新型コロナウイルスの影響で開幕から2試合が不戦敗となったものの、その後、9連勝と第11節が終わった時点でプレーオフ圏内の3位につけている埼玉パナソニックワイルドナイツ。好調の要因について、キャプテンの坂手淳史選手に泉浩司アナウンサーがうかがいました。
チームの結果が出ている要因をどう捉えていますか。
ゲームのなかで、選手全員がやるべきことをやっている結果だと思っています。試合が始まる前の1週間の準備でも、全員が自分の役割を果たそうと必死に頑張っているので、こうした点はすごく自信になっています。
逆転勝ちや1点差勝ちなど競った試合に強い印象ですね。
前半から出場しているメンバーも、後半から出場したメンバーも、しっかりと試合の状況を判断しながら、焦らずにゲームを進めることができていると思っています。前節の静岡ブルーレヴズ戦も1点差の勝利だったんですが、最後まであまり焦らずにゲームを進めることができたかなと思っています。
ディビジョンワンの12チーム中で失点が2番目に少ないんですが、ディフェンスについてはいかがでしょうか。
堅守速攻はワイルドナイツが昔から大切にしているところなので、そこが強みになっているのはうれしいですね。よいディフェンスをして、相手のボールを奪って、一気に点に結びつけるのが、ワイルドナイツのスタイルだと思います。
ディフェンスが強いチームなのに、反則が少ないんですよね。
もちろん、失点に結び付いてしまうこともあるんですが、反則をとられてペナルティゴールになると、仮に失点をしなくても相手に勢いを与えてしまうので、練習でも反則を取られないことは常に意識していますね。
坂手さんのポジションはフッカーですけれども、スクラムを組んだときにボールを足でかき出す役割ですよね。
スクラムの中でぐしゃぐしゃになりながらボールを出しています。
スタジアムでは一番見えづらいポジションだと思うんですが、フッカーの魅力はなんですか。
スクラムの一番前の真ん中ということで、左右の選手、ワイルドナイツで言うと稲垣選手や平野選手なんですが、左右の選手をコントロールしながらスクラムを前に動かすのがフッカーの仕事なので、スタジアムからはなかなか見えづらいかもしれないんですが、スクラムが押していたら、フッカーのおかげだと思っていただけたらと思います。
そういう話を聞くと、スクラムを見るのも楽しいでしょうね。
チームで試合の録画を見るときにも、バックスの選手はスクラムが始まると早送りをするんですよ。でも、“ちょっと待て、僕らはそこが見たい”と言うくらい、バックスの選手とスクラムに関しては温度差があるので、ファンの方にもスクラムの魅力をぜひ知ってもらえたら嬉しいですね。
中学からラグビーを始めたそうですが、きっかけは何たっだんですか。
小学校のときはバレーボールをしていたんですが、地元の中学校にバレーボール部がなかったんです。たまたま幼馴染のお兄さんがラグビーをしていたので、“ラグビーをしてみたら”と言われたのがきっかけです。
聞くところによると、ご両親が実業団バレーをやっていたということで、バレーボール一家だそうですね。バレーボールでは、ポジションはどこだったんですか。
小学校のときは、チームの中では身長が高かったので、アタッカーをやっていました。
ラグビーをやってみて、どんな印象でしたか。
ラグビーを始めて、相手に当たっていいんだというのが、最初に感じたことです。バレーボールはコートを挟んでプレーするので相手に当たれないですし、ネットにすら当たってはだめなんで、こんなに相手に当たっていいんだという喜びがあったと思います。
接触プレーに適性があったんですね。
そうですね。体もちょっと大きかったので、そのあたりは、すんなり入れたと思います。
高校は京都成章で、3年生のときの花園出場を果たしています。夢の全国の舞台はどうだったですか。
楽しかったですね。 高校3年生のときにキャプテンとして出場して、同点で、抽選で試合に負けるという珍しい経験をしたんですが、そのときは悲しかったですし、私が抽選によってチームを負けさせてしまったという思いもあって、申し訳ないと感じていたんですが、今となっては懐かしい思い出です。高校のチームメートと会うときは、その話が盛り上がったりするので、それはそれでよかったと思っています。
京都成章高校のラグビー部でキャプテン、その後、帝京大学でもキャプテン、今もワイルドナイツのキャプテンということで、思い返してみて、チームをまとめるうえでご苦労はありましたか。
そのときそのときには、たくさん考えることがありましたし、苦労をしたこともあったんですが、結局、ラグビーをやっていることが楽しい、みんなでプレーをすることが楽しいということがメインになってくるので、今、思い返してみても、“しんどかった”というのは、そのときだけですね。
帝京大学卒業後、2016年にワイルドナイツに加入しました。ことし7年目ということになりますが、この間、ワールドカップが開催されました。 あの熱狂を選手としてどう振り返りますか。
夢みたいでした。 スタジアムが満員で、みんなが歌を歌って、ビールを飲んでいる人もいて、音楽もガンガン鳴って、そのなかで試合をするというのは、本当に夢みたいでした。
私自身、高校のときにワールドカップに出場するという目標を掲げてラグビーをしていたので、その目標がかなった瞬間だということと、みんなが一体となって大会が運営されていたということは、すごくうれしかったですね。
本拠地を熊谷に移して初めてのシーズンですが、地元の盛り上がりをどう感じていますか。
クラブハウスが試合をする熊谷ラグビー場のすぐ横にあるんですが、試合に出るメンバーは当日、歩いてグラウンドに入るんですね。今はコロナの影響もあって柵で区切られているんですが、たくさんのファンが応援してくれているなか、グラウンドに入るのは今までなかったことなので、ホームで試合をするということをすごく感じています。
ファンからはどんな声がありますか。
今はあまり声が出せないんですが、やはり拍手をしてくれたり、選手の名前の書いた団扇を用意してくれてたりするファンがたくさんいるので、大きな力になりますし、チームにはイングランドやウェールズ代表の選手もいるんですが、選手の国旗を掲げてくれているファンもいるので、選手としては本当にうれしい気持ちでゲームに臨めています。
リスナー、そして、ファンの皆さんにメッセージはありますでしょうか。
最初の2試合はよいスタートが切れなかったんですが、ここからさらによいラグビーをして、みなさんに楽しんでいただけるようなラグビーを見せたいと思っています。優勝まで突っ走っていきたいと思いますので、これからも応援をよろしくお願いいたします。
スクラムの最前線で身体を酷使する坂出選手、首や背中を痛めやすいため、特注の枕とマットレスを愛用していて、遠征先にも持参しているそうです。「身体のケアが大事なので、商売道具みたいなものですね」と話してくれました。
記事の内容はさいたま放送局のFM番組「ひるどき!さいたま~ず」で放送しました。(4/6)