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リポート・企画

“伝統の野菜” を守りたい 5月15日

いま日本各地で、古くから栽培されてきた伝統的な野菜が、次々に姿を消しているといわれています。背景には、野菜から種をとり、再び作物を育てるという、昔ながらの野菜作りが急速に廃れていることがあります。伝統的な “種” を守り続けようとする人たちを取材しました。

 

「お待たせしましたー。『河内一寸ソラマメのかきあげ』と『炊き込みご飯』ですね」

「わーすごい!お豆いっぱい!」

「うん。甘い!」

さいたま市にある 自家製野菜が自慢の居酒屋で、使っているのは伝統的な野菜。その栽培方法にもこだわっています。

 

営むのは、髙山和洋さん、真純さんご夫婦。

「これは赤オクラです。赤オクラの種をとっていました」

 

育てた野菜の中から、特に味や生育がいいものを選び、種をとります。その種をまいて、再び野菜を実らせる。それを繰り返しています。

 

和洋さんは「一番は、おいしいところ。おいしさを残していける。それが一番の魅力」と話していました。

 

実は今、こうした昔ながらの野菜作りをする生産者は急速に減っています。背景にあるのが、戦後登場した『F1種』の普及です。

 

F1種とは、2つの品種を掛け合わせると、 “1代に限り” 親の優れた性質を受け継ぐ品種。その種を毎年買うことで、形や大きさのそろった野菜が安定的に収穫できるのです。

今や日本で流通する野菜のほとんどがF1種。その種の多くは海外で作られています。

 

一方で、伝統的な野菜の種が減り続けている現状に危機感を強めている専門家もいます。

植物の遺伝資源について研究している、筑波大学 つくば機能植物イノベーション研究センターの渡邉和夫教授です。気候変動や新たな病害虫に強い野菜を生み出すためにも、種をとりつづけていくことが必要だと考えています。

「種をとっていくことによって、環境に応じた変化に対応するものが作られていっている可能性がある。長い目で見ると、品種が進化している。在来品種(伝統的な野菜)の維持は重要なことだと思う」と渡邉教授はいいます。

 

F1種に押される中、昔ながらの種を守ろうと動き出している人がいます。

種を扱う専門店の3代目、野口 勲さんです。

 

「このかぼちゃも もう入らなくなった。これも、埼玉県を代表するキュウリだったが、もうどこにもなくなった」

この店でも、年々、取り扱う伝統的な野菜の種が減り続けています。野口さんは、店を訪れた人に、『種をとりつづけてほしい』と呼びかけてきました。

 

「こんにちは~ お世話になります、関野です」。

その思いに応えて、定期的に種や苗を納めてくれる人も出てきました。

 

その1人、関口幸生さんは「自分がとった種が、また誰かのもとに広がっていくのはうれしいこと」といいます。

 

さらに、野口さんは、自らも種の生産に乗り出しています。山あいの畑で育てているのは、かつて地元で盛んに栽培されていた、かぶ(みやま小かぶ)です。

自分も子どものころから親しんできた味を、未来につなげようとしています。

「とにかく種をとってくれということ。種をとって、野菜なり、植物の命をつないで、子どもに渡してほしい。1つでも2つでも 生き残らせたい」と話していました。

 

野口さんは、全国各地で講演会を行い、伝統的な野菜の種をとり続けていってほしいと呼びかけています。

問い合わせ先

◇伝統的な野菜を使った料理店
 「ほどほど屋エイト」
 埼玉県さいたま市西区高木133-12
 電話:048-637-0560

◇紹介した種苗店
 「野口種苗研究所」(店主:野口勲さん)
 埼玉県飯能市小瀬戸192-1
 電話:042-972-2478