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  • 2023年12月28日

就労問わず保育所など利用 こども誰でも通園制度とは 対象や条件 議論のポイントは

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「こども誰でも通園制度」は、親が就労していなくても子どもを保育所などに預けることができる新たな制度です。来年度から行われる試行的な事業について、こども家庭庁は1人あたりの利用の上限を「月10時間」などとする具体的な指針をとりまとめました。導入スケジュールや運用条件などのほか、モデル事業の現場で見えたメリットや課題などについてまとめました。 
【更新 12月28日】

「こども誰でも通園制度」とは

国が創設を目指す「こども誰でも通園制度」は、保育所などの利用要件を緩和し親が就労していなくても時間単位などで子どもを預けられるようにする新たな通園制度です。

新たな制度は、子どもにとっては保育の専門職がいる環境で家庭とは異なる経験ができたり同世代の子どもなど家族以外と関わる機会が得られたりするほか、親にとっても育児負担の軽減や孤立感の解消につなげることなどが期待されています。

来年度 各地で試行的な事業 具体的な指針

令和8年度からすべての自治体で実施されるのを前に、来年度(令和6年度)、各地で試行的な事業が行われる予定で、25日にこども家庭庁で開かれた保育所の事業者や専門家らによる検討会で具体的な指針がとりまとめられました。

それによりますと、対象となるのは0歳6か月から3歳未満の子どもで、保育所や認定こども園、幼稚園、地域子育て支援拠点、児童発達支援センターなどで行うとしています。

また、提供体制を確保するため1人あたりの利用時間の上限を「月10時間」とするとほか、慣れるまでに時間がかかる子どもへの対応として、初回などに「親子通園」を取り入れることも可能とするということです。

今年度のモデル事業はどこで

「こども誰でも通園制度」の本格実施に先駆けて、今年度は北海道から九州地方まで全国各地の31自治体、あわせて50施設でモデル事業が進められています。このうち関東地方では次の自治体で進められています。

〇関東地方 
東京・文京区 品川区 渋谷区 中野区 八王子市 千葉県松戸市 横浜市 川崎市 神奈川県秦野市 
宇都宮市 栃木県栃木市

親の負担軽減 育児相談も

栃木県栃木市で行われているモデル事業では、認定こども園が保育士2人を増員し、0歳から2歳の子どもを週に1日から2日程度預かります。 
子どもを預かるのは平日の午前9時から午後3時までで、1日最大3人を預かっていて、保護者は育児の相談もでき、費用は無料です。

こども園によると、8月までの3か月間で述べ100人以上が利用していて、希望者が定員を超える日が多いということです。

「認定こども園さくら」堀昌浩園長 
「最初は暗い顔をしている親が制度を何回か利用するうちに笑顔で登園する様子も見られ、親の負担を軽くできていると感じています。子どもどうしのふれあいの中で子どもを育てたいという親のニーズに応えるためにも今後も継続していきたい」

慣れるのに時間 つきっきりになることも

モデル事業を行っている自治体のひとつ、東京・中野区の保育園は区のモデル事業を受託し、ことし8月から0歳から1歳の子ども2人を週に2回定期的に預かっています。

取材した日の午前中に訪れた1歳の女の子は、母親と離れることにまだ慣れないため、預けられると泣き出してしまい、ベテランの主任保育士が抱っこであやします。また、すぐにみんなと一緒に遊ぶことができず、つきっきりで抱っこし、少しずつ慣らしていました。

この間、他の2人の保育士が、1、2歳児とあわせて0歳児も一緒に見守っていました。

配置基準より多くの保育士を雇用していても…

また、この園では元々、園が費用負担し国や自治体の配置基準より多く保育士を雇用し、ゆとりをもった人員配置をしていますが、新たなモデル事業の対応で現場の負担感は増えているといいます。

