ことし2月に開催された、会社の魅力などを歌う「社歌」のコンテスト。埼玉県入間市の「市民の歌」が3位となりました。制作したのは地元出身の作詞・作曲家。今では幅広い世代に親しまれているこの歌に込められた思いを取材しました。
社歌コンテストは企業だけでなく、大学や自治体、それに商店街などの応募も可能で、社員らが社歌にあわせて踊ったり、歌ったりしている姿の動画が審査の対象です。
入間市が出品した動画はアップテンポなリズムにアレンジした歌にあわせて、市内の中学校や茶畑などで、子どもたちや商店街の人たちなど200人ほどが笑顔で踊っています。
コンテストでは入間市の杉島 理一郎 市長が会場に来ることができない市民の手形を集めた応援幕を背景に、この歌が「市民の歌」として広く親しまれていることなどを紹介し、審査の結果、142の団体の中から3位に選ばれました。
この歌のタイトルは「どこから来たの?」。歌詞に「茶の葉が光ってるうねを数えて歩いた坂道」とあるように、特産品の狭山茶の茶畑などが描かれています。
手がけたのは、地元出身で、人気アイドルグループなどに楽曲を提供している作詞・作曲家の杉山勝彦さん(40歳)。4年前に、杉山さんがふるさとの子どもたちを応援する歌を作らせてもらいたいと申し出て、子どもたちや市民からの意見も募り、制作しました。
杉山勝彦さん
「自分が生まれ育った街に、音楽家として音楽文化を作れないかと考えた。自分もそこで生まれ育っていて、その歌を知っているという感覚は、すごくふるさとを強く感じられると思う」
歌ができてから3年あまり。
ふるさとの歌として覚えてもらおうと、防災行政無線での放送や小中学校での授業などで活用され、今では「市民の歌」として幅広い世代の市民に親しまれています。
市内の豊岡保育所では給食や昼寝から起きる時、それに園庭での運動の際に、この歌を流していて、中には口ずさむ園児がいるほど身近な存在になっています。
園児からは「この歌好きです」。「転んじゃったけど歌が流れてたから頑張って走った」といった声が聞かれました。
また、歌のメロディーにあわせた体操も考案され、市内の公園で活動している高齢者のグループでは、週2回、この歌の体操を行って健康維持に努めています。新型コロナが拡大する前にはグループのメンバーがこの体操を地元の保育園に教えに行くこともあったということです。
「子どもたちも気に入ってくれてとても楽しかったです。夕方、この歌が流れると体を動かしたくなります。ふるさとを思い浮かべる歌だと思っています」
こうして歌が地元に根づいてきた状況に杉山さんは大きな手応えを感じています。
「自分の想像を超えるぐらいに、いま多くの人たちが歌える状況になっているのは単純にすごく幸せでうれしいことです。音楽をやってきて最上の喜びと感じています。ふとした時にこの歌を通して、ふるさとを思い出し幼少期を過ごしたふるさと特有の温かさを感じてもらえたらうれしいです。そしてこの歌がほかの町にも誇れるような文化となり100年後も残る歌になったらいいなと思っています」