新型コロナウイルスによる一斉休校をきっかけに、全国の小中学校でパソコンやタブレット端末の導入が急ピッチで進められています。 端末の導入にあわせて、これまで当たり前だった「教える」という教師の役割を見直す学校が登場しています。
東京・中野区にある、全校生徒50人の新渡戸文化中学校では、一斉休校中に、生徒全員に学習支援アプリが入ったタブレット端末を導入。
通常の登校が再開したあとも、積極的に活用し、授業の効率化をすすめています。
女子生徒
「自分のペースでやっているから、すごく進めやすくて やりやすいです」
この学校で授業改革をすすめる山本崇雄先生は、授業のデジタル化をきっかけに、教師の役割を見直す必要があると考えています。
山本崇雄先生
「知識を習得することは、タブレットで個別最適化といわれる一人ひとりに合わせた学びをし、僕ら教師は、『子どもたちの “やりたい” をいかに引き出すか』とか、『いかにそれを支援するか』という発想が必要になってくると思います」
これまでの授業の代わりに始めたのが、週に1日、教師が教えない日を設けることです。
生徒は まる一日、教科の枠にとらわれず、自分の興味をとことん掘り下げます。
教師「すてきな作品じゃないですか~」
教師は生徒の意欲を高める役割に徹します。
教師「何に興味を持ったの?」
生徒「世界の “寄食” 」
教師「え――!調べたの?それはすごい。どんなものを食べるの?」
生徒「猿の脳みそ」
教師「猿の脳みそを食べるの?」
生徒「ゲンゴロウはオサムシの仲間で、臭い。お尻から息をしている」
教師「お尻から息をしている?おもしろいね」
調べた内容は、仲間同士で発表します。刺激を与え合うことで、さらに興味を深めてもらう狙いです。
発表した生徒の一人、中学1年生の得能諒央さんが選んだテーマは、生き物の性質をものづくりに生かす技術についてです。生物の先生から関連する本を勧められ、興味を持ちました。
サメの肌を参考に作られた水着があることや、昆虫の体内物質を利用した薬が開発されていることなど、生き物と人の暮らしには深いかかわりがあることをまとめました。
得能諒央さん
「もともと勉強は嫌いでした。枠に縛られずにやったほうがはかどるし、みずから調べることのほうが勉強しやすいんだな~ってことが分かりました」
発表のあとには、教師と生徒が1対1で面談する機会が設けられています。
教師「2学期はこういうことをもっと調べてみたいとかはある?」
生徒「『森林伐採』について調べていきたい」
教師「動物から今度は森林に?」
生徒「この世界にいる全部の生き物たちが、幸せに、安全に暮らせる世界になってほしい」
教師「そんな目標がある。すごいじゃないですか」
生徒がみずから学ぶ力をどう育てていくのか。今、学校現場に変化が求められています。
山本崇雄先生
「 “教える” からまさに “引き出す” というところですね。子どもたちが一人ひとり持っている可能性はかなり深いところに眠っていると思うんです。それを丁寧に見つけて引き出してあげる。教師はそんな役割になるんじゃないかなと思います」