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先月、東京の本郷に働くスタッフ全員が耳の不自由な人たちという飲食店がオープンしました。お客との会話が欠かせない飲食店をなぜ始めたのか取材しました。

先月末、東京都内にオープンしたスープ専門店です。
「(手話)熱いので気をつけてください」「(手話)お待たせしました」 ここで働くスタッフは、全員が、耳が聞こえない聴覚障害者です。お客とのコミュニケーションは、手話やボードを使った筆談で行います。

オーナー兼店長の柳 匡裕さん、39歳です。生まれた時から耳が聞こえない柳さん。「聴覚障害者が気軽に入れる店を作りたい」と、2年前から開店準備を進めてきました。きっかけは自らの体験です。手話が通じない店が多く、何度も もどかしい思いをしたことがあると言います。「(手話)店に入っても 注文のやりとりは「声」だけ。メニューを指さしても伝わらない。こんな店は入りづらい」

店に込めた思いはほかにもあります。かつて障害者の就労支援の仕事をしていた柳さん。障害者がやりがいを持てる職場の必要性を感じてきました。思いついたのが、聴覚障害者たちが運営する飲食店。しかし、企業の反応は厳しいものでした。複数の大手フランチャイズ企業に出店を相談したところ、ことごとく断られたのです。「(手話)企業からはこう言われた。『接客には会話がつきものだが、ろう者は会話ができない。だからビジネスにならない』」

そんな柳さんに協力を申し出たのが、長野市でスープ専門店を営む室賀 康さんです。室賀さんは、柳さんのアイデアに大きな将来性を感じたといいます。「ろう者をはじめ障害がある人が気軽に入れる店がない。手話を学びたい方も相当数いる。そのふたつの方が当店に来店すれば十分ビジネスチャンスがある」(室賀さん)。

オープンから3週間。店は連日、大勢の客で賑わっています。遠方からやってくる聴覚障害者の人たちも少なくありません。特に評判なのが、お店のスタッフと手話で会話を楽しめること。
「(手話)店員に手話が通じるのでいいと思う」「(手話)実際 こういった店は本当に少ない。ろう者にとって、自分の居場所ができたようで安らぐ。」

一方、お客の7割は近隣のOLや大学生たちです。手話ができない人でもスムーズに注文ができるよう、レジに携帯できる情報端末を置きました。来店をきっかけに手話に関心を持つお客も現れています。

筆談しながらスタッフに手話を教わるカップルです。「簡単な言葉をもっと分かるとよかった。次に来るまでに勉強してこようと思う。」

柳さんは、この店を障害の有無にかかわらず人々が気軽に交流できる場にしたいと考えています。「(手話)ろう者だけではなくて聴者(耳の聞こえる人)にも来てほしい。ろう者と聴者が交流し、新しいものを生み出す場にしたい。それをサポートしたいと思う」
障害がある人の働く場を確保しようという動きは年々広がりを見せていますが、今回のようにスタッフ全員が聴覚障害者という店は珍しいということです。柳さんは、自分の経験をもとに障害者の起業をサポートする態勢をつくりたいと考えているそうです。