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コロナ禍で会えない母と娘 交わす手紙でつながる心

  • 2021年2月1日

新型コロナの影響が長引き、大切な人と久しく会っていないという方、多いのではないでしょうか。さいたま市には、歩いてわずか10分にもかかわらず感染予防のため直接会えない94歳の母親と71歳の娘がいます。その2人が心のよりどころにしているのは毎日届ける手紙。日常の細やかな会話が、2人の心を近づけています。

歩いて10分 毎日届ける手紙

『するすると日が流れていきますね。昨日届けたクッションはいかがでしたか。柔らかさを足すために小さいクッションも加えました』

便箋1枚にびっしりとつづられた母へのメッセージ。手紙を書いたのは首長英子さん(71歳)。毎日、家から歩いて10分のところにある老人ホームに新聞と一緒に手紙を届けています。

英子さん「おはようございます。よろしくお願いします。毎日ありがとうございます」

職員「はい セツさん、きょうも定期便届きましたよ」

手紙を渡すのは施設の職員。外部から物を届けるのは事務室の窓口に限られていて、英子さんは母に直接会えないのです。

会わなくても 会話している気分

母の山崎セツさん(94歳)。娘からの手紙を読むのが毎日の楽しみです。

セツさん
「欠かさず持ってきてくれるから、感謝の念でいっぱいですね」

英子さんがセツさんを新潟から呼び寄せたのは15年前。夫の両親と同居しながらも、母の様子を見たかったからです。
しかし、新型コロナの影響で去年の2月から面会できなくなりました。

セツさんは耳が不自由なため、電話もできません。そこで「手紙」でのやりとりを思いついたのです。

英子さん
「肉体的には、ぜんぜん会っていないのですが、たぶん言葉でしゃべっているような、会話をしているような気分になれているかなと思います」

コロナ禍 つづられた “不安”

緊急事態宣言が初めて出された去年の4月。英子さんの手紙には、不安のなか手探りで暮らす様子がつづられていました。

『月曜日の一面にごみ袋の防護服の写真 出ていますが、本当は娘のご主人たちにも袋を貫頭衣にして、電車に乗ってほしいくらいなのです』

自分自身と夫の健康、それに、娘の家族は大丈夫か…。心配は尽きません。

何を書こうかな あしたやることがあるのは精神的な効果

それでも、「少しでも楽しい手紙を書きたい」と、英子さんは身の回りでできることを探し始めました。その一つが、たんすに眠る古着のリメイクです。

『できる限り丁寧に時間をかけて、を心掛けたので、しつけ糸をたくさん使いました』

英子さん
「またあした何を書こうかなって思って。あしたしなくてはいけない仕事があるというのが、精神的には効果があったと思います」

セツさんからの返事は、週末にまとめて受け取ります。

『洋服の古いのをいろいろ更生して今風に直したようで、すごく立派なことをしていると思いますよ』

セツさんの手紙に書かれる『さすが!』『たいしたもの』は、娘を応援する母の言葉です。

英子さん
「自分の娘はこんなことを書いて、ああ私の知らないこんなことも知ってるんだとか、全部いいようにとってくれる。また、何か探して書こうという私のエネルギー源にもなっている。90代になっても、70代の娘の潜在能力を引き出しているんですね」

「母との日々」 コンクールに応募

英子さんは、去年秋、はがきに「自分の願い」をつづるコンクールに応募。
母との日々をしたためたところ、2万5000通以上の中から、佳作に選ばれたのです。

はがきの名文コンクール審査員 作家・村山由佳さん
「意志の疎通ができないのは、人にとっていちばんつらいことだと思うんです。コロナの時代の、いちばんつらいところを、お互いに埋め合っているという温かさがとてもすてきだなと思った」

会えなくても。母と娘の心のつながりは、強くなっていきます。

「二人の見つけた小さな楽しみが一日も長く続きますように」

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