全国で100万人以上いるとされる、ひきこもり。その中で40代以上の人は推計61万人にのぼるとみられ、ひきこもりの高齢化が問題となっています。
長年、進学や就職で地方から上京してくる人を数多く受け入れてきた東京都豊島区では、今、区を挙げてひきこもりの問題に取り組み始めていますが、一人暮らしの高齢者の割合が高くなるとともに、ひきこもっている人も多くいるとみられ、難しい対策が求められています。
「○○さん!」
一人暮らしをしている40代男性の自宅に、豊島区の職員が訪れました。
男性は、進学を機に地方から上京したものの、その後ひきこもりに。離れて暮らす親族の援助を受けながら20年以上経っています。
区が男性のひきこもりを認識したのは3年前。これまで何度か手紙のやりとりをしましたが、直接会えたことはないといいます。
この日は家の前で15分ほど呼びかけましたが、会うことはできませんでした。
区の職員
「『いつでも連絡ください』というメモを書いておきました。そもそも接触自体がないので、変にせかしてもいけませんし、かといって今のままでいいとももちろん思えない。やっぱりこの辺はすごく難しいところです」
長年、進学や就職のため親元を離れて上京してくる若者を数多く受け入れてきた豊島区は、高齢化が進んだ結果、現在75歳以上で一人暮らししている世帯の割合は37%。全国の市と区で一番高くなっています。
そうした高齢者の中には、社会との接点を持てずに引きこもっている人も多くいるとみられているのです。2年前には、引きこもりがちだった80代の女性が、アパートの一室で亡くなった状態で見つかったこともありました。
区の職員
「家族がいる世帯になると誰かしらがSOSを発することも多いですが、一人でひきこもってしまうと、SOSを自分では出せないので、どんどんひきこもりの状態が悪化していく。そういうことが想定されます」
そうした人たちをどう支援に結びつけていくのか。今、豊島区を挙げたプロジェクトが始まっています。
さまざま部局から集められた10人のメンバーが中心となり、高齢者福祉や若者の就労支援などそれぞれの専門性を生かし、対策をまとめようとしています。
ここでも課題の1つとなっているのが、単身のひきこもり。
そもそも一人暮らしで引きこもっている人は情報が入ってこないのです。
親などと同居している人であれば、家族から情報が寄せられて支援につなげることができます。しかし、一人暮らしの場合、親も離れて暮らしていることが多く、情報が得られず、そもそもどこにひきこもりの人がいるのかすら分からないのです。
話し合いでは、どうすれば引きこもりの人にたどりつけるのかが議論になりました。
「管理人さんと誰かが関係をつくって管理人さんから間接的に情報を得る」
「ひきこもり支援のメインテーマになる本人同意のない状態でいかに踏み込むかと」
豊島区では、区の職員だけでなく、社会福祉協議会や地域の包括支援センターなど、関係機関の協力も得ようとしています。10の部署と2つの関係機関にアンケートを送付。地域に密着して活動する人たちから情報を集めようとしています。
豊島区 高野之夫 区長
「このひきこもりはただ福祉分野だけでやるのではなく、あらゆる面、あらゆる角度から、全庁を挙げて取り組んでいかなければ、なかなか解決できないのではないか。いまこそやらないといけない時だと思います」
豊島区では今回のアンケート結果などをもとに、来年春までに対策をまとめ、本格的な支援に乗り出すことにしています。