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過疎の町を盛り上げる“おがの発・大人の学校” 埼玉 小鹿野町

  • 2022年7月26日
「おがの発・大人の学校」参加者のみなさん

四方を秩父山地に囲まれた埼玉県小鹿野町。前回の国勢調査で人口減少率が県内で最も高かった過疎の町です。この町で去年、開校したのが“おがの発・大人の学校”。地域住民が教え、学び合うことで、町を盛り上げる起爆剤となっています。

(さいたま局/ディレクター 池端祐太郎)

“ユニークな仕組み”で町が元気に

“おがの発・大人の学校”の最大の特徴は、教える側も学ぶ側も地域住民が中心であることです。上下関係がないフラットな関係性を目指すため、プロの講師ではなく、住民1人1人が得意なことをシェアするのが大人の学校のスタイルです。

授業をつくるのも、住民の思いから始まります。例えば、「地域に絵が好きな人が増えてほしい」、「運動するきっかけがない」、「外国人に道を聞かれて困った」という困りごとや希望を“大人の学校”が受け止めて、授業やイベントといった具体的な形にし、住民同士のつながりを生み出す「場」を提供しています。

これまでに開かれた授業は、50人の歌声を響かせることを目指す「歌声ひびけ、おがのプロジェクト」や、自分の人生を変えた本について語り合う「恋する読書サークル」、ほかにも、町の困りごとや未来について語り合う対話活動や絵画教室まで多種多様です。去年は、20代から70代まで、総勢120人以上が集い、秩父地域を中心に盛り上がりをみせています。

左上:混ざり合う対話の時間 右上:恋する読書サークル
左下:歌声ひびけ、おがのプロジェクト 右下:夢見る絵画

モデルは北欧流“誰もが主役になれる学校”

“おがの発・大人の学校”の代表を務めるのは小鹿野町の地域おこし協力隊、宇佐川拓郎さん(31歳)です。前職は小学校の教員でしたが、日本の教育に疑問を感じて退職。教育のあり方を探そうとデンマークへ留学したときに出会った“フォルケホイスコーレ”という教育機関に感銘を受けました。

“フォルケホイスコーレ”とは、高校卒業後に自分が進む道に迷っている人や仕事に行き詰まって悩んでいる人などが、みずからの人生を見つめ直すことができる学校です。大人たちが互いに学び合い、生き生きしていく様子に感銘を受け、日本でも同じように大人が互いに学べる場をつくりたいと思い、“大人の学校”を構想しました。
(宇佐川拓郎さん)

そんな宇佐川さんの思いに共鳴した人がいます。副代表の新井佑香さん(29歳)です。10代の頃は生まれ育った小鹿野町のことを好きになれずに上京し故郷を離れました。しかし、Uターンで戻ってきたとき、これまでは気づかなかった町の良さを感じ、宇佐川さんと共に“大人の学校”を立ち上げました。

近所のおじさん、おばさんとの些細な会話で得られる知識が、非常に貴重なものだと気づきました。そんな地域住民に焦点をあて、地域に暮らしている人が生き生き暮らすことが町の元気につながるのではないかと思い、“大人の学校”で一緒に活動を始めました。
(新井佑香さん)

代表の宇佐川拓郎さん(右) 副代表の新井佑香さん(左)

教え・学ぶことで変わり始める地域の人々

絵画の授業の講師、新井金雄さん(61歳)は参加者から“おっさん”の愛称で親しまれています。本業では造園の仕事をしていますが、学生時代に美術部だった経験を生かし、講師を引き受けました。9年前に妻が他界した新井さん。以来、趣味の絵を描くことで気持ちを慰めてきましたが、大人の学校での人とのつながりが、新たな生きがいとなっています。

教えることで生きる価値が1つできました。みんなから必要とされる存在になっているので、うれしい。いつの間にか、なくてはならない居場所になっています。
(新井金雄さん)

大人の学校に参加することで、人生に彩りを見つけた人もいます。水村清夏さん(40歳)です。豆腐店を営む夫と結婚し、7年前に町外から移り住みました。忙しい毎日のなか、何か新しいことを始めたいと思っていたとき、SNSで“大人の学校”を知り、絵画の授業に参加しました。講師の新井さんやほかの参加者から刺激を受け、絵を描く楽しさに気づいた水村さん。仕事の合間に、お店の庭に咲く草花を描き始めました。

自分の暮らしがより彩りのあるものになりますね。今はまだ小さな一歩だけど、大きな変化につながっていく予感がしてワクワクします。今度、授業があるときに、みんなにこの絵を見てもらいたいです。
(水村清夏さん)

庭で絵を描く水村さん

“大人の学校”では、ことし10月、授業の参加者がこれまでの成果を披露する“アウトプットデイ”という文化祭のようなイベントを開く予定です。

「小鹿野で生き生きと暮らす人が増えることで、“大人の学校”が全国に広がってほしい」
宇佐川さんはそう考えています。

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