能登半島地震から、3月1日で2か月がたちましたが、今も1万人以上の人たちが避難所で生活を送っています。
この地震では上下水道も大きな被害を受けたことから、今回は、避難所で直面する「トイレ」の問題について考えます。最近では、食料を備蓄することと同じくらい、非常用トイレを備えておくことが大切だと言われます。避難所にはどんな備えがあり、事前にどんな準備をしておけばよいのでしょうか。
教えてくれるのは、東京・小金井市を中心に、防災イベントを開いたり、防災情報をラジオで発信したりしている青木紘子さん。
「避難所の運営は、原則住民が行うもの。まずは、自分たちで運営していかなければならないという意識を持っていただき、その上で、個人の備えをすることが大切」だと、青木さんは言います。
今回は、東日本大震災をきっかけに「避難所運営協議会」を発足させ、日頃から防災活動に力を入れている小金井第四小学校地区の皆さんにご協力いただきました。この小学校は、災害時、体育館や教室などに最大800人が避難できるとされています。
トイレの水を流すことができなかったらどうするのか…備蓄倉庫に備えてあるものを使います。
まずは、便器と便座、それぞれにゴミ袋をかぶせて用を足す方法。汚物は、凝固剤を使って固めたうえで、ゴミ箱に捨てます。
さらに、段ボール製の簡易トイレも備えてありました。主に和式トイレに設置するものです。
こうした備えがあれば大丈夫?と思ったら、こんな不安も…
避難所生活では、トイレ掃除も自分たちで行うことになります。他人の汚物を処理し、衛生的な状態を保ち続けることはできるのか?
また、たまったゴミをどこに捨てるのか?など、不安は山積みです。
こうした不安を解消するためには、事前にルール作りがされているとよいと思います。地域の防災訓練などに参加して、みんなでルールを決めたり、ルールを知っている人を増やしたりすることをおすすめします。
小金井第四小学校では、プールの近くに、マンホールトイレ10基が設置できるようになっていました。マンホールにはプールから下水管が通っていて、プールの水で流す仕組みです。
これなら汚物の処理問題もなくなりますが…、下水管が壊れてしまえば、使うことができません。
そこで、水が流せないときに活用できるのが「携帯トイレ」です。
備蓄倉庫の中に、携帯トイレがどれくらいあるのか確かめてみました。
袋・凝固剤・アルコール消毒液・ウエットティッシュ・おがくずなど…その数は、2100回分でした。
ここには最大800人が避難する想定なのに、備えは2100回分。1日に1人5~7回トイレに行くとしたら、半日もしないうちに使い切ってしまう数です。避難所にあらかじめ備えておくのには、限度があるんです。
避難所は、命を守るための最低限のものしかそろっていないという意識をもち、まずは、自宅での備えをしっかり行っておきたいですね。家族の1週間分、非常用に備えておくのがよいと思います。
災害時、水が使えないときに使う「非常用トイレ」。排泄物を固める凝固剤とビニール袋がセットになっているものが一般的です。ホームセンターやスーパーのほか、100円ショップでも販売されています。
非常用トイレは、今、さまざまな形態のものがありますが、大まかに分けて3タイプあります。詳しく見ていきましょう。
(1) 小さく持ち運べる「携帯型」
凝固剤が入った、1回使い切りタイプです。車内や野外での使用に向いています。
(2)洋式の便器に袋をかぶせる「便器使用型」
自宅の便器で、ふだんと変わらない感覚で使用できます。断水時の備えにもなります。
(3)組み立て式の「組み立て型」
段ボールなどの素材を組み立てて便器とし、そこに袋をかぶせて用を足し、凝固剤で固めるタイプです。
耐荷重強度はおよそ80kgですが、購入するときに確認してください。
私は、こうした非常用トイレを、家族でキャンプに行った機会などに実際に使っています。初めて使ったときには、トイレ以外の場所での用足しに違和感をもったものでした。いざというとき慌てないためにも、事前に使ってみておくことも大切だと思います。ぜひ、参考にしてみてください。