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故郷を離れた人々の支えに “ベトナム語専門の本屋” 坂戸市

  • 2022年10月07日

ベトナム料理店や食材店などが立ち並び、多くのベトナム人が暮らす埼玉県坂戸市。去年、この町にベトナム語専門の本屋がオープンしました。日本にやってきたベトナムの人々は、いま、どんな思いで暮らしているのか。1軒の本屋を通し、在留外国人のいまを伝えます。

(さいたま局/ディレクター 池端祐太郎)

全国から注文殺到! コロナ禍の救いに

東武東上線の北坂戸駅前に去年オープンしたベトナム語書籍の専門店「Macaw Bookstore(マカオ ブックストア)」。子供向けの絵本から日本の人気作家の作品まで、扱っている本は2万冊に上ります。

ベトナム語の書籍

店を営むのは、ハノイ出身のゴ ゴック カンさんです。7年前、留学をきっかけに来日しました。慣れない日本での生活のなか、寂しさを忘れさせてくれたのが趣味の読書でした。多いときには週に3、4冊読んでいたといいます。

「自分と同じように、本を読むことで救われる人がいるならば」と本屋を開業。日本に住むベトナム人の要望や悩みを親身に聞いて、おすすめの本を提案しています。

日本に来たばかりのベトナム人は、みんな何かしら不安や悩みを抱えて生活しています。私のお店で売っている本を読むことで、日々の生活の中で困っていることを解決するヒントをお客さんが見つけることができたら、うれしいです。

(店主 ゴ ゴック カンさん)

コロナ禍での開業となり不安な面もありましたが、ステイホームを余儀なくされたベトナム人などからの注文が全国から集まりました。最近では、ベトナム人の技能実習生が働く企業が職場環境を充実させるために購入するケースも増えているといいます。

店主・ハノイ出身のゴ ゴック カンさん

本を読むことが日本で生きていくヒントに

店に通い、日本で生活するヒントを見つけた人がいます。グエン ティエン クオンさんです。日本での成功を夢見て来日し、3年前、埼玉県内の企業に就職しました。しかし、コロナの影響で家族に会えない孤独な日々が続き、日本で頑張り続ける意味を見失った時期もあったといいます。

そんなときに道標となったのが、いつも優しく励ましてくれたカンさんが紹介してくれた母国語の本でした。SNSで話題のベトナム人起業家が書いた90日で幸せを掴むための本です。

“よく考えて 感情をコントロールして 心穏やかで意味のある人生を送りましょう。”

本に書かれていたこの言葉が、クオンさんの心に響きました。

自分にとって“意味がある人生”というのは、この先も日本で働き、成功することだと気づきました。両親はいつも自分の成功を応援してくれていたので、まずは自分が成長した姿を見せることが幸せだと思いました。

(グエン ティエン クオンさん)

常連客のグエン ティエン クオンさん(左)とカンさん(右)

カンさんの思いに共感し、本屋の手伝いを始めた人もいます。カンさんの友人のド ゴック アインさんです。日本語学校に通いながら週に1度、おすすめの本を紹介するライブ配信を行なっています。

日本に住むベトナム人にも読書を好きになってほしいという思いで始めた配信でしたが、回を重ねていくにつれ、自身の喜びにもつながっていることに気づきました。

元々、人前で話すことが得意ではなかったけど、自分の好きな本について話して、みんなに共感してもらうことことが楽しいと思えてきました。ライブ配信がきっかけで、店に来てくれるお客さんも多いので、この場所でたくさんの人と繋がれることに喜びを感じています。

(ド ゴック アインさん)

ライブ配信で本を紹介するアインさん

“小さな図書館”なで夢見る“多文化共生社会”

カンさんが始めた新しい取り組みがあります。誰もが無料で自由に本を交換しあう小さな図書館です。読み終わった本を1冊ポストに入れると、代わりに本を1冊無料で持っていくことができます。ポストには、ベトナム語だけでなく、日本語や英語、フランス語の本も入っています。

交換している人同士が顔を知らなくても、同じ本を読むことで繋がることができるということが素敵だと感じています。この場所をベトナム人だけでなく、さまざまな国の人が交流できる場所にしていきたいです。

(店主 ゴ ゴック カンさん)

本を交換しあえる“小さな図書館”
  • 株式会社 BASE FOR GOOD LIFEディレクター

    池端祐太郎

    2017年からさいたま局。埼玉県出身。土地勘をいかして、埼玉県全域を熱心に取材。

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