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元なでしこリーグ選手 大嶋悠生さん「性の多様性に理解を」

  • 2022年11月24日

「埼玉発!スポーツで地域を元気に」と題して「首都圏ネットワーク」でさまざまなスポーツの話題を放送しました。
「スポーツ×多様性」をテーマにした回のゲストは、元なでしこリーグの女子サッカー選手だった大嶋悠生さん。引退後、戸籍の性別を男性へと変更し、トランスジェンダーの当事者として、性の多様性への理解を広げる活動をしています。

(取材:さいたま局記者 藤井美沙紀/首都圏局ディレクター 高瀬杏)
(聞き手:さいたま局 武田涼花/首都圏ネットワーク 井上裕貴 上原光紀)

大嶋悠生さん (35) 
埼玉県川口市出身で、女子サッカー・なでしこリーグのスフィーダ世田谷FCやバニーズ京都SCで、4シーズンにわたり選手として活躍しました。
27歳で引退し、手術を受け、戸籍の性別を変更しました。同じように元なでしこリーグ選手で、トランスジェンダー男性である2人のメンバーとともに、YouTuberや講演などの活動を通じて、性の多様性への理解を広げる活動をしています。去年の東京パラリンピックでは、埼玉県で聖火リレーのランナーを務めました。

女子サッカーと性の多様性

武田

大嶋さんは小学生のころからご自身の性に違和感があったそうですが、なでしこリーグの選手としてプレーするなかで、困ることはありましたか。

正直にいって、なでしこリーグの選手としては困ることは、そこまでなかったです。女子サッカーの環境がすごくジェンダーに寛容で、その人らしさや、選手としてのサッカーとの向き合い方、それにどういった選手なのかというのを尊重してくれたので、過ごしづらさを感じることはなかったです。

ジェンダーの多様性も、あくまでそれぞれの個性ということで、皆さんが受け入れていたということなんですね。

性の多様性 女子サッカー界では…
女子サッカー界には、「メンズ」という言葉があります。性的指向(好きになる性)が女性であったり、性別表現(表現する性)が男性寄りであったりと、男性的な要素を表す言葉だそうです。
大嶋さんは「どういう人がメンズということが決まっているわけではなく、本当にざっくりした定義しかない」けれど、「そういったカテゴリーがあるからこそ、チームにいていいという安心感がある」と話しています。女子サッカーの世界では、性の多様性が受け入れられやすい環境があるということです。

トランスジェンダーを公表して

大嶋さんは27歳で引退され、手術を経て、戸籍も男性に変更されました。 
それまでの女子サッカーの世界とのギャップや違いはありましたか。

すごくありましたね。治療しながら就職活動をしていたんですが、トランスジェンダーだからという理由で内定を取り消されたこともあり、それが一番驚きました。

一般企業で内定を取り消されることもあったんですね。
ただ、その経験が、実は今現在の活動にも生きていると聞きました。

そうですね。今は、「ミュータントウェーブ」というYouTuberのグループとして、ジェンダー教育だったり、企業講演、イベント登壇というのをさせていただいています。

ご自身の経験があったからこそ、もっとみなさんに知ってほしいと思ったわけなんですね。

子どもたちに気づきや安心を

10月、大嶋さんたちは千葉県流山市の小学校で6年生を対象に講演を行いました。
ジェンダーやLGBTについて話したあと、大嶋さんたちは子どもたちにクイズを出しました。
『僕たちはLGBTのどこにいるでしょうか?』

3人ともトランスジェンダーの男性であること、そして元なでしこリーグの女子サッカー選手だったことを伝えると、子どもたちは驚いていました。

「性的マイノリティ-の人が自分たちの周りにもいるかもしれないので、サポートできるようにしたい」

「悩んでいる人がいたら『どうしたの?』と声をかけて不安を取ってあげたい」

上原

講演を終えたあと、子どもたちの声をきいてどうですか。

助けてあげたいといってくれる友達がたくさんいると、めちゃくちゃ安心になると思いました。

井上

小中学校でのジェンダー教育、どうしてそこに力を入れているんですか。

私自身がトランスジェンダーと気づいたのが、中学校から高校生くらいで、ちょっと遅かったんです。なので、当事者の子どもたちに気付くきっかけだったりとか、安心してもらえるようになればと思ったのが活動のきっかけになります。

小学1年生の大嶋さん

小学1年生の時の大嶋さんです。当時から自分の性に違和感を持っていて、「浴衣も青色を選んで、俗にいう『女の子の色』を避けていた」といいます。
思春期に体の成長に悩み、インターネットで調べるうちにトランスジェンダーの存在を知ったそうです。
大嶋さんは「周りに同じような人が見つからず、自分が何者か、悩んでいる子どもたちが多い。YouTuberなら身近だし、ロールモデルにもなれるのでは」と考えています。講演を聞いたあと「実は自分もトランスジェンダーだ」と打ち明けてくれる子どももいるそうです。

“一人一人違って当たり前”知るきっかけに

教科書に載っていない部分では、どういうメッセージを皆さんに伝えているんですか。

そもそもLGBTも知ってもらいたいんですけど、一人一人違って当たり前だよねという、当たり前だからこそ見落とされてしまう部分に気付いてもらいたいなということです。
ミュータントウェーブのメンバー全員が、男性としての生活、女性としての生活、アスリートとしての生活という多様な経験をしているので、そこから感じたことが、皆さんのきっかけだったりとか、知るきっかけにつながればと思って活動しています。

確実に広がり始めているのではないかと感じます。ありがとうございました。

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