さらに通常は子ども1人につき算定される保育士の処遇改善などの加算もつかないこともモデル事業の課題だとしています。

ゆめのいろ保育園中野 米田恵園長 
「育児負担を軽減することで虐待などを予防したいと思い、働いていなくても子どもを預けられるというこの制度の理念に共感して、モデル事業に応募しました。しかし、先立つものがないと、せっかく良い事業していても現場が疲弊してしまい、受け入れが難しくなってしまう。保育現場では保育士の配置基準が現状にあっておらず、元々、負担感が大きい。まずは、園の運営が安定するようしっかり予算をつけてほしいです」

定員に余裕がない…都市部での受け皿確保は

保育所の定員などに余裕がない都市部では、子どもを受け入れるための受け皿の確保が課題となります。

松戸市は今年度、未就園児を預かる国のモデル事業の対象を「育児に負担感や閉塞感を感じている保護者」に限定して公立の3つの保育園で取り組みを行っていて、登録している子どもの数は12月18日時点であわせて51人となっています。

一方で来年度、試行的事業を行う際には、受け入れの対象を保育園などに通っていない3歳未満の子どもに広げることになり、これらの子どもを受け入れるために必要な定員は339人分にのぼることがわかったということです。

松戸市は受け皿の確保に向けて検討を進めていますが、追加で確保できる見通しがたったのはあわせて43.7人分で目標の2割にも満たない状況だということです。

松戸市保育課 山内将課長 
「未就園児を預かる意義は非常に大きいものがあるので、それをいかに工夫していくかだと考えています。事業者や行政、利用者が情報共有をしながら連携し、制度がよりよいものになるよう注力していきたい」

令和8年度に全自治体で実施 検討課題は

認可された保育園や認定こども園などに通っていない3歳未満の子どもの数は、令和3年度、全体の6割にあたるおよそ146万人と推計されています。

制度の本格実施に向けては、保育現場の人員配置のあり方や利用可能枠の定め方、障害のある子どもを受け入れる体制の整備など引き続き検討が必要な課題もあります。

来年度の試行的事業についてこども家庭庁はおよそ150の自治体での実施を想定して公募を行っていますが、今後、すべての自治体で実施することを見据え、計画的に提供体制を整備するよう求めています。国は試行的な事業を通して課題の整理や検証を行い、令和8年度には法律に基づく新たな通園制度として全国のすべての自治体で実施する方針となっています。

“孤立している家庭などが利用できる仕組みが大事”

「こども誰でも通園制度」の本格実施に向けた試行的な事業のあり方などが示されたことについて、保育や子育て支援の問題に詳しい玉川大学の大豆生田啓友教授に聞きました。

月10時間の利用というのは子どもを預ける親の立場や保育の観点から考えると短い時間だという課題はあるものの、すべての子どもに保育所とつながる機会が保障されるということが重要だ。孤立している家庭や、病気や障害などで保育所などとつながりにくい子どもも利用できる仕組みにしていくことが大事になる。必要な手続きを簡素化するなど、利用しやすい仕組みをつくり、今後、試行的な事業で出て来る現場の課題や解決策を国や自治体とも共有しながら、子どもにとってよりよい制度にしていくことが重要だ。

一方で、受け皿の確保や保育現場の負担軽減を進めるためには、保育士の配置基準の改善や働き方の見直し、人手確保の取り組みなどが不可欠だということです。

こども誰でも通園制度 導入計画案

「こども誰でも通園制度」について、政府が本格的な導入に向けてまとめた計画案が明らかになりました。

それによりますと、来年度=令和6年度には150程度の自治体で試験的に導入し、2年後の令和7年度には制度を法的に位置づけ、拡充を図るとしています。 
そして、3年後の令和8年度には、1人が1か月に利用できる時間の上限を設けた上で、全国すべての自治体で実施するとしています。 
【更新:12月7日】

保育士の配置基準見直しのスケジュール案

一方、政府は、保育の質を向上させるため、子どもの人数に基づく保育士の配置基準の見直しのスケジュール案もまとめました。

具体的には、4・5歳児の保育士を、「子ども30人に1人」から「25人に1人」にする見直しは、来年度に、1歳児の保育士を、「子ども6人に1人」から「5人に1人」にする見直しは、再来年度以降の早い時期に開始するとしています。 
【更新:12月7日】

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