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逆境の町工場が作るアイデア雑貨 埼玉 川口市

  • 2023年02月06日

円安や原材料の高騰で、多くの町工場が苦しい状況におかれています。こうしたなか、話題となっているのが、町工場が中心となって開発したアイデア雑貨です。高い技術力とユニークな発想で逆境を乗り越えようと奮闘する町工場を取材しました。
(さいたま局/ディレクター 池端祐太郎)

ギフトに人気!町工場が作る金属雑貨!

金属雑貨専門店(東京 日本橋)

スマートフォンを挿すだけで音楽が楽しめる無電源のスピーカーや、一度回せば3分以上も回転し続ける精密なコマ。東京・日本橋にある金属雑貨の専門店では、他にはないユニークな商品が今、人気を集めています。

こうしたアイデア雑貨を作っているのは下請けの町工場です。スマホ用のスピーカーは、東京・千代田区の金属部品メーカーが精密な削り出し加工技術を活用して製作しました。創業35年にして初めての自社開発商品だそうです。また、精密コマは、 航空宇宙部品の製造を手掛ける神奈川県の金属加工メーカーが開発しました。

「町工場が“下町ロケット”さながらに、こだわり抜いた商品を続々に開発しています。どの商品にも技術やアイデアが詰まっていて、すごく人気です。」
(金属雑貨専門店 店長)

“町工場雑貨”の仕掛け人

町工場のオリジナル商品づくりが広がるきっかけをつくったのは川口市にある金属加工会社「栗原精機」の社長、栗原稔さんです。医療製品などに使われる部品を50年以上にわたり製造してきました。米粒より小さい部品を削るなど、金属の精密加工では世界に誇る高い技術を持っています。

金属加工会社社長 栗原稔さん

長年、日本のモノづくりを支えてきましたが、リーマンショックを境に状況が一変。一時は売り上げが7割も減るなどかつてない苦境に陥ったといいます。

「絶対にリストラはしないと決めていました。ピンチのまま終わるつもりはなかったので。それよりも辛い時期を乗り越えて再びチャンスが巡ってきたときに、社員に力を発揮してもらいたいと思っていました。」
(金属加工会社社長 栗原稔さん)

切れ味抜群のテープカッター

テープカッター

栗原さんが開発したのは金属製のテープカッターです。

航空機にも使われる軽くて強い金属のジュラルミンを丁寧に削り、部品を一切組み合わせることなく仕上げています。特に自慢なのが刃の部分。持ち前の技術を生かして半永久的に持続する切れ味を実現しました。

「長年、下請けだったので、自社製品が店頭に並んで、お客さんが買ってくれたときは感動しました。お客さんの反応に触れることで、社員のハートも熱くなり、会社全体が盛り上がっていくのをひしひしと感じました。」
(金属加工会社社長 栗原稔さん)

切れ味抜群の刃

テープカッターが予想以上の反響を呼んだことから、栗原さんは新たな取り組みに乗り出しました。全国の町工場に呼びかけて、自社商品の開発を支援したり、展示会や商談会といったイベントに共同で参加したりする「町工場プロダクツ」というグループを結成したのです。

自分の趣味を製品開発に応用

栗原さんの思いに共感して「町工場プロダクツ」に参加した一人が、埼玉県坂戸市で金属加工会社を経営する中川周三さんです。下請けとして自動車部品を製造していますが、コロナ禍や原材料の高騰などが経営に重くのしかかっていました。

中川さんが開発したのは昆虫のカマキリをモチーフにしたトング、“カマキリトング”です。子どものころ昆虫が大好きだった中川さん。カマキリが獲物を捕獲する姿がトングにぴったりだと感じ、商品化を決めました。

レーザー加工機やプレス機を自在に操り、金属をまるで折り紙のように加工する技術を活かして、カマキリ独特のフォルムを表現しています。

「私たちには長年培った技術というものがあります。アイデアさえあれば、どんな小さな会社でも商品を売ることができるんだなというのを実感しました。コロナの影響で以前よりは外食する機会が減っていると思うので、せめて自宅ではこのカマキリの力で笑顔になってほしいと思います。」
(金属加工会社社長 中川周三さん)

野菜をつかむと… まるで獲物を捕まえたかのよう!

商品を購入した人からは、トングのおかげで“子どもが野菜嫌いを克服できた”といううれしいメッセージも届くようになりました。中川さんはカマキリのほかに、ネコやイヌをモチーフにしたトングも開発しました。

手にカマキリのオブジェを乗せる中川周三さん

栗原さんの呼びかけで始まった「町工場プロダクツ」、今では100社以上の町工場が参加しています。缶メーカーが作った思い出の品を入れる保管箱や、スクールかばんを基に開発された頑丈な手提げバッグなどさまざまな“町工場雑貨”が生み出されました。

「これから町工場が生き残っていくためには、もっともっと横のつながりをつくっていくことが必要だと感じています。みんなで手をつないで大きなうねりをつくっていくことで、日本のモノづくり全体を盛り上げることができるのではと考えています。」
(金属加工会社社長 栗原稔さん)

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