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「申し訳ありません」在日ミャンマー人 コロナ禍のデモ

  • 2021年3月2日

ミャンマーでは、軍のクーデターに抗議する市民らに対して、治安部隊が抑え込みを強めていて、発砲などで死者が相次いでいます。こうした事態に心を痛める日本に暮らすミャンマー人たちも、軍に対する抗議の声を上げています。新型コロナの感染対策が求められ自粛生活が続くなか、「日本の皆さま、申し訳ありません」と言いながらデモをする姿を取材しました。
(報道局 社会番組部/ディレクター 高田彩子)

“軍事政権は夢を壊す悪魔です”

在日ミャンマー人のエー・トェーさん。5年前に留学生として来日し、今は都内の企業で働いています。
クーデターが起きてから、母国の状況が気にかかり、眠れない日が続いています。

『なぜ父を拘束するの?恐ろしいことを!』(SNSに送られた動画)

エー・トェーさんのSNSには、現地から生々しい映像が次々と送られてきます。

エー・トェーさん
「夜の時間帯もインターネットも使えないし、誰が逮捕されるかわからない状態。ミャンマーの国民みんなが、自由ではなく地獄みたいな感じ。市民が寝られないようにやっているので、すごくひどいです」

現在日本にはおよそ3万人のミャンマー人が暮らしています。

母国の状況をもっと日本人に知ってほしいと、若い世代が仕事の合間をぬって記者会見を開くなど、次々と声を上げ始めています。この日は、エー・トェーさんの友人ら、医療機関や銀行、人材業界などで働く5人がカメラの前に立ちました。勉強や仕事にまい進してきた中で、政治的な行動をすることにためらいはあったものの、日本社会に伝えることが自分たちの使命だと、覚悟を決めたといいます。

来日8年目の女性
「日本人によく聞かれます。『なんで民主主義になってほしいの?』 “食べる”  “寝る”  “行く” などは、自由だからこそできるんです。夢をたくさん持っている私たちのような若者たち、私たちにとっては、軍事政権は自分たちの夢を壊す悪魔です」

緊急事態宣言中のデモ

『ミャンマー軍事政権に圧力をかけてください』
『お願いします』

日本政府に対して、クーデターや軍事政権を認めないよう求めるなど、全国各地でデモも行われています。

しかし…

『デモ自体が悪い訳では無いけど密だし、マスク外して大声出してるし感染者出たらどうするの?』

『気持ちはわからないわけではない。でも東京は緊急事態宣言中で密になるような集まりは自粛している。やるならネットでやればいいだろう』

新型コロナウィルスの感染が広がる中でデモを行うことに、ネット上では批判の声が寄せられました。

「抗議をやって、申し訳ございません」

エー・トェーさんは、批判を受け、デモに参加するかどうか、迷っていました。
日本企業で働いてきたエー・トェーさんには、日本社会がいかに新型コロナの克服のために犠牲を払ってきたかが痛いほどわかります。自分自身も、クーデターが起きる前までは、人一倍気を使って自粛生活をしてきました。

しかし、母国からは刻一刻と、心配なニュースが入り続けていました。

翌日にデモを控えていたこの日、夫と2人でプラカードを用意することにしました。やはり、参加しなければならない、と決断したのです。

『コロナ禍で抗議を行って、日本の国民全員に大変申し訳ございません』

そう、日本語で書きました。

エー・トェーさん
「日本人の方たちの命にも関わってくるので。心の底から、内からも、本当に、みなさんに迷惑をかけてしまいまして申し訳ございません。きょうやらないと、あしたもないので、きょう頑張らないといけない」

無言の抗議 サイレント・デモ

翌2月14日に東京・渋谷で行われたデモ。在日ミャンマー人など4000人以上が集まりました。

『日本の皆さまに知っていただきたいです』

声を出すのはマイクを持っている人だけ。それ以外の参加者は、飛まつを出さないように黙って歩きます。
無言の抗議、「サイレント・デモ」で、クーデターに断固反対する意志を示しました。

エー・トェーさんも、プラカードを掲げて歩きました。

デモを目にした人たちからは…
拍手を送る人や、「礼儀正しいデモですよね」といった声も聞かれました。

応援してくれてありがとう

デモには日本人の参加者もいました。

デモに参加した女性
「『デモに参加するのは、一部のちょっと変な人』だと友達から拒否される可能性もあるので迷っていたのですが、皆さんがすごく工夫をして “サイレント・デモ” ということで、思い切って参加しようと思って」

サイレント・デモを終えたエー・トェーさん
「ミャンマーのことを応援してくれた方、皆さまを見て、すごく感動しました。かなり勇気を出して応援してくれたと思いまして、すごくありがとう、ありがたい気分で、感謝していました」

2月22日にエー・トェーさんらの動きを放送したあとも、ミャンマーでは軍や警察によるデモ隊鎮圧が激しさを増し、2月28日には全土で死者が出ました。

「コロナ禍なのに集まってしまって申し訳ない、しかしミャンマーを救わなければならない」。
そう、心に決めた在日ミャンマー人の人たち。日本語・英語での情報発信や署名活動など、あらゆる方法を使って、日本の人たちに理解と支援を求めようとしています。

デモは、大阪や名古屋、札幌など各地で行われていますが、デモの主催者たちは、手指の消毒など、感染防止のためのルールを作り、参加者に周知・徹底しているということです。

  • 高田彩子

    報道局 社会番組部 ディレクター

    高田彩子

    2006年入局 札幌局、さまざまな報道番組担当を経て現在デジタル展開担当。 「インクルーシブな社会」実現のために日々実践中。

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