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学校に笑いを 越谷市立新方小学校の教育漫才

  • 2021年11月24日

越谷市の市立新方小学校では、授業に漫才を取り入れることで、いじめや不登校の問題に取り組んでいます。漫才は学校にどのような影響をもたらしているのか、教育漫才の提唱者で校長の田畑栄一さんに岩崎愛キャスターが伺いました。

教育漫才のきっかけ

どうして漫才を教育に取り入れたんでしょうか。

子どもたちのコミュニケーションを活性化させたかったことが1つです。言葉のやりとりについて考えたとき、演劇、それから、コントや漫才、このあたりしか浮かばなかった。演劇ですと、人数が増えたり脚本があったりして、すごく大変なんだけれど、漫才は2人あるいは3人でコンビを組んでネタを考えさせるだけです。これはすごくおもしろいコミュニケーションになるんじゃないかと思ったんです。

子どもたちや先生は、漫才と聞いて驚かれませんでしたか。

漫才を学校教育に取り入れるのには抵抗があるんです。なぜなら、まず、叩いたり蹴ったりする光景がテレビでは結構、日常的に放送されますよね。 あともう1つは、“うざい”とか“バカ”とか、極端な言い方になると、“消えろ”とか“死ね”とかいう、非常に悪い言葉が使われるケースもある。

だったら、この2つをきちんと指導して、“暴力はしない”、“叩いたりしない”、そして、“言葉のやり取りで、人を不快にしない”、こうした点を子どもたちに徹底して指導しながらやれば、いじめがなくなるんじゃないかなと考えたんです。 

朗笑と冷笑

漫才を授業に取り入れると、どうしていじめがなくなるんですか。

暴力やマイナスの言葉を使わないで楽しいことを言うと、子どもたちが、人とうまくつながっていけるんだなということを体感できるんです。 より一体感というか、共感が生まれて、マイナスの文化のほうに行かなくなるんですよね。 

だから、いじめがまったくなくなるわけじゃないんだけれども、減ってきたり、落ち着いていたりするんです。クラスの中でも安心して授業時間に手を挙げて発表しようという空気も出てきて、自分で意見を言ったり友達の意見を聞いたりし始めるので、結果的に学力も伸びていくんです。

確かに、いじめの根底にはマイナスの笑いがあるように感じますね。 

笑いには2種類あるんです。 朗笑(ろうしょう)と言って、温かい笑い。私たちが教育漫才で求めるのは朗笑です。人を小バカにして笑わすのは冷笑です。授業で誰かがとんちんかんなこと、ずれたことを言ったりすると爆笑がおこるじゃないですか。これが冷笑で、相手を非常に傷つける笑いです。これに関しては、きちんとその場で知恵を絞って、指導しなければなりません。

マイナスの笑いを見逃してはいけません。見逃すといじめになるんです。教師も一緒に笑ったら、いじめの加担に教師が入るんです。 意外とこういう教師がいて、クラスの雰囲気を悪くしていくということがあるんです。

教育漫才の授業とは

教育漫才、いったいどんな授業なのか、改めて教えていただいてもいいですか。 

放送作家に来ていただいて、先生に対して漫才の授業をやりました。30分で漫才の概論を教えてもらって、その後、60分で先生方がコンビやトリオを組んで、ネタをつくって、漫才を発表したんです。

「3段落ち」といって、普通のことを言って、普通のことを言って、3回目でちょっと落とすという、これが漫才の基本形なんです。これを先生が体験して、クラスで漫才を指導したんです。

そうすると、1年生から6年生まで、比較的、簡単にできるんですよ。1年生2年生は「3段落ち」に合わせて漫才をつくっていくんです。3年生4年生はもうテレビで見ているので、応用バージョンをつくってくるんです。5年生6年生ぐらいになると「3段落ち」から離れて、自分たちでオリジナルなものをつくってきたりします。

ルールはありますか。

ルールは2つだけです。 暴力はしない、叩いたりしない、蹴ったりしない、そして、「死ね」とか「うざい」とか「きもい」とか、相手が不愉快になるような言葉は使わない。この2つだけです。 

越谷市立新方小学校 田畑栄一校長

クラスの人間関係を広げる

漫才は相方が必要ですよね。 田畑さんは確か、くじ引きで決めるんですよね。

クラスの人間関係をいろいろ意味で蜘蛛の巣状態にしたかったんです。 子どもたちは、登校班が一緒であったりとか、席が隣であったり、意外と小ぢんまりとした人間関係をつくっているケースが多いんです。

ところが、くじを引くことによっていろいろな子どもと出会えますよね。 苦手だなと思う相手でも、ちょっとの間なので、頑張ってみようかと思うんです。  

興味が一緒であったりとか、“そこ面白いね、それをネタにしようか”と話し合ったりするので、お互いに知らなかったところを知ることができるようになるんです。そうすると、周りの子どもたちも、“あの子とあの子は意外と仲良くしているな”と思うようになって、人間関係の輪がつながっていくんです。

漫才って、大人でも難しいと思うんですけれども。

「3段落ち」という型がベースにあるので、 意外とみんな笑うんですよね。 大きな笑いはとれなくても、“くすっ”とした小さな笑いとか、必ずとれるんです。思っている以上にそんなに難しいことじゃないんです。 

子どもの気持ちを聞く

最後に、私たちが子供と関わっていくうえで、心がけていくべきことはなんだとお考えになりますか。

子どもの気持ちを聞くことですよね。 親御さんは自分が願う子ども像があるので、子どもの気持ちを聞かないうちに、“こうしたほうがいい”、“ああしたほうがいい”と言ってしまうんですけれども、子どもの話をまずじっくりことです。そして、最終的に子どもに自己決定をさせていくことです。

どんなことでも自分で決めたことに関しては、子どもは納得します。ところが、親御さんにやらされたことに関しては、うまくいってもスッキリはしないし、うまくいかなければ、親のせい、他人のせいにしていくところがあります。 やはり、子ども自身に決めさせていくというのが非常に大事だと思います。 

キャスターからひと言

私も番組のなかで、田畑先生と教育漫才を体験したのですが、本当に心の底から笑うことができました。笑いにはプラスの笑いとマイナスの笑いがあるということでしたが、教育漫才は、こうしたことに笑いながら気づくことができるすばらしいツールだなと感じました。

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