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川口市芝園団地「外国人団地」で暮らして見えてきた共生のコツ

  • 2022年09月05日

日本に在留する外国の人たちは去年末の時点でおよそ276万人。新型コロナウイルスの影響で2年続けて減少しています。 一方で埼玉県内では逆に増加。中でも川口市は外国人住民がおよそ3万9000人と全国の市区町村で最多です。 
日本人も、外国人も、心豊かに楽しく「共生」していくコツとは?
川口市でも特に多くの外国人が暮らす芝園団地で、自治会事務局長を務める岡崎広樹さんに、保坂友美子キャスターが伺いました。

岡崎 広樹さん (撮影:浅野剛)

住民の半分以上が外国人 川口市の芝園団地

芝園団地は「外国人団地」ともいわれるそうですが、どのくらいの方が住んでいるんですか。

芝園団地のある芝園町は、人口がおよそ4700人で、そのうちおよそ2600人が外国人の方です。 これは人口の実に55%が外国人の方になっていまして、その国籍は中国人の方々が大多数になっています。

結構多いですよね。 岡崎さんはどのようなきっかけで芝園団地に住み始めたんですか。 

もともと商社マンとして海外で働いていた経験から外国人の方との共生に関心を持っていました。 そうしたなかで芝園団地の存在を知って、2014年から住み始めて2017年から今の自治会の事務局長を務めます。 

「見知らぬ隣人」にしないために

暮らし始めて8年。外国人が多く暮らす団地ということで特別な苦労もあったと思います。 事務局長として大切にしていることは何でしょうか。 

おっしゃるとおり確かに外国人の方の多い団地でありますが、まずは外国人というのを抜きにして考える必要があると思います。 そもそもなんですが、保坂さんは現在のお住まいで隣近所の人と頻繁に交流されていますでしょうか。 

今では少なくなりましたね。 

ですよね。つまり現在の都会の暮らしは日本人同士であってもなかなか隣近所と交流しない、もしくは交流しにくい状況になっていると思うんですね。 
そこで大切なのは、外国人の方を含めた隣近所の住民たちが、「見知らぬ隣人」とか「迷惑な隣人」にならないよう気にかけていくことだと思います。 
芝園団地の場合は、高齢の日本人の方と若い外国人の方が同じ場所に住んでいるんですね。 子育てを通じて知り合わない。日常の生活時間帯が異なる。
つまり隣に住んでいても互いの交流がないまま、見知らぬ隣人になりやすい状況があったわけです。

高齢の日本人と若い外国人の間に懸け橋を

確かに高齢者と若者では交流がそもそも生まれにくいですし、言葉の壁もあるとなおさらですよね。 どういう風に距離を縮めていったんですか。 

まず、高齢の日本人の方と若い外国人の方との間に交流を生み出すにはどうしたらいいかと考えた末、近くの大学の学生たち、つまり日本人の若者に、日本人の高齢者の方と若者の外国人の方の懸け橋になってもらおうと、ボランティアを探しました。 
それで「芝園かけはしプロジェクト」という学生ボランティア団体が立ち上がったんです。その団体が初めて企画したイベントが、団地に置かれた机とベンチに日本人の住民の方と中国人の住民の方が手形をペンキでつけるというものだったんです。 

落書きだらけだった机とベンチが
交流のシンボルに

この机とベンチにはもともと中国人の方へのひぼう中傷が書かれていました。 
そこで、カラフルなペンキで住民の手形をつけて日中の住民の交流のシンボルをつくろうというアイデアを、学生たちが出してくれたわけです。
その後も、日本人の方と外国人の方が地域イベントを一緒に企画する多文化交流クラブなども開かれるようになりまして、中国人の方からも今では自治会の役員になる人が出るようになりました。

コロナ禍での風評被害 交流の制約も

2年ほどは新型コロナで人と人との交流にも制約があったと思います。 
住民生活や自治会の活動にどんな影響を与えていますか。 

中国の方が多く暮らす団地という事で、コロナ禍であらぬ風評被害を受けることもあったのは事実です。 
例えばなんですけど、新型コロナが流行し始めた2020年の2月ごろ「芝園団地で感染者が出ているらしい」というデマがSNS上で流れたんです。調べたところ、ネットのニュースサイトで埼玉県在住の男性がコロナに感染したという記事の中に、芝園団地で消毒の安全対策を行っているという別の記事の見出しだけが差し込まれているものがあったんです。それで多分、芝園団地から出てしまったという誤解が起きてしまったんです。 
現在はコロナの流行状況を勘案してイベントは中止していますが、少しでも外国人住民について知っていただく機会を作ろうということで、自治会が発行している広報紙で外国人役員の方の人柄を紹介するなど小さな工夫を続けてきています。

生活や文化の違い伝える「芝園ガイド」

「芝園ガイド」(芝園かけはしプロジェクト作成)

お互いを知ることが大事ですね。 

日本と母国の違いがあるというのも事実なんですよね。 
最初のころは、ごみの出し方などの母国と日本の生活面での違いから外国人の方が迷惑な隣人だなと認識されるケースがあったのも事実です。この場合も大切なのは、日本と母国の違いを伝える機会を確保することだと思います。
例えばですけれども、芝園団地では中国人の入居者の方が住居の鍵を受け取る際に「芝園ガイド」という冊子を手渡して中国語と簡単なイラストで団地での生活や文化の違いを伝えるようにしました。

「芝園ガイド」より

冊子には住居のフローリングなどの床が中国と比べると薄く音が響きやすいことなどが書かれています。 今では昔から住んでいる日本人住民の方が「昔と比べれば、だいぶ住環境良くなったね」というぐらいの状況になっています。
こうした小さな足元からの取り組みが重なった結果として今の芝園団地があると考えます。 

取材した藤井美沙紀記者からひと言

海外からの人たちが日本に定住して活躍していくことは、日本経済や地域の活性化にもつながると思います。 芝園団地の取り組みが、今後外国人の受け入れが進む他の地域でも参考になればと思います。 

 

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