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パーキンソン病の男性「音楽で希望届けたい」3年ぶりステージ

  • 2022年10月06日

埼玉県所沢市に、体の自由が徐々に奪われる難病のパーキンソン病と闘いながらバンドを組んで活動している男性がいます。新型コロナの影響で活動できない時期もありましたが、同じ病気の人たちに希望を持ってほしいと、3年ぶりのコンサートに臨みました。

パーキンソン病でも大好きなギターを

所沢市役所の職員、岩田誠さん(54)は6年前、国が指定する難病で、手足が震えたり、体の動作が思うようにできなくなる「パーキンソン病」と診断されました。

岩田誠さん
「11年あまり前から、体調や歩き方に異変を感じて、いろいろな病院に診てもらいましたが、なかなかよくならないということが続いていました。まさかパーキンソン病だとは思わなかったので、聞いた時も、いまいちピントきませんでした。ことの重大さがじわじわと広がってきて、泥の底に沈んでいくような恐ろしさがありました」

2006年頃撮影 (画像提供 岩田誠さん)

中学生時代にロックに憧れた岩田さんは、20代の時に仲間と組んだバンドでギターとボーカルを担当しました。都内のライブハウスや地元の音楽イベントなどでブルースやロックの演奏を披露してきました。 
病気の進行で歩くのにつえが必要になり、指も思うように動かせなくなってくる中でも、家族や友人たちに応援してもらいながら、大好きなギターを弾き続けてきました。

コロナ禍で活動できず 音楽仲間からの救いの声

しかし、新型コロナの影響で遠方に住むメンバーが集まれなくなり、岩田さん自身も気持ちが落ち込んで、一時、音楽から離れてしまいました。

そんな岩田さんを心配して声をかけてくれたのが、音楽仲間の鈴木康雄さんでした。
鈴木さんは、病気と闘いながら音楽に打ち込む岩田さんの姿を見て、勇気づけられてきました。
岩田さんがSNSでつらい心境をつづっていたのを、鈴木さんは「助けを求めている」と感じて、岩田さんの職場まで出向いて声をかけました。

鈴木康雄さん

もしコロナで活動できていなかったら一緒にやらないかと声をかけました。岩田さんの生きがいや、生活の楽しみになったらいいなという思いでした。

岩田誠さん

『元気にしてる?一緒にやろうよ』と声をかけられ、実際にバンドのメンバーを用意して待っててくれてうれしかった。

再び音楽を励みに3年ぶりのステージへ

これをきっかけに去年7月に新たなバンドを結成しました。所沢市内のライブハウスに集まって演奏を再開するようになると、岩田さんは再び生きがいを見いだし、ストレッチや体操などのリハビリにも、以前よりも前向きに取り組めるようになりました。

そうした中、鈴木さんは9月23日に地元で開かれる音楽イベント「SORAコンサート」への出演を持ちかけます。岩田さんは「同じパーキンソン病の患者に希望を持ってもらいたい」と、3年ぶりにステージに立つことを決意しました。

コンサートの本番直前、緊張を和らげようと、鈴木さんは岩田さんに声をかけました。

鈴木康雄さん
「岩田さんが全部やるっていうので、きょうがあるのさ。全部、岩田さんが選択してきたんだよ。きょうは思いっきりやりましょう」

岩田誠さん
「あの時、自分が一番苦しい時に声をかけてもらった、あのひとことは忘れられない。楽しみましょう」

2人は、がっちりと握手したあとステージにあがりました。

「まだまだいける」希望と感動をもたらした演奏

岩田誠さん
「この場に立てるなんて思いもしませんでした。すべての方に感謝します」

バンドの名前は「Parking&Sons」。
パーキンソン病のことをもっと知ってほしいという願いを込めました。

ルイ・アームストロングの代表曲「この素晴らしき世界」や、「ブルースの王様」と言われたB・Bキングの「ザ・スリル・イズ・ゴーン」など4曲を演奏しました。

岩田さんは最後までステージに立ち続け、力強い歌声と、鈴木さんとの息の合った演奏を披露しました。

客席からは「岩田さん、最高」と声援が送られていました。

パーキンソン病を患う60代の男性
「岩田さんの歌声を初めて聞きましたが、あんなに迫力があるとは思いませんでした。大変な努力をしたと思います。聞くことができて本当によかったです。希望になります」

男性の20代の娘
「パーキンソン病だとは、信じられないぐらいの声量とギターの技術があり、ただただ感動しました。パーキンソン病患者の家族としても希望になります」

鈴木康雄さん
「ステージ上の岩田さんの姿がすごく生き生きとしていて、最高の笑顔が見られたので、うれしいですし、誘ってよかったと思いました。終わったあと岩田さんの目が涙で赤くなっていて、私も涙が出てきそうでした」

岩田誠さん
「なんとかやり終えて、ひと安心しました。こんなすばらしいコンサートができるとは思いませんでした。もうだめかなと思った時期もありましたが、いまこうして『まだまだいけるんだ』と思える時が来たのがうれしいです。これからも私を支えてくれるすべての人に感謝し、音楽活動を続けていきたい」


 

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