる前に出てしまいました。

留守番電話にしていなかった人もいました。

(呼び出し中)

高齢男性

もしもし。

私、越谷警察署生活安全課です。
留守番電話にしなかった理由は何かありますか。

高齢男性

いまのところ別にないですね。

ないけど、忘れちゃった形になりますか。

高齢男性

ええ。

ご在宅の場合も留守番電話を常に設定していただいて1回相手の名前ですとか用件を聞いてから必要があれば電話していただいた方が詐欺にあわなくなるので。

高齢男性

はい、わかりました。

越谷警察署が、去年4月からことし1月までに2047世帯に電話をかけた結果、半数以上の1126世帯が留守番電話にしていませんでした。また、留守番電話に設定していた921世帯のうち、途中で電話に出てしまったケースは128件にのぼりました。
電話に出てしまった主な理由は次のとおりでした。

自分は詐欺にあわないから
家にいるのに出ないのは気まずい
設定のしかたがわからない

粘り強く留守電設定呼びかけ

越谷警察署は、留守番電話にせずに出てしまった人には、改めて電話をかけ、チェックします。

繰り返し電話にでてしまった高齢者には警察官が直接会ってフォローもしています。

この日訪問を受けた80代の女性です。

以前、被害に遭いそうになった経験がありました。「返金するお金があるので係の者がキャッシュカードを回収に行く」と言われたといいます。女性は、電話の内容を信じてキャッシュカードをだまし取られてしまいそうになりましたが、家族に相談したら詐欺ではないかと気づき被害を免れました。

参加した女性
「相手は、次の者にかわりますとか、ちょっと状況を調べますとか、とても上手でしたね。電話に出なければよかった。そういまでも思います」

過去に苦い経験をしていても、「防犯診断プログラム」の電話につい出てしまったといいます。警察官は、留守番電話にするようお願いし、女性がボタンを押して設定したことを確認していました。

参加した女性
「警察の訪問で防犯意識が高まりました。留守電は留守の時に使っていましたが、これからは家にいるときでも留守電にして、電話も録音ができる防犯機能がついたものに交換したい」

越谷警察署は、留守番電話の対策が高齢者に浸透するよう、粘り強く呼びかけることにしています。

越谷警察署 丸山精一郎 副署長
「特殊詐欺の犯人は電話口から犯行をしてきます。電話についても、自宅に鍵をかけるように留守電でしっかりとロックをしてほしいと思います」

特殊詐欺の電話で相手に話してしまった情報が、強盗など他の事件に悪用されたケースもあります。自分は大丈夫と思わず改めて留守番電話になっているか、もう一押し確認してください。そして、不用意に電話に出ないことを徹底してください。

  • 小野 匠哉 

    さいたま放送局 記者 

    小野 匠哉 

    2015年入局 岐阜局、
    名古屋局を経て 
    現在はさいたま局で 
    主に事件・事故を担当

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