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8月20日放送
“生体リズム” で働き方を変える

医療の現場など、24時間、常に誰かがいなければならない職場では、不規則な勤務が避けられません。こうした中、少しでも体への負担を減らそうと、科学を活用した “新たな働き方” が注目されています。キーワードは、体内時計など、人間が本来持っている『生体リズム』です。
神奈川県内の総合病院で、がんの緩和ケアを行っている病棟では、看護師24人が、8時間ごとの3交替で勤務し、24時間体制で入院患者のケアにあたっています。
不規則な勤務の負担を軽減するため、2011年から『正循環』と呼ばれる新しいシフトを選べるようにしました。
『正循環』では、たとえば、日勤が2日続いたあと、次の日は16時台からの準夜勤、その次は24時台から深夜勤と、開始時間が日を追うごとに後ろ倒しになるようにシフトを組みます。
勤務と勤務の間が常に半日以上空くため、疲労を回復しやすいシフトなのだといいます。
2011年にいちはやく正循環にしたひとり、日高純子さん(46)は、それまで、慢性的な疲労に悩んでいたといいます。
「車で運転して帰るんですが、途中で眠気があって何回か路肩に乗り上げそうになったりとか、『おっと!対向車線に行きかけてる』っていうことが(以前は)あったんです」

もともとは家族を介護する時間を確保するため、規則的な正循環シフトを選択しましたが、その後、体調が改善したことに驚いたといいます。
「休息の時間をしっかり取って深夜勤に入れるということは、疲労度も もちろん違いますし、8時間の勤務を終えた後も、続けて家事ができたりというように、自分の体が楽になった」と日高さん。
実は、後ろ倒しに時間がずれることが、人間の本来の生体リズムに適していると、専門家は言います。

「人間の生体リズムは24時間よりも長いんです。ですから、たとえば、日勤から準夜勤、準夜勤から深夜勤というように、時計を遅らせるようなシフトが体にやさしいんです」と話すのは、労働科学研究所の佐々木司さん。
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生体リズムにあわせたシフトと、心臓発作のリスクの関連を調べた海外の研究では、実験で45人の警察官を、勤務開始時刻を “前倒しにするシフト” と “後ろ倒しにする正循環のシフト” で4週間ずつ、勤務させました。
そして、血液中の心臓発作にかかわる成分を調べたところ、正循環のシフトの方が、リスクが少なくなることを示唆する結果が出たとしています。
しかし、『正循環』は、まだ主流となってはいません。
現在の一般的なシフトは、『逆循環』。 勤務時間が前倒しになることがありますが、連続した休みが取りやすいことから、人気があるのだといいます。
こうした中、この病院が働き方改革に取り組んだ背景には、1999年以降、他の病院で相次いだ、患者取り違えなどの “医療事故” に対する危機感がありました。
原因の一つに『現場の疲労がある』と考えたこの病院では、体にやさしいという正循環シフトに目を付けたのです。
神奈川県立がんセンターの看護科長、宮原知子さんは「体内の睡眠のサイクルに合っていて、調整がやりやすいということだったら、体に負担がないのだろうと思う。疲れを癒すというか、何かそういうのができないかな、とはずっと思っています」と語ります。
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今月も、一人の看護師が正循環シフトを希望し、選択する人が増えています。
「合っているみたいなので、来月も続けたいなと思っています」
「了解しました。それで勤務(のシフト)を作ります」
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現在、病棟では8人が正循環で働いていて、自分の体調が整ったことで、患者へのケアの質が上がったと感じている人も多いということです。

人間の本来のリズムに近づけてシフトを組む『正循環』。交替制勤務の新しい働き方として、注目されています。

看護師で作る団体でも、2013年にガイドラインを公表し、『正循環』を広めようと動き始めているほか、鉄鋼業など製造現場でも導入され始めています。

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