さいたま新都心駅の近くに開発されたばかりのシントシティ。約1400世帯、3000人以上が暮らす大規模マンションです。このマンションでは、住民どうしのつながりを深め、大地震などの災害に備えるため、大学のキャンパスのような学びの場をつくりました。シントシティ自治会の自治会長の菊池美範さんに岸田祥子キャスターがうかがいました。
早速ですが、マンション内にキャンパスとは、どういうことなんですか。
マンションの住民にさまざまなことを学んでもらおうと、マンションをキャンパスに見立てて、さまざまな講座を開催しています。「暮らし」、「学び」、「体験」、「もしも」という4つの学部で構成されていて、子どもから大人まで世代を越えて参加することができるプログラムを定期的に開講しています。
例えば、どんなプログラムが開催されているんですか。
それぞれの学部で実施するワークショップのプログラムは、専門のサポート会社から提供を受けて、オープンキャンパスやワンデイカレッジといった形で実施しています。ヨガや料理といったママ向けの講座や、子ども向けではプログラミングが学べるものがあります。キャンパスは自治会が主催するんですが、マンション開発したディベロッパーや管理会社の協賛をいただいています。
どんな思いでキャンパスを運営しているんですか。
シントシティはもともと住宅地ではなかった場所を、新たな町として開発したので、近隣の方だけではなく、埼玉県外から引っ越してきた方も多くいらっしゃいます。まちづくりはゼロからスタートするわけですが、「隣は何をする人ぞ」という意識ではなくて、日常から緩くつながるということがすごく大切だと思っています。
1つのマンション群が1つの自治体として成り立っているので、誰でもどんな世代でも気軽に参加できる、そして、それが継続できることを自治会として目指しています。
なかでも防災には力を入れているということなんですが、どんなことをしてきたんですか。
去年10月には、防災フェスタという災害に備えるイベントをオンライン形式で実施しました。自治会の方であれば誰でも参加できるワークショップや座談会なども開催しました。
防災意識を高めるために具体的にどんなことをしましたか。
災害時には、水や食料だけではなくて、トイレの問題も意識しなければならないんですね。マンホールトイレの使い方や組み立て方は、実は私もイベントで初めて知ったんです。大地震でマンションのトイレが使えなくなったときには、非常用の緊急トイレ袋は絶対必要だということは知ってもらえたと思っています。
また、災害への心構えのために、みんなで楽しみながら防災意識を高めることも目指しました。子どもたちも参加できる防災クイズをオンラインで配信したり、マンション内の防災倉庫をサッカーチームのキャラクターが案内する防災動画を制作して見てもらったりしました。
参加された皆さんの反応はいかがでした。
参加された方々の評判はおおむねよかったですね。防災意識を高めるきっかけになったので、今後も定期的に続けていく予定です。
これからやっていきたいことはありますか。
今年度は当初、計画していたことがコロナで実施できませんでした。 オンラインのイベントは皆さんが知恵を絞って楽しいものになったんですが、感染状況が改善されれば、来年度は、実際にみんなが集まることができるイベントやワークショップを増やすことを計画しています。
例えば、みんなで植物を育てるガーデンクラブだとか、住民どうしのフリーマーケット、 それから、この3月にマンション内の図書館がオープンしたんですが、図書館を利用した絵本の読み聞かせなども実現できたらいいなと思っています。
最後に今後、どういう自治会にしていきたいですか。
先日も東北地方で大きな地震による被害がありましたが、マンションのような集合住宅では基本的に在宅避難になるので、住民は避難所に入ることができないんです。ですから、マンション内での助け合いがすごく必要になります。
まずは入居されている方々によい関係を緩くつなぐ自治会にしたいと思ってます。気持ちのいい距離感という感じですね。ふだんはあまり見かけなかったりする住民の方どうしがキャンパスのイベントやワークショップで触れ合って、災害のときにはみんなで協力して、誰も取り残さないー、そんな自治会になるといいなと思っています。
マンションに住民誰もが参加できる学びの場をつくるという発想が面白いですよね。ふだんからマンションの住民がつながっていれば、災害のときにも助け合うことができますし、これからのまちづくりのモデルケースになるのではないかと感じました